九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 162
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要介護高齢者の足把持力と足部柔軟性および足部形状との関連
*安田 直史村田 伸米田 香樋口 直明樋口 善久
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抄録

【目的】
高齢者が転倒すると多額の医療・介護費用を費やし、生活の質を低下させることは明らかであり、高齢者の転倒予防は社会的に重要性が高い。高齢者の転倒リスク要因の1つとして足把持力が注目されている。健常成人では足把持力に関連が高い身体的因子は足部柔軟性と足部アーチ高率であったとの報告がある。しかしながら、先行研究では健常成人を対象としたものであり、転倒予防の必要性が高い要介護高齢者を対象とした研究は見当たらない。そこで本研究は、要介護高齢者の足把持力と足部柔軟性や足部の形状(アーチ高率、足長)を測定し、それらの関連性を検討した。
【対象】
対象は、某通所リハビリテーション施設を利用し、要介護認定を受けている高齢者女性52名とした。年齢は平均84.0±6.2歳であった。なお、対象者には重度の認知症を有する者、運動麻痺を有する者はいなかった。これらの被検者には、研究の趣旨と内容および被検者にならなくとも不利益が生じない事を十分に説明し、同意を得て研究を開始した。なお、 本研究は西九州大学の倫理委員会の認証を得ておこなった。
【方法】
足把持力の測定は、足把持力測定器を使用した。測定は、左右2回ずつ測定し、それぞれの最大値を足把持力値(kg)として採用した。足部柔軟性の測定は専用シート上に足底を置き、足趾及び前足部を最大屈曲させ、踵後端から足部先端の距離を測定する。足長からその距離を除いた値を足部柔軟性とした。左右2回ずつ測定し、それぞれの最大値を足部柔軟性(cm)とした。アーチ高率の測定は、1.安静立位で舟状骨粗面から床面までの垂線の長さと、2.第1中足骨底内側部から踵骨接床最後部までの長さを測定し、アーチ高率を算出(1/2×100)した。足長は、踵後端から最も長い足趾先端までの距離とし、左右それぞれの値を足長値とした。統計処理は、足把持力と足部柔軟性、アーチ高率、足長との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。なお、有意水準は5%とした。
【結果】
足把持力は、足部柔軟性との間に有意な正相関(r=0.56、p<0.01)が認められた。一方、アーチ高率(r=-0.08)や足長(r=0.18)とは有意な相関は認められなかった。
【考察】
 本研究では、転倒予防の必要性が指摘されている要介護高齢者を対象に、足把持力と足部柔軟性や足部の形状(アーチ高率、足長)との関連を検討した。その結果、足把持力と足部柔軟性に有意な正相関が認められたが、アーチ高率や足長との間には有意な相関は認められなかった。このことから、要介護高齢者女性の足把持力は、アーチ高率や足長などの足部の形状よりも足部柔軟性に関連することが示唆された。これにより、高齢者の足把持力同様に足部柔軟性の評価ならびに向上の重要性が推察された。

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