九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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  • 江口 武志, 小田原 創, 松本 淳志, 加来 剛, 中野 綾子, 下山 洸平, 加藤 亜美, 三好 安, 三好 正堂
    p. 1
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    「パーキンソン病(以下,PD)治療ガイドライン2011」によれば,運動療法の有効性を示す報告は散見される.しかし,軽症者(Yahr分類Ⅱ,Ⅲ)の歩行障害を対象とした研究が主であり,歩行不能となった重症者(Yahr分類Ⅳ,Ⅴ)に対する運動療法の効果について検討された報告は稀である.今回,8例の重症PD患者(Yahr分類Ⅳ,Ⅴ)に対して起立-着席運動を行ったところ,全例でADLが改善し下肢筋力の強化が得られた.ここに介入方法と具体的結果について報告する.

    【対象】

    2011年~2015年にPDの治療・リハビリテーション目的にて当院へ入院したPD患者8例を対象とした.男性4例,女性4例.年齢68.1±4.6歳.罹病期間13.9±5.6年で,Yahr分類ではⅣ4例,Ⅴ4例であった.

    【方法】

    介入法は主に起立-着席運動を行った.平行棒を把持し,椅子の高さを35㎝~50㎝の範囲で調整し可能な限り自主的に行える高さに設定した.入院時に自主運動が行えなかった3例は介助にて行った.実施期間は4週間(週7日).PT,OT各3単位/日と,集団で起立-着席運動を約2時間/日行った.入院時と4週後のFIM運動項目(以下,FIM-M),10m歩行時間,歩幅,膝伸筋力を測定した.膝伸筋力はIsoforceGT-330(OG技研)を使用し,左右平均値を求め,健常者平均値に対する%とした.別に体重比(膝伸筋力kg/体重kg)を計算した.

    【結果】

    起立-着席運動は1日平均279.8±63.5回行えた.入院時運動に介助を要した3例は4週目までに全例自主運動が可能となった.治療結果:歩行能力は,入院時介助歩行であった7例は全例監視歩行となり,不能であった1例は介助歩行に改善した.10m歩行時間は入院時53.0±47.8(秒),4週後28.0±20.4(秒),歩幅は入院時0.21±0.12(m),4週後0.29±0.08(m)になった.移乗能力は,入院時監視を要した4例は全例自立し,入院時介助を要した4例のうち1例は自立し,2例は監視に改善し,1例は介助のままに終わった.FIM-Mは入院時43.8±12.4から4週後61.3±12.3になった(利得:17.4±7.5).膝伸筋力は入院時19.3±10.1(kg)から4週後31.8±13.9(㎏)になり,健常者に対する%で示すと25.8±11.7(%)から42.4±15.9(%)になり,体重比では0.34±0.16(㎏/㎏)から0.57±0.20(㎏/㎏)になり,全例に改善が見られた.

    【考察】

    パーキンソン病の運動障害は,疾患そのものの進行による一次的要因と,低活動のために生じる二次的要因の複合によると考えられる.今回レボドパ製剤など薬物療法の効果が減弱した慢性期の重症PD患者(Yahr分類 Ⅳ,Ⅴ)を対象とし,起立-着席運動を主に介入手段として用いた.三好は重症者ほど強力なリハビリが必要で,PDのリハビリにおいても起立-着席運動が有効であると述べている.また中馬は,PDは低活動により廃用症候群を起こしやすく,下肢筋力は訓練により改善することを指摘している.今回我々の症例では全例において介入後に下肢筋力,ADLの改善を認めたことから,入院前に廃用症候群があったと考えられた.近年推奨されているPDの運動療法としてトレッドミルや聴覚刺激による歩行訓練などがあるが,いずれも重症PD患者に対して実施困難と言える.起立-着席運動は歩行よりも筋活動が多く,危険が少なく,簡単に行える運動として知られている.今回の検討では,重症PD患者に対する運動療法として起立-着席運動は実施しやすく,かつ効果が期待出来る.PDの重症者に対する運動療法の一つとして起立-着席運動の有用性を提案したい.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た.また,対象者に研究について十分な説明を行い同意を得た.製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない.

