九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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クリニカル・クラークシップやPDCAサイクルを用いた卒後新人教育
*鮫島 淳一*坂下 裕司*富岡 一俊*叶 博文*石本 朋子*加治 智和
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p. 131

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抄録

【はじめに】

新人療法士が臨床実践能力を獲得していくには、適切な卒後新人教育を受けることが重要である。臨床実践能力を高めていく教育は、現場での実践を通して行われることが最も効率的と言われ、その1つにクリニカル・クラークシップ(以下、CCS)がある。また社会人になると、学生時の受け身の姿勢から、自ら能動的かつ計画的に業務に取り組む姿勢への変化が求められる。そのためにはPDCAサイクルによる自己管理が有効とされている。そこで、我々は2013年からCCSやPDCAサイクルを用いた卒後新人教育を実施してきた。今回は、これまでの取り組みと結果について報告する。

【卒後新人教育の紹介】

新入職員1名に対して、経験年数3年目以上の指導員がマンツーマン体制で1年間の指導を行った。また、新入職員と指導員をフォローする管理者を1名配置した。新入職員が賠償責任保険に加入するまでの期間はCCSによる診療の補助を行い、その後も段階的に業務の質と量を増やしていった。また、PDCAサイクルを用いた指導は、毎月の目標を立て、月末には目標に対する「成果」や「出来なかったこと」、「改善点」、「翌月の目標」を新人同士で発表しあうという方法をとった。

【方法】

2013 年と2014 年の2 年間の実績と終了時のアンケートをまとめ、効果の検証を行った。

【結果】

2013年に4名(理学療法士2名、作業療法士1名、言語聴覚士1名)、2014年に4名(理学療法士3名、言語聴覚士1名)が卒後新人教育を修了した。アンケートの回収率は100%であった。CCSでの指導については、「最初からいきなり患者さんを担当するのではなく、見学・模倣・実施の段階を踏むことが出来たので、実際に患者さんを担当することになった際に戸惑うことが少なかった」「CCSを通して、色々な療法士の考え方を多く学ぶ機会に恵まれた」「指導員の監視下で行えるので安心して模倣・実施が出来た」「指導を受けた項目は、自信をもって行えた」「患者さんに対する考え方はもちろん、自己研鑽の方法なども教えていただき、自分なりに行動できるようになってきた」「1つ1つ確実に丁寧に教えていただいたので、一人で患者さんを担当するときの不安が少なくて済んだ」などの意見が得られた。また、PDCAサイクルについては、毎月の話し合いを重ねる毎に、目標の設定や成果、改善させる方法を具体的に挙げられるようになった。また、それに伴い各自が目標に向かって具体的かつ計画的に行動することが出来るようになった。

【考察】

CCSやPDCAサイクルを用いた卒後新人教育を2年間行い、その結果をまとめた。アンケートから、新入職員は当院の卒後新人教育に対して肯定的な感想を抱いていることが明らかになった。CCSによって、実体験を通して療法士として修得すべきスキルと態度、倫理観を育成できたと考える。また、PDCAサイクルによって業務を具体的かつ計画的に遂行する能力を養えたものと考える。さらには段階的に業務の質と量を増やしていったことで、新入職員の負担軽減を図れたと推察される。今後は経験年数2年目以降の卒後教育についても検討し、計画的な人材育成を行い地域医療に貢献していく必要がある。

【まとめ】

療法士の卒後新人教育においてCCSやPDCAサイクルを用いることは、有効な教育手段となることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の発表にあたり、関わった全ての職員に対し個人情報の保護に関する説明の上、同意を得た。アンケートは無記名とし、個人が特定できないように配慮した。製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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