九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 037
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住宅改修後の使用状況についての追跡調査
~不使用箇所に着目して~
*佐々木 奈苗島崎 裕樹中村 亮二坂本 拓也
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抄録

【はじめに】
 当院では自宅退院する患者に対して住宅改修を提案し,実施している.しかし,改修内容については担当セラピストの判断に委ねられ,その後の使用状況についての確認は希薄になりがちであった.そこで今回改修後の使用状況を調査し,想定外に不使用となったものに着目し考察したので以下に報告する.
【対象】
 H21.4~H23.3で改修を行い当院から自宅退院した患者で,H23.4時点で在宅生活を継続している45名(男性16名 女性29名 年齢72.7±9.9歳)を対象とした.障害老人の日常生活自立度はJ1:4名,J2 :13名,A1:18名,A2:6名,B1:0名,B2 :4名であった.
【方法】
 退院時の障害老人の日常生活自立度(以下前自立度),現在の障害老人の日常生活自立度(以下後自立度),改修場所,改修内容を調査し,使用状況(不使用箇所の有無)を聴取した.前自立度と後自立度の比較にはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.使用状況を,「常時使用」と時々もしくは全く使用しない「不使用」に分類した.
【結果】
 前自立度と後自立度において有意差がみられ,後自立度の方が高い傾向にあった.総改修数は127件で,玄関(40件),トイレ(29件),浴室(28件)の順に多かった.改修内容は手すり設置105件,段差解消15件,便器交換3件,床材変更2件,浴槽交換1件,その他1件であった.常時使用は107件(84%),不使用は20件(16%)で,不使用箇所はトイレ7件,廊下4件,浴室3件,玄関1件であった.
【考察】
 改修後,80%以上が常時使用され,後自立度の方が高い傾向にあったことより,改修は患者の自立度を維持向上させる一要因となる事が示唆された.一方,不使用の理由は1:徐々に自立度が低下2:疼痛などの状況に応じて使用3:セラピストの生活予測が不適切4:患者・家族とセラピスト間の意見の相違のいずれかであった.想定外の不使用を防ぐ為,3に対してセラピストは機能的な予後予測に加え,早期から住環境や以前の生活状況を把握して,生活予測を行う必要があると考える.4について,患者・家族は退院後の生活を以前の生活からイメージする点,漠然とした転倒恐怖感を持ちやすい点,有効な改修の判断が難しい点が相違の原因にあったと考えた.以上のことから,セラピストは患者の能力と住環境を踏まえた生活予測を行い,入院中から家族を含めたADL練習などの継続的な介入を行う必要がある.それにより不使用箇所を減少させることができるのではないかと考える.
【まとめ】
 改修後,常時使用されるものが多かったが,患者・家族とセラピスト間の意見の相違により不使用となる事があった.両者には退院後の生活イメージや転倒,改修についての認識に相違が起こりやすく,住環境を想定したADL練習などを行い,本人・家族に継続的に働きかける必要がある.

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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