九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 33
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Maximizing Neuromuscular Recruitment(MNR)の検討
-腹横筋筋厚変化に着目して-
*山形 卓也荒木 秀明武田 雅史猪田 健太郎赤川 精彦太田 陽介廣瀬 泰之吉冨 公昭末次 康平野中 崇弘三村 倫子
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キーワード: 腰痛, 腹横筋, MNR
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抄録

【目的】
現在、腰痛の治療として腹横筋・多裂筋等の深層筋再教育が提唱され実施されている、しかし深層筋群を特異的に収縮させるトレーニングに関しては臨床的な観点から否定的な論文も発表されている。現在我々はキルケソーラ氏により提唱されている、レッドコードを用いて不安定下の状況を設定し、疼痛により抑制されている運動単位を最大限に動員させるトレーニング方法(Maximizing neuromuscular recruitment:以下MNR)を用いて腰痛症例の亜急性期から積極的に実施し、良好な反応を得ている。しかし、MNRに関する基礎的、および臨床的検討は見当たらず、表層筋群と深層筋群が同時に収縮しているかは不明である。今回安静時とMNR時の腹横筋筋厚の変化を超音波診断装置を用いて比較、検討したので報告する。
【方法】
健常成人男性5名(平均年齢24.8±3.6歳)を対象にTOSHIBA社製超音波診断装置SSA-260ACEを使用した。計測方法は安静時とMNRトレーニング実施中に超音波診断装置で静止画を撮影し、撮影した静止画から腹横筋筋厚を計測した。プローブは肋骨下縁と腸骨稜の中央より下部に当て外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の境界が明瞭に表出されるよう微調整した。運動方法はレッドコードを用いて後部靭帯系理論を基本に後部斜方向、前部斜方向、外側方向の安定化筋群を対象とした3種類を施行した。各運動時の安静時と運動時の腹横筋筋厚を計測し、その平均腹横筋筋厚を算出した。その差を運動群間で比較した。症例には研究施行開始前に、当院の倫理規則に従いこの研究の趣旨を十分に説明し同意を得た。
【結果】
後部斜方向は安静時に比べ収縮時で平均2.26mm増加した。前部斜方向は平均4.88mmの増加、外側方向は平均1.64mm増加していた。以上の結果から腹横筋筋厚の変化が最も大きいのは前部斜方向で、最も小さいのは外側方向であった。運動時中に疼痛が生じた例では安静時と収縮時の変化量が小さく疼痛を生じさせないことが前提であることが再確認された
【考察】
腰痛症の体幹筋トレーニンク゛に関してはMcGillとHodgesらの業績を中心に議論されており、双方とも理論的モテ゛ルに適合させた良好なサイエンスから興味深い結果が報告されている。今回、体幹筋の共同収縮を不安定下の状況で行う事で、表層筋と深層筋が協調して収縮することが可能なのか、またはどの運動ハ゜ターンが最も効果的なのかを健常人を対象に検討した。結果として腹横筋筋厚の変化は股関節内転筋と外・内腹斜筋の共同収縮を伴う前部斜方向で最大で、外側方向で最も小さかった。これは股関節内転筋群の筋力低下と骨盤帯機能障害の重症度が相関しているという報告があり、今回の結果はその報告を肯定する結果となった。
【まとめ】
今後腰痛症のサフ゛ク゛ルーフ゜分けに準じ、各群に効果的な運動ハ゜ターンの優先順位について検討を行うのが急務と思える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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