  • 橋口 聖剛, 伊藤 憲一, 嘉村 知華, 橋口 佑菜
    p. 2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    維持期リハビリテーションを継続している右中大脳動脈(MCA)領域の心原性脳梗塞患者がパーキンソン病(PD)を続発した。心原性脳梗塞にPDが続発した症例報告は渉猟しえた限り見受けられない。そこで,本症例に観察された症状と経過を歩行速度と照らし合わせて報告する。

    【症例呈示】

    60代男性。右MCA領域の心原性脳梗塞後遺症(発症後17年)で左片麻痺。画像所見:基底核,前頭,側頭,頭頂部に広範な低吸収域。Br-stage:Ⅲ?Ⅱ?Ⅳ。筋緊張:安静時は左上下肢ともにMAS1+?2。動作時著明に亢進。上肢:屈筋>伸筋,下肢:屈筋<伸筋。感覚:左上下肢ともに重度鈍麻。BI:95点。当院へは自動車運転にて来院し、左プラスチックAFOと一本杖歩行にて来室。週2回の外来理学療法、週1回の作業療法を継続。性格:営業職だったため明るく気さくで冗談を交えながらコミュニケーションをとる。社会参加状況:週1回の地域行事に参加。日常的に可能な家事を行い,休日は妻とドライブに行くなど積極的に行動。

    【歩行速度】単位:秒,()内は歩数。

    10m:X-3年11.46(20.92),X-2年11.67(20.83),X-1年12.56(22.17),X年14.13(23.50),X+1年16.91(26.08)

    TUG:X-3年11.75,X-2年11.23,X-1年12.18,X年13.32,X+1年18.50

    ※速度,歩数ともに年平均値を記載。

    【経過】

    X年10月:右上肢に安静時振戦出現。10m:16.79(26),TUG:16.06。

    X年12月:強い腰部痛出現。体幹前傾姿勢著明。アライメント変化。BI:90点へ減点。10m:20.98(32),TUG:測定不可。

    X+1年2月:自律神経症状(血圧低下,頻脈等)出現。10m:16.75(27),TUG:16.11。

    X+1年3月:全身の筋緊張亢進,動作能力低下。10m:15.32(25),TUG:17.30。

    X+1年5月:仮面様顔貌出現。右足部筋緊張亢進,歩行時にクローヌス出現。机上検査,観察場面における左半側空間無視再燃。自宅内外での活動量低下。10m:14.63(24),TUG:17.41。

    X+1年6月:会話が小声になり,反応に時間を要する。10m:19.06(27),TUG:21.70。

    X+1年7月:精査の為A病院受診,MIBG心筋シンチグラフィー実施。MIBG集積低下を認める。10m:18.04(27),TUG:16.18。

    X+1年8月:レム睡眠行動障害,物盗られ妄想,作為体験出現。動作範囲の狭小化。自動車運転中止。主治医よりPDと診断。10m:17.66(27),TUG:20.95。

    X+1年9月:嗅覚低下。症状の日差変動出現。体幹の分節運動困難。表情は増える。10m:15.58(26),TUG:17.69。

    X+1年10月:主な移動手段が杖歩行→車いす介助へ。自宅浴槽のまたぎ動作に介助を要する。10m:22.65(31),TUG:測定不可。

    X+1年11月:レボドパ製剤処方。運動機能,認知機能わずかに回復。体幹前傾姿勢軽減し,周囲環境への関心向上。10m:16.41(25),TUG:23.15。

    X+2年2月:右肩・股関節に鉛管様の抵抗感出現。BI:85点へ減点。10m:14.34(22),TUG:19.97。

    【現在の状況】

    画像所見:変化なし。筋緊張:安静時のMASは左上肢3,下肢1+。右肩・股関節に鉛管様抵抗感あり。BI:85点。主な移動手段:車いす介助。歩行:遠位監視レベル。自動車運転:中止。社会参加状況:週1回の地域行事は継続しているが,家事はほとんどしていない。

