九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 104
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シーティングによる食事動作へのアプローチ
~食事時間中の姿勢保持・圧分散、取り込み動作に変化が得られた症例を通して~
*玉寄 兼多金城 知子
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抄録
【はじめに】
骨盤・体幹・頚部の傾きにより、食事動作が困難な症例に対しウレタンを用いたシーティングを行った。その結果、座位姿勢・食事時間中の圧分散・取り込み動作に変化がみられた。若干の考察を加え報告する。
【症例紹介】
80代、女性。診断名・現病歴:パーキンソン病(平成7年発症)。他施設を経て平成14年10月当院入院。入院当初よりリハビリテーションを行い平成21年より筆者が担当。徐々に機能低下があり車いす座位保持能力低下もみられていた。
【評価】
身長157cm。体重46kg。ADL:FIM54/126点。Yahrの重症度分類は5度。
車いす座位姿勢:標準型車いす、市販クッションを使用。骨盤は後傾・左後方回旋位。体幹は円背・左側屈・左回旋しバックサポートの左側にもたれかかっている。頚部は左側屈・左回旋位。
食事動作:所要時間約30~45分。介助要す事あり。良好な時は右手でスプーンまたはパンを把持し摂食可能。体幹は不安定、頚部・肩の動きはわずかで、主に肘の動きで取り込み動作を行う。スプーンや食物の把持は弱い。体幹・頚部の協調動作もわずか。口へのリーチがやっとで、前腕・手首での位置や向きの調整も行いにくい。
座面圧:体圧分布測定装置(FSA)を使用。仙骨部・左座骨を中心に最大144mmHgの圧を計測。
【介入】
シートクッションを作製し、姿勢が改善したが左座骨部の圧が高値であった(最大200mmHg)。その後、姿勢と圧分散を確認しながら修正。また、食事時間中に徐々に体幹が傾くため左腰背部に体幹サポートを作製。
【結果】
1、食事時の骨盤・体幹・頚部の傾きが改善。2、食事時間中の圧分散の持続(食事前最大89mmHg→食事後138 mmHg)。3、取り込み動作において上肢に合わせた体幹・頚部の協調動作がみられた。
【考察】
エングストロームは「安定性を得るためには圧が必要」と姿勢安定や動作を行うための圧の必要性について述べているが、一方「組織に対する圧は時間が経つにつれて不快になっていくもの」と述べている。症例は車いす座位において体幹・頚部が不安定となり上肢の運動性が低下し食事動作が困難となっていた。また、自ら姿勢修正困難のため、姿勢安定・動作の改善と、圧分散の持続を両立させる必要があったと考える。今回の介入で、姿勢安定・動作の改善が得られた上で圧分散の経時的な変化を評価し、上記の結果が得られたと考える。
【おわりに】
姿勢と圧分散の重要性は確認できていたが、それが持続可能かどうかは疑問があった。今回、ウレタンを組み合わせたシーティングクッション作製による介入で、除圧動作が行えない症例の食事時間中の圧分散が持続して得られるという事が確認できた。今後もより良い変化が得られるよう継続して評価・介入を行いたい。
※今回の発表は症例の同意を得て行っています。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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