九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 299
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MRIを用いた腰部脊柱管狭窄症患者に対する評価
~脂肪様組織化に着目して~
*光武 翼
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抄録

【目的】
 臨床の場では、腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Canal Stenosis: LCS)患者に対して、MRI画像より神経狭窄の程度のみならず、腰部筋断面積を評価することがある。しかし、ADLでは筋断面積だけでなく、断面積内の脂肪様組織化に影響を受けると考えた。今回、MRI画像より多裂筋と最長筋に対して筋断面積と組織変化に着目し研究を行ったので報告する。
【対象および方法】
 手術目的で入院されたLCS患者64例のうち、L4/5片脚のみに症状を訴える24例(男性17例、女性7例、平均年齢69.08±10.98歳)を対象とした。MRI画像(T1WI)より病変部L4/5と非病変部L2/3の多裂筋・最長筋断面積を計測した。腰痛機能評価として術前の日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOA score)を用い、廃用期間として疼痛・痺れ発症から現在までの期間を問診にて行った。筋断面積は正確性を高めるため、放射線科医師に検証してもらい、椎間板内の高さが異なる3層のスライス画像の平均値を使用し検討を行った。組織変化に対しては画像に対する関心領域を設定し、その中のpixelの信号強度をSDにて表示した。つまりMRI画像(T1WI)で高信号に投影されるほどSDが大きくなり、脂肪様組織化が生じていると判断した。尚、統計方法としては相関分析を用い、有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
 本研究の趣旨について本人に説明し、同意を得た上で検討を行った。
【結果】
 病変部の筋断面積とJOA scoreには著名な相関は認められなかった(多裂筋r=0.398 p<0.0538、最長筋r=0.191 p<0.3758)。脂肪様組織化に関しては病変部の多裂筋とJOA scoreにて相関が認められた(多裂筋r=0.458 p<0.05、最長筋r=0.121 p<0.5761)。非病変部に関しては筋断面積、脂肪様組織化ともに著名な相関は認められなかった。また、疼痛発症から現在までの期間と筋断面積、脂肪様組織化、JOA scoreに関しては著名な相関は得られなかった。
【考察】
 今回の研究から、腰部多裂筋に関しては筋断面積より面積内の組織的変化が腰痛症状に影響を与える結果となった。つまり筋そのものの大きさより、その中身の質が重要だと考えられる。組織学的な検討を行っていないため、あくまでも推論ではあるが腰部多裂筋内に脂肪化が生じ、本来安定性優位な筋から質的な変化が生じることで腰椎の不安定性が増大し、JOA score低下につながったのではないかと考えられる。そのため脂肪様組織化が生じた深部筋に対しては、筋発揮を促すだけでなく、持続的に収縮できる筋肉へと返還する必要性を感じた。またこの組織的変化は、廃用期間ではなく疼痛が発症してからどのような生活を送っていたのかが重要だと考えられた。
 今回は形態学的な検討であったため、今後は組織学的な検討の必要性を感じた。さらに腰部筋機能と廃用性筋萎縮に関して経時的変化を検討していきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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