    【本症例報告の意義】

    長期間に渡り症例を追跡する上で,歩行速度の経年的変化を捉えることは全身状態の指標として有用かつ臨床的な評価であることを再確認できた。維持期の患者が大きな変調を来すことは多くないが,過去の状態と比較し,多職種・他施設連携を行うことで本症例のように早期発見に繋がるケースもあるため,維持期リハの重要性を再認識した。また,このような連携は地域包括ケアシステムにおいても必要不可欠であり,変調をきたした者に対し早期に正確な医療を提供することができるため,今後も継続したい。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本報告について十分に説明し,同意を得た。

  • 野方 紀史, 篠原 敦, 新藤 和廣, 松本 淳志, 三好 安, 三好 正堂
    p. 3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    脳卒中片麻痺患者の歩行回復にどのような因子が関与するかの研究は多いが,Brunnstrom Stage(以下,Br.st)Ⅱ以下の重度片麻痺患者は,最初から歩行不能として除外されていることが多い.しかし当院では,起立-着席運動(以下,起立運動)を反復して行い,非麻痺側・麻痺側の下肢筋力を徹底的に強化し,重度麻痺でも歩行が回復する例は少なくない.今回,Br.stⅡ以下の重度片麻痺患者に限定し,歩行回復に関与する因子を分析した.

    【対象・方法】

    2010年から2015年までの6年間で当院に入院した初発脳卒中片麻痺患者549例のうち,発症前の歩行が自立し(FIMで6点以上),当院でのリハビリテーション(以下,リハ)後,退院時下肢Br.stⅡ以下の重度麻痺患者53例を検討した.年齢は70.8±10.4歳,右麻痺31例,左麻痺22例,深部感覚障害「あり」26「なし」27,下肢筋力の指標として非麻痺・麻痺側膝伸筋力をIsoforceGT-330(OG技研)を用いて測定し,その値を健常者平均値で除した値(健常者平均値比)を用いた.発病から入院まで48.1±62.1日,当院の在院日数は67.5±31.9日であった.

    治療方法は,理学療法は起立運動を重視し,主にこれを行った.介入時は全例で介助・促しを要したが,可能な限り自発的に行えるように指導し,1日500~600回以上行った.作業療法も体幹・下肢筋力を重視し,起坐,ベッド上移動,車椅子やトイレへの移乗,車椅子駆動,時には理学療法と同じ起立運動を行った.1日の治療時間は自主訓練も含めて約4時間であった. 歩行は,介入時,全例不能であったが,平均67.5±31.9日間のリハ後に自立4例,監視12例,介助30例,不能7例となった.これを自立・監視群16例と介助・不能群37例の2群に分け,後方視的に対応のないT検定,Mann-Whitney検定を用いて比較検討した.またPearsonの相関係数分析でFIMと下肢筋力の相関を調査した.なお,統計解析は,SPSS 11.5J for Windowsを用い,有意水準は5%未満とした.

    【結果】

    自立・監視群/介助・不能群の順で記載する.年齢は65.9±9.7歳/72.8±10.1歳で自立・監視群が有意に若かった(p<0.05).性別は男7,女9/男19,女18で差はなかった.麻痺側は右13,左3/右18,左19で,自立・監視群で右麻痺が有意に多かった(p<0.05).深部感覚障害は「なし」12,「あり」4/「なし」15,「あり」22例で自立・監視群に有意に少なかった(p<0.05).非麻痺側下肢筋力は43.5±26.3%/32.5±19.6%で自立・監視群は有意に強かった(p<0.01).麻痺側下肢筋力は2.8±3.7%/1.1±2.5%で差はなかった.FIMは87.3±17.6/57.2±22.3で差は有意であった(p<0.01). またFIMと非麻痺側下肢筋力との間に相関(r=0.598,p<0.01)を認めた.

