抄録
【はじめに】
平成21年度リハビリテーション科では、急変時迅速に対応できなかったケースが4件あった。当院は、急性期病院であり急変のリスク管理が必要な対象者が多い。そこで、平成21年度のインシデント要因分析を行った結果、判断ミス3件、連携ミス1件と判断基準・連絡体制の不明確さが浮き彫りとなった。その問題点を解決すべく急変時対応マニュアル(以下マニュアル)・連絡体制の作成・実施し改善を得られたのでここに報告する。
【方法】
1)マニュアルの見直し
・“リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン”を参考に作成
・自覚症状、JCS、MMT、発生場所で分けた判断基準の作成
2)判断基準を用いた連絡体制の作成
・Dr、ER、各病棟師長、リハビリテーション科で検討を行い作成
・急変が起きた際の連絡先の明確化
・自己判断を無くし、症状を的確に判断するため各病棟・ERのDr・Nsとの連携を強化
・病棟で起きた際には、Nsへ連絡、訓練室で起きた際にはERへ連絡
3)教育体制の強化
・急変時対応の勉強会開催を年1回から3回に増やし、さらにスタッフ全員が参加できる日に変更
・内容においては、座学から実技を交えたものに変更
4)平成21年度と平成22年度の急変時インシデントを比較検証
【結果】
マニュアルを整備し明確な判断基準を作成することで、スタッフの判断ミスが3件から0件となった。
判断基準を用いた連絡体制の作成では、連携ミスが1件から0件となった。また勉強会の回数を増やし、スタッフ全員が参加できる体制へと整えたため、参加率も74%から100%と改善した。
急変としては7件から8件と増えたが、インシデント処理としては、平成21年度の4件から2件へと改善した。平成22年度の2件は、急変時の対応に問題があったものではない。
【考察】
急変は起きてしまうものであり、その時のための対応を日頃から備えておく必要がある。平成21年度まで判断基準・連絡体制が不明確であり、急変時対応の手順に迷いが生じていた。今回、それらを整備し改善を得ることが出来た。さらに各病棟・ERのDr・Nsの指示を仰ぐことで、自己判断を減らし、より迅速な対応が出来るようになったと考える。
さらにこれらが改善した背景には、勉強会の回数を増やし、参加率を100%にしたこと、急変の疑似体験を踏まえた実技内容にしたことにより急変経験の少ないスタッフの戸惑いが減り、各自の行動と認識が深まった。急変など滅多に起きない事態に遭遇した場合、冷静さに欠けてしまうことが多い。そのため、常に危機意識をもって業務にあたる意識付けも重要である。
今回マニュアル・連絡体制・教育体制の整備を行い、リスク管理をしていく上でシステム整備の重要性を感じた。今後も新たな問題が生じた場合にその対策を整備し、合わせて教育にも力を入れ、定期的な勉強会を実施していく。