九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 163
会議情報

頚部痛症例に対する骨盤帯マニュアルセラヒ゜ーの効果
‐床反力計を用いての重心動揺の観点から‐
*山本 幸弘坂本 智洋荒木 秀明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
頚部痛症例に対する胸椎モヒ゛ライセ゛ーションの有用性に関しては頚椎モヒ゛ライセ゛ーションとの比較から、その安全性と治療直後の疼痛緩和と可動域改善から多数報告されている。最近では疫学的検討から頚部痛症例における腰痛発生の危険性が指摘されている。それを受け、頸部痛症例の立位平衡機能が検討され、頸部痛症例は健常人と比較して重心動揺が有意に大きく体幹平衡能力の低下が示唆された。我々は臨床において頚部痛症例の視診で骨盤帯と肩甲帯アライメントに非対称性を有する例に対して、積極的に骨盤帯に対する正中化を目的としたマニュアルセラヒ゜ーを行っている。その結果、肩甲帯アライメントの正中化と頸椎可動域が改善する症例を多数、経験している。しかし、頸部痛症例に対する骨盤帯マニュアルセラヒ゜ーの効果に関する報告は、見当たらない。そこで今回、頚部痛症例に対して骨盤帯マニュアルセラヒ゜ー前後の立位重心動揺を測定したので報告する。
【方法】
対象は頚部痛を有して外来通院治療中の12例とした。頸部痛症例では心理社会的影響が危惧されるため、全症例に対して Neck Pain Disability Index(以下NDI)を実施し、重度障害例を除外した。治療比較対象群はNDIで15~24点の中等度障害の8(男性6、女性2)例とした。年齢は23~53(平均34.2)歳で、罹病期間は3~18(平均6.3)週であった。除外診断項目として、顕著な下肢アライメント障害や神経学的脱落所を有する症例を除外した。方法はZEBRIS社製の床反力計WinPDMを使用した。重心動揺は前方のマークを注視させ、足部位置は自然立位、足部を閉じた立位、前後への継足姿勢での立位をそれぞれ10秒間測定した。骨盤帯正中化モヒ゛ライセ゛ーション後、再度重心動揺を測定し、治療前後で比較した。対象者にはヘルシンキ条約に準じ、事前に十分な説明を行い、同意を得た。
【結果】
治療前、全例で骨盤非対称性が観察され、自然立位で重心位置は疼痛側へ中心から変位しているのが観察された。骨盤帯正中化後、1例を除き重心の中心化と総軌跡長の有意(P<0.01)な減少を認めた。特に前後方向への継足立位で顕著に改善傾向を呈した。
【考察】
下肢アライメントに異常がなく中等度の頸部障害を有する頚部痛症例において骨盤帯の正中化により立位姿勢の安定化が重心動揺の観点から立証された。頚部痛症例では疼痛により頚部肩甲帯周囲筋群の筋緊張が亢進し運動制御障害が生じることで、肩甲帯や体幹のアライメントに異常が生じる。腰痛症例に対して骨盤帯を正中化させることで立位重心位置の中心化と安定化が有意に改善することは従来から報告されていたが、今回頸部痛症例においても同様の結果が得られた。腰部障害のみではなく、頸部障害に対しても立位重心が存在する骨盤帯の評価、治療が重要であることが示唆された。
【まとめ】
頸部痛症例をNDIでサフ゛ク゛ルーフ゜分けを行い、中等度の機能障害例に対して骨盤帯マニュアルセラヒ゜ーの重要性を示唆した。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top