    【考察】

    従来,片麻痺患者の歩行回復を阻害する因子として,高年齢,重度麻痺,感覚障害などが挙げられている.今回われわれは,重度麻痺者について検討した.結果は高年齢,左片麻痺,感覚障害,非麻痺側下肢筋力低下は有意に歩行回復を阻害していた. Hirschbergや三好は片麻痺患者において健側下肢筋力を強化することにより,たとえ麻痺が重度であっても歩行は可能になると述べ,非麻痺側下肢筋力の重要性を報告している.また川渕も片麻痺患者での移動能力には非麻痺側下肢の代償が不可欠であると述べている.これらの事実から非麻痺側下肢筋力の強化を行うことが歩行回復をもたらすことが示唆され(p<0.01),起立運動は効果的であり,歩行の回復・廃用性筋力低下の予防が行えることを強調したい.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究の計画立案に際し,所属施設の倫理審査員会の承認を得た.また対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た. 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,株式,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない.

  • 山口 雄介, 末永 陽祐
    p. 4
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    急性期脳梗塞の拡散強調画像(以下:DWI)は細胞性浮腫を最も早期に検出できることから診断及び機能予測、治療方針の決定において多く利用される。これまでに急性期の画像所見から症状増悪の傾向を辿るBranch atheromatous disease(以下:BAD)に関する機能予測に関する報告は多くみられる。近年では、拡散テンソル画像を用いた残存機能の予測に関する報告が多く、脳の構造画像を用いた予後予測の精度が高まっている。しかし、臨床場面において脳画像と臨床所見との乖離があるなどの課題もあるため、画像から得られる情報を整理し、他の医学的情報や臨床所見も踏まえた機能予測を行なうことが重要である。そこで、急性期DWI画像から病巣位置と機能障害との関係を調査し、画像所見と臨床所見において機能的乖離がみられた症例の特徴を明らかにすることを目的とする。

    【方法】

    対象は当院に平成27年1月から平成28年3月に入院した放線冠を含む脳梗塞を発症した患者42名(平均年齢75±12歳、男性24名、女性18名)とした。運動機能の評価として入院時のBrunnstrom-recovery-stage(以下:BRS)、を用い、対象者のうち上下肢それぞれに対してBRSⅢ以下を重症群、BRSⅣ以上を軽症群に分類した。画像所見は、入院後1週間以内に撮影されたDWIの傍側脳室体部レベルのスライスを用い、梗塞巣面積及び体積と病巣位置を計測した。梗塞巣面積は傍側脳室体部レベルにおける面積を計測し、梗塞巣体積はABC/2法にて便宜的に算出、病巣位置は病巣中心から側脳室後極との距離(CP)と側脳室前極から後極との距離(AP)との比(CP/AP)を用いた。解析は梗塞巣面積と体積及びCP/APのそれぞれを各群における平均値を比較した。統計解析はMann-WhitneyのU検定を行ない、有意水準は危険率5%未満とした。

    【結果】

    上肢機能は重症群10名、軽症群32名であり、梗塞巣面積(重症群:220.5±64.4mm2、軽症群:138.3±121.7mm2、p<0.05)と梗塞巣体積(重症群:3.8±1.8ml、軽症群:1.8±2.1ml、p<0.01)においては有意差を認めたが、CP/APにおいては有意差を認めなかった。下肢機能は重症群8名、軽症群34名であり、梗塞巣面積(重症群:229.5±45.3mm2、軽症群:141.0±120.9mm2、p<0.05)と梗塞巣体積(重症群:4.3±1.6ml、軽症群:1.8±2.1ml、p<0.05)においては有意差を認めたが、CP/APにおいては有意差を認めなかった。上下肢ともにBRSⅢ以下に分類された全例にBAD型の梗塞巣の拡大を認めていた。軽症群のうち、重症群と同程度の梗塞巣面積及び体積を有する症例は6名であった。

