九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 319
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当院療養病棟での排泄ケアについて
紙パンツを検証・導入しての一考察と今後の課題
*下崎 直子吉原 直貴
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キーワード: 排泄, 自立, FIM
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抄録

【はじめに】
当院療養病棟では離床・活動性向上・自立支援を行うためパンツ型紙オムツ(以下紙パンツ)を導入し、排泄自立に向けたシステムづくりを行った。今回検証により以下の知見が得られ、今後の課題について検討した為報告する。
【方法】
分類:当院では各社ある紙パンツの中から以下の2種類を検証した。1つ目は一度排泄された後はすぐに取り替えることをコンセプトとし一回量320ccの紙パンツを検証した。2つ目は上記コンセプトとは別に紙パンツと紙オムツ2つの機能を有する紙パンツ(以下、2Way紙パンツ)を検証した。
検証方法:当院では以下の5つの方法で検証を行った。1.通気性・尿量・吸収量・横漏れ機能・吸収体における機能を比較。2.実際に履いたときのフィット感・履き心地を比較。3.起立・歩行時のフィット感・動きやすさを比較。4.座位時での吸収量を比較。5.着脱自立レベル・着脱介助レベルおよび立位安定型・着脱介助レベルおよび立位不安定型での着脱のしやすさを比較。
【結果】
検証より一回量320ccの紙パンツを比較した場合、機能面からは著明な差は認められなかった。しかし紙パンツは形状からフィット感と介助のしやすさに分けられるのではないかと考えた。フィット感を重視したものは運動をしやすく動きやすいという側面を持っているのに対して、介助のしやすさに重視したものは立位保持やバランス能力の低下などの場面で着脱が容易にできるという側面をもっていることが分かった。その結果、当院では1回量320cc紙パンツの中からフイット感を重視した紙パンツと介助のしやすさに重視した紙パンツの2種類、2Way紙パンツの中から1種類の紙パンツを選定した。そしてフィット感を重視した紙パンツ・介助のしやすさに重視した紙パンツ・2Way紙パンツの順に自立度・FIMの点数が高いという仮説を立て、紙パンツを選定することとした。
【考察】
紙パンツ選定基準における明確な報告は少ない。よって臨床場面ではベッド上での排泄から自立度の高いトイレでの排泄に移行する場合、どの時期にどの紙パンツを選択すべきかといった判断を行うことは容易ではない。そのため各職種の視点で話し合い、情報を共有することは必要不可欠であると考える。
その中で理学療法士の役割とは、トイレ動作能力に及ぼす機能障害を明らかにし各身体機能の評価を行うこと、また身体機能・能力に合った紙パンツを履くことでどのような能力を発揮することができるのか、介助量軽減につながるのかということを考察し、他職種と話し合うことが必要であると考える。
【現状と課題】
今回の紙パンツ選定基準は仮説の段階である。今後は紙パンツ選定基準の妥当性を検討する為、FIMを用い実行状況を経過で追う必要がある。上記経過におけるデータ収集を行うためにも、今回得られた紙パンツ選定基準に基づき1人の患者を取り巻くチーム内で紙パンツの種類を明確に選ぶ必要がある。そして最終的にはFIMの点数で紙パンツの導入時期を管理できるようなシステムを構築することで、紙パンツを早期に選定し、オムツから離れ、自立へつなげていきたいと考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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