九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 053
会議情報
福岡大学病院における肺移植リハビリテーションの現状
*井上 雅史松尾 実香吉村 ゆかり藤田 政臣唯岡 千佳福田 宏幸岡田 茂巳宮川 庸子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
 当院では2005年6月に脳死肺移植の実施施設認定を受けており、脳死肺移植術1例目を2006年10月に、生体肺移植術1例目を同年11月に施行している。2011年1月1日現在、当院では10例の肺移植術を施行しており、ほぼ全例に対してリハビリテーション(以下リハ)を行っている。今回は、10例のうち既に退院しリハが終了している6例について、カルテを基に後方視的に調査を行ったのでここに報告する。
【対象】
 6例の内訳は男性5名、女性1名。年齢は4歳~60歳(平均34歳)。疾患は特発性肺線維症2例、閉塞性細気管支炎2例、びまん性汎細気管支炎1例、肺リンパ脈管筋腫症1例。術式は脳死片肺移植3例、脳死両肺移植1例、生体片肺移植2例であった。
【術後経過】
 術後、リハ開始までの日数は4日~8日(平均6.17日)、人工呼吸器離脱までの日数は4日~11日(平均7日)、ICU退室までの日数は11日~28日(平均18.3日)となっている。術後立位を開始するのに要した日数は9日~20日(平均11.8日)、歩行は12日~29日(平均19.2日)となっており、入院期間は48日~147日(平均68.8日)である。退院時の体重は、全例が入院時よりも低下しており、程度は異なるが6例中4例が低栄養状態という結果になっている。術前と退院時の呼吸機能を%FVC、%FEV1.0で比較したところ、%FVCでは4例で改善を認め、%FEV1.0では5例で改善を認めている。退院時の6分間歩行距離(6MWD)は210m~495m(平均351.4m)であり、計測可能であった全例で術前よりも改善が見られている。退院時、千住らの評価法は60点~92点(平均72.6点)、Barthel Index(B.I)は3例が100点、2例が95点(減点項目は共に階段昇降)、修正MRCスケールはGrade2が2例、Grade3が3例となっている(%FVC、%FEV1.0、6MWD、千住らの評価法、BI、修正MRCスケールの結果は4歳の症例データを含まない)。
【まとめ】
 術後の経過に関してはかなりばらつきがあったが、6例とも自宅退院となっている。術前は全例が酸素投与下での生活を強いられていたが、退院時には全例が酸素投与無しとなっており、手術の成果を実感する結果となっている。しかし、退院時の評価結果を見てみると、程度は異なるが呼吸困難感や倦怠感が持続している様子がわかる。また、今後に対する不安などから、精神的に不安定になる症例も少なくない。そのため、退院後も積極的なフォローが必要となるが、肺移植の場合遠方から来院している場合が多く、リハに関しては自主トレーニングに頼らざるを得ない状況である。十分なトレーニングが行えているとは言えないため、遠隔地でも充実したリハを行えるようにすることが今後の課題である。2010年7月の臓器移植法改正後、当院でも手術件数が増加傾向にある。今後更に経験を重ね、肺移植のリハプログラムを確立していきたい。
著者関連情報
© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top