抄録
【はじめに】
腹横筋(以下;TrA)は一般的に呼吸・腹部内容物保持・腰椎分節的安定性の保持・腹腔内圧亢進等で最も重要な役割である。しかし、TrAと併走する外腹斜筋(以下;EO)内腹斜筋(以下;IO)の関与について報告は少ない。そこで今回は、超音波診断装置を用い3条件下での側腹筋活動を観察し、若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象・方法】
_i_)対象 ※研究内容を説明し同意を得た。
整形外科疾患のない健常男性10名
平均年齢26.1±4.12歳
_ii_)方法
測定肢位は背臥位(上肢は胸部、膝関節90°)。
呼吸(条件_I_)腹部内容物保持(条件_II_)腰椎分節的安定性(条件_III_)を想定した3条件から以下4動作を超音波診断装置にて静止画を抽出し、EO・IO・TrAの筋厚をそれぞれmm単位で測定。
条件_I_…1.吸気終末時 2.呼気終末時
条件_II_…3.腹部を凹ます動作時(ドローイング)
条件_III_…4.圧バイオフィードバック装置使用時
(以下;1. 2. 3. 4.)
※プローブ位置決定・筋厚測定はすべて同一検者によって行った。
超音波診断装置:TOSHIBA SSA-700A形 プローブ=7.5mHz
圧バイオフィードバック装置:STABILIZER圧=40mHg〈BR〉 _iii_)データ処理
1.と2.・2.と3.・2.と4.のEO、IO、TrA筋厚をそれぞれ比較するため関連2群の検定を用いた。
有意水準は5%とし、それ未満を有意とした。
【結果】 ※( )内はP値
条件_I_:2.でEOは有意に減厚(0.008)、IO 増厚、(0.2)TrAは有意に増厚(0.01)。
条件_II_:3.でEO減厚(0.07)、IO・TrAは有意に増厚。(0.008・0.004)
条件_III_:4.でEO増厚(0.09)、IO減厚(0.3)、TrAは有意に減厚(0.02)。EOn=7/10 増厚
【考察】
条件_I_から先行研究同様、呼吸でTrAは筋収縮していることが言える。条件_II_から、IO・ TrAは筋膜後層配置が同様で腹部内容物保持作用筋である事と呼吸より負荷量が増えた事でIO・ TrAの筋収縮が条件_I_より必要になったと考えられる。条件_III_から、体幹スタビライズではTrA筋力が必要だがEO筋力も必要だと考えられた。
EOの必要性として、TrAのみでは体幹の保持・腰椎ニュートラル・骨盤中間位を促すことが出来ないためだと考える。さらに、金子らの研究では若年者と高齢者のTrA筋厚の変化はなし、EO筋厚は高齢者が有意に減厚したと述べている。TrAは呼吸により収縮しEOは若年者と高齢者の日常生活活動量の差が生じるためだと考えられ、これらのことからTrAは筋萎縮が起きにくいのではないかと考えられた。
最後に、日常生活活動量が増えればグローバル筋活動量も増えることから体幹スタビライズにEOの働きは重要だと考えられた。これは圧バイオフィードバック装置の使用方法の不適切さも考えられるが、少なからず今後はcore exを実施する中でグローバル筋であるEO等を意識したトレーニングも併用して進めていく必要性があると感じた。
【まとめ】
1..3条件の側腹筋筋圧測定を実施した。
2..条件_I_から条件_III_にかけてEO筋厚が増厚した結果よりEOの働きが重要と考察された。
3.今後は条件_III_の条件設定・測定方法の検討、抗重力肢位での側腹筋厚測定実施が必要。