    【考察】

    本研究においても、先行研究と同様に梗塞巣面積及び体積が運動機能障害に大きく影響することが示唆された。一方で画像所見から重度の運動麻痺を呈する症例と同程度の梗塞範囲であるものの運動機能障害が少ない症例を複数認めた。その特徴は梗塞巣の中心(CP/AP:62.5%)が、重症群(CP/AP:47.9%)、梗塞巣の小さな軽症群(CP/AP:47.0%)と比較しても、前方に位置する傾向にあった。本研究からは、梗塞巣中心部の位置から運動機能局在を判断する結果には至らなかったものの、皮質脊髄路が放線冠の後方を走行するという報告と併せて、梗塞巣の大きさと位置から機能予測を行なう一助になると考えられる。

    【まとめ】

    急性期脳梗塞においては、病態及び画像所見から病巣の進行のリスクを理解し、機能予測を行なうことで適切な理学療法介入が行えると考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき、個人が特定されないように情報の取り扱いには十分に配慮し、後方視的に情報を収集して実施した。本研究において利益相反に関する開示事項はない。

  • 佐多 裕次郎, 福田 勇, 轟木 耕司, 山中 弘子, 山中 英賢, 宮村 紘平
    p. 5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    近年,脳神経の再構築による片麻痺上肢機能向上を目的とした,新たなリハビリテーション手法として,低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(以下,rTMS)が注目されている. rTMSと集中的作業療法の効果については角田らにより報告されており,その効果は退院4週間後も維持できているとされている.今回,rTMSと集中的作業療法により,麻痺手の機能向上がADLに汎化され,上肢機能が4週間後も維持されていた症例を経験したので報告する.

    【症例紹介】

    70歳代女性.右利き.X年右被殻出血により、左片麻痺を呈している.一人暮らしで,週に1回デイサービスに通っていた.今回,左上肢機能の回復を希望し,X+17年rTMSと集中的作業療法目的で当院入院.本人の希望は左手で茶碗を持って食事がしたいとのことであった.

    【方法】

    本治療は東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座を中心に実施しているNEURO-15と同様のプロトコールで実施した.入院期間は15日間とし,低頻度rTMS20分(健側大脳運動野手指領域に1Hzの刺激を1200発),個別作業療法60分,自主訓練60分を1セッションとし,入院日,退院日,日曜日を除く11日間,2セッションずつの合計22セッション実施した.また,治療前後と退院4週間後に評価を実施した.評価項目は上田式片麻痺機能検査,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下FMA),Wolf Motor Function Test(以下WMFT),握力,Jikei Assessment Scale for Motor Impairment in Daily living(以下JASMID)を用いた.個別作業療法では促通反復療法,課題指向型訓練を中心に実施し,自主訓練は症例の能力に合ったものをセラピストが指導した上で実施した.

    【結果】

    治療前,治療後,退院4週間後で比較した.上田式片麻痺機能検査は上肢グレード7→11→11,手指グレード8→10→10.FMAは40/66点→63/66点→65/66点.WMFTは480.8秒→21.3秒→15.7秒.握力は6.3kg→13.3kg→14.4kg.JASMIDの使用頻度は26.6点→76.6点→80.0点.JASMID動作の質は24点→81.6点→78.3点となった.また左手で茶碗を持ち食事をすることも可能となった.

    【考察】

    慢性期脳卒中片麻痺患者の上肢FMA の臨床的に有意な最小変化量(Minimal Clinically Important Difference:MCID)は4.25~7.25 点と報告されている.本症例はrTMSと集中的作業療法により,FMAは40点→63点となり,MCIDを大きく上回る結果となり,rTMSと集中的作業療法は有効であったと考えられる.また本治療によりJASMIDに評価による上肢の使用頻度は改善し,4週間後も維持されていたことから,麻痺手の機能向上はADLに汎化されたと言える.本症例は入院時から麻痺手で出来ることが増える度に,「左手を使うことが楽しい」と話されており,日常生活の中でも,麻痺手を積極的に使うようになったと考える.さらに在宅でも本人のモチベーションは維持されており,左手を使用し続け,自主訓練も継続していたことが今回の結果につながったと考える.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本報告に際し,当院倫理・患者の権利検討委員会の承認と,患者本人から同意書による同意を得た.

