九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 079
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肩関節自由挙上時、上腕骨大結節が肩峰下を通過する角度について
~健常群と腱板断裂群の比較~
*溝田 丈士壇 順司大石 浩嗣田中 創山田 実
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抄録
【目的】
 腱板断裂症例の挙上制限因子として,棘上筋機能低下に伴う上腕骨大結節の肩峰下への通過障害がある.その確認は治療する場合の不可欠な評価となるがその明確な指標はない.そこで今回,健常群と腱板断裂群(術後)の肩関節自由挙上時において上腕骨大結節が肩峰下へ通過する肩甲骨面挙上角と,その時のspino-humeral angle(以下SHA)を測定し,両群間で比較を行い各々の特性を調べることを目的とした.
【対象と方法】
 対象は,本研究の主旨を説明し同意を得た健常人(男性16例16肩,平均年齢25.9歳)を健常群とし,当院にて肩腱板断裂と診断され鏡視下腱板断裂修復術を施行した10例10肩(男性6例,女性4例,平均年齢61.8歳)を腱板断裂群とした.なお腱板断裂群は術後5週以降の症例を対象とした.測定肢位は座位にて上肢自然下垂位と肩関節自由挙上における上腕骨大結節前上端部が肩峰下を通過し始めた時点(以下通過開始時)を測定した.測定角度は,通過開始時の肩甲骨面挙上角度(肩甲骨面挙上角度の計測は肩峰角から床面へ向かう垂線を基本軸とし,肩峰角と上腕骨外側上顆を結ぶ線を移動軸とした)とSHA(肩甲棘三角の外側頂点と肩峰角を結ぶ線と肩峰角と上腕骨外側上顆を結ぶ線)とした.下垂時と通過開始時のSHAの角度変化を肩甲上腕関節の動きとし,肩甲骨面挙上角度から肩甲上腕関節の動きの差を肩甲骨の動きとして算出した.両群の自由挙上における通過開始時の肩甲骨面挙上角・SHA・開始肢位から通過開始時までの肩甲骨の動きの比較を対応のないt検定を用いて行った.
【結果】
 通過開始時の肩甲骨面挙上角度は,健常群では30.8°±2.55,腱板断裂群では49.5°±14.77であった.通過開始時のSHAは,健常群では124.1°±2.46,腱板断裂群では122.2°±3.62であった.開始肢位から通過開始時までの肩甲骨の動きは,健常群が18.1°±3.96,腱板断裂群では40.5°±14.26であった.両群間の比較では,通過開始時の肩甲骨面挙上角度,開始肢位から通過開始時までの肩甲骨の動きに有意差が認められた(P<0.05).通過開始時のSHAには有意差が認められなかった.
【考察】
 本結果より健常群に対し腱板断裂群では,SHAには差はないが,通過角度や肩甲骨の動きに差がある.これは,棘上筋の機能である挙上初期時の上腕骨頭を頭方から尾方に押し付ける機能が低下したことや,もともとの腱板断裂にて上腕骨頭の頭方偏位により,骨頭-肩峰間距離が狭小していることで,通過開始時が遅延し肩甲骨面挙上角度が増大していることが考えられる.そのため腱板断裂群において棘上筋の機能不全を肩甲骨の動きにて代償し,通過開始時までの肩甲骨の動きが健常群より大きくなると推察される.
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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