九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 063
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脱患者
~患者から利用者そして、市民へ~
*小出 裕幸宇田 陽一山本 由美子
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抄録
【はじめに】
 当事業所は医療的なリハビリの提供に重点を置き「幸福な生活」の手助けとなれるように「治せるものは、維持期であっても治す」という姿勢で今まで取り組んできた。今回、経時的評価からこれまでの反省点と今後の方向性が見えてきたので報告する。
【対象・方法】
 当事業所の利用者69名に、TUG・FBS・FIM、主観的幸福感としてPGCモラールスケール(以下PGC)を行った。HDS-Rを行い認知症の疑いのあるものを除外し、口頭での受け答えに支障が無く、かつ3月と9月で経過を追うことが出来た34名(性別:男性5名、女性29名、平均年齢82.0±6.6歳、)を対象とした。 PGCの結果を用いて向上群と非向上群の2群に分類し、各評価項目に差があるか、t検定を用いて比較した。なお、全ての対象者には本研究の目的等を説明し、同意を得た。
【結果】
 TUG・FIM・FBSの結果は2群間に有意差は見られず、PGCと各項目間に相関がないことが認められた。
【考察】
 各評価項目に有意差が認められなかったことより、医療的なリハビリを継続し、どれだけ治療の質を高め、身体機能を向上させてとしても、PGCは向上してこないことが明らかとなった。斎藤らは、通リハにおける重要な視点として、「主体性の再構築、新たな地域生活の再構築」を挙げている。障害の受容等を無視したエンドレスな“医療的リハビリ”の継続は、「医療者―患者」の「治す―治される」の関係から抜け出すことが出来ず、上記の視点の阻害因子であると考えられる。
【今後の方向性】
 まずは、スタッフの意識改革を行っていくと共に、デイケア組織全体が主体性を引き出せる場へと変化しなければならない。また、利用者には“リハビリはしてもらうもの”から“自分でするもの・健康の自己管理”へと意識を転換して頂く必要性がある。今後は、経過や心理状態等を考慮しながら、根気よく説明していくこと、「良い目標」を利用者と共に探すことを実践していかなければならない。そして、再び市民として生活を送って頂きたい。その為には、“移行的リハビリ”の提供は必須であり、何をすべきか追究し続けなければならない。そして、再び市民となるために、利用者の意欲や興味に基づく地域生活の再構築を目指したリハビリを実践しなければならないと考えている。今後もこの取り組みを継続し、経過を報告したいと思っている。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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