  • 金田 卓
    p. 6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    腰椎と股関節には密接な運動連鎖がある。特にHip Spine Syndromeの確立以降は、様々な病態での影響が注目されているが、先行研究において腰部脊柱管狭窄症と股関節の関連の報告はない。そこで本研究では腰部脊柱管狭窄症(LCS)患者における股関節可動域への影響を検討した。

    【方法】

    対象年齢は60~79才に限定した。当院の脊椎外科において内視鏡下椎弓切除術を施行した患者53名をLCS群とし、レントゲン所見により腰椎と股関節に疾患がなく関節リウマチや変形性膝関節症もない49名をcontrol群とした。LCS群の中でも症状に左右差のある神経根型と混合型の患者では患側と健側に分けて検討した。測定は学会制定の方法に準じゴニオメーターを使用して股関節の屈曲・伸展・外旋(0度位での外旋)・内旋(0度位での内旋)を同一検者が計測した。検討項目はcontrol群全体に対してのLCS群全体および患側と健側、男性と女性に分けての比較とした。統計処理には対応のあるt 検定とMann-Whitney U testをいてP<0.05を有意差ありとした。

    【結果】

    LCS群は男性22例・女性31例で平均年齢72.0歳であり、神経根型が24例、混合型19例であった。control群は男性20例、女性29例で平均年齢68.6歳であり、両群の年齢に差は認められなかった。股関節の可動域は屈曲・伸展・外旋に有意差は認められなかったが、内旋においてはLCS群全体(26.1±6.6)および男女共に患側(男性24.9±3.2、女性26.9±8.1)でcontrol群(22.2±4.8)よりも大きく、統計学的にも有意な差が認められた。

    【考察】

    本研究ではLCS患者の男女ともに股関節可動域は内旋が大きく、特に患側で有意な傾向が認められた。過去の報告では腰椎椎間板ヘルニアの患者では内旋が有意に小さいとされ、股関節回旋可動域が小さいと腰椎へのメカニカルストレスが増大しヘルニア発生に関与すると推察されている。本研究ではLCS患者で男女ともに内旋が大きいという逆の結果となり、性差特有の生活習慣よりLCSの特徴が影響していると考えられる。今回の対象は手術に至った患者であり罹病期間の長さが影響した可能性がある。LCSに特徴的な間欠性跛行では腰椎前屈に伴い骨盤は後傾する。骨盤後傾は股関節には伸展・外旋の方向へ作用するが、これを代償する動作の繰り返しが内旋可動域の増大に繋がったのかもしれない。病態の解明にはさらなる検討を要するが、LCSの間欠性跛行や疼痛回避による姿勢変化が股関節可動域に影響を及ぼす可能性が示唆された。

    【まとめ】

    腰部脊柱管狭窄症の間欠性跛行や疼痛回避による姿勢変化が、股関節の内旋可動域に影響を及ぼす可能性が示唆された。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究の計画立案に際し、当院の倫理審査員会の承認を得た(承認日平成26年5月1日)。 また研究を実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。 また謝金や研究費、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

  • 冨田 愁, 山﨑 博喜
    p. 7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    高齢者の日常生活活動の中で、階段昇降は非常に難易度の高い動作であるが、階段昇降が可能である身体機能を獲得することは、手段的日常生活動作に影響することが考えられる。そのために、階段昇降における研究は多数なされている。現在までに、主に下肢の運動学と動力学的研究が主であり、体幹に関しての分析は見当たらない。したがって、本研究では、基礎データとして若年者の階段昇降動作時の下肢、体幹の筋電図学的分析を行い、臨床に帰結することである。

