九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 178
会議情報

認知症短期集中リハビリテーションの実践
*鎌田 陽之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
老人保健施設では,新規入所者に対して認知症短期集中リハビリテーションを行うことができる。今回当苑での実施例について考察を交え報告する。
【当苑での実施状況】
H21年4月~12月
 1対象者11名(男4名女7名)年齢79.4±8.47歳(89~69)MMSE15.4±5.88点(23~5)寝たきり度A7名B1名C3名。認知症高齢者の日常生活自立度_II_a3名_II_b2名_III_a6名。BI 61.3±31.3点(5~100)
 2介入:学習訓練療法を中心にADL評価・訓練(環境設定含む)出来る活動の提供
 3結果(3ヶ月後):MMSE向上4点2名3点1名2点1名1点4名で同じ者は1名、低下したもの2名。ADL尺度では著変を認めなかった。
【事例紹介】
 1学習訓練療法を用いた軽度例:60代女性。団地で独居をしていたが、意欲の減退、ADLの低下により当苑入所。MMSE15点寝たきり度A2認知症高齢者の日常生活自立度_II_b。BI 75点入所時臥床傾向あり。介入:個別での学習訓練療法とともに、グループ訓練でも課題に取り組んでもらうようにし、集団生活への適応を図った。結果:MMSE19点となり、レクリエーションにも参加するようになった。
 2出来る活動を提供した重度例:80代男性。外科疾患治後、病院より入所。MMSE5点。寝たきり度C2。認知症高齢者の日常生活自立度_III_a。BI 20点。入所時易怒性であり、介護拒否もあった。介入:車椅子での散歩。歌唱。掲示物を用いた日付の確認。切り紙を行った。結果:MMSE1点。課題には集中して行われるようになった。
【考察】
当苑での介入を振り返るため、対象者全体の傾向と事例の検討を行った。対象者全体としては同じ認知症であっても、心身の障害が様々であることがうかがわれた。MMSEの点数では、8名で向上が見られており、リハビリによる改善が示唆された。今回ADL尺度においては大きな変化は認めていないが、今後は対象者により、ADL面での介入の検討も必要と思われた。事例検討では認知症の程度で対照的な2例を選択した。事例1においては、学習訓練療法を中心にしながらも、集団の適応を目的とした。軽度の認知症においては意欲の減退により、社会生活・対人関係の維持が困難になることがあり、それを配慮した介入が必要であると考える。事例2においては、情動面に配慮しながら、出来る活動の提供を行った。認知症短期集中リハビリテーションの対象者が認知症重度の者も含むということを考えると、机上課題でのアプローチのみでなく、残存機能や感情の障害にも配慮した介入が考えられて然りだと思われる。また重度例では、定量的な問題行動の検査から介入を検討する必要があるのではと思われた。認知症のリハビリでは、認知機能自体の評価、介入とともに、全人的なアプローチの必要がある。今後も検討していきたい。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top