    【方法】

    対象者は正常成人男性5名、正常成人女性2名の計7名である。高さがそれぞれ異なる台を6つ使用し、6段の階段を再現する。被験者は階段昇降動作を一足一段とし、動作遂行速度は自然速度とした。被検筋は右外側広筋(以下:VL)、右腓腹筋外側頭(以下:GCL)、右外腹斜筋単独部位(第8肋骨部位:EO)、右内腹斜筋(以下:IO)、の4筋とし、無線式EMG測定装置EMG master(メディエリアサポート企業組合社製)を用いて、パーソナルコンピューターに取り込んだ。また、筋電図の記録は第一中足骨頭に貼付したフットスイッチ信号から1階段昇降周期分のデータを1回の階段昇降から2つ抽出した。なお、被験者一人あたりの階段昇段、降段動作をそれぞれ3回ずつ実施し、その平均を1階段昇降周期とし算出した。各被験者の1階段昇降周期時間を100%に換算しており、階段昇降時の%IEMGは全て各筋の最大随意収縮時のIEMGで補正し、相対的IEMGとして算出した。

    【結果】

    昇段時の結果として、まずVLが踵接地から荷重応答期にて%MVCに対する40%程度の筋活動がみられた。その後減少し、遊脚中期で再度活動を高めた。GCLでは立脚中期で40%増加し、その後減少した。EOでは立脚中期から立脚後期で26%程度活動を高めた。IOは立脚中期で最も高値を示したが、最高値で18%程度であった。また降段時の結果はまず、 EOは踵接地から荷重応答期が%MVCに対する30%程度の筋活動の値を示し、その後、立脚中期でVLが25%、GCLでは24%の活動がみられた。

    【考察】

    昇段動作では,踵接地から立脚中期にかけてVL、GCLの値は高値を示していた。これは、立脚肢への荷重の増大に伴う身体質量の保持、昇段するための身体質量重心の上昇を図る下肢伸展モ―メントの生成によるものだと考えられる。EOは遊脚相にて高値を示した。特に左脚肢への重心移動時に値が高まっていることから、階段昇降動作における上半身身体質量中心の制御に貢献している可能性が考えられる。降段では、重量の受け入れから降下制御相においてVL、GCLの値が高値であった。このことは、立脚肢への荷重負荷の吸収、または身体質量重心の制御を下肢伸展モーメントが担っているためと考えられる。EOでは、重量の受け入れから降下制御相の場面において、VL、GCLの値より高値を示していることから、階段降段動作時の身体制御では、下肢のみならず腹筋における重要性が高い可能性が示唆された。

    【まとめ】

    階段昇降動作においては、下肢のみならず腹筋の制御も重要であることが示唆された。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者には検査実施前に研究についての十分な説明を行い、研究参加の同意ならびに結果の使用について了承を得た。

  • 髙瀬 真衣, 岡 高史, 羽田 久美, 井上 勲, 土井 篤
    p. 8
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに、目的】

    脳卒中後片麻痺患者では、非麻痺肢の過剰使用により脳梁間半球間抑制のアンバランスが生じ、損傷側脳活動の抑制増大のため回復が阻害されると言われている。脳卒中後片麻痺患者に対する起立練習は簡易に実施でき、脳卒中ガイドライン2009では起立着座訓練を頻回に行うことを歩行能力改善のために強く勧めている。しかし上記理論で考えると、非麻痺側下肢優位での起立運動が麻痺側上肢の麻痺回復を阻害している可能性を考えた。我々の知る限り、麻痺側下肢の荷重量の違いで、起立動作前後で上肢由来の第一次運動野(上肢M1)の脳の興奮性がどのように変化するかについての報告はない。そこで予備的研究として、2名の片麻痺患者に対し、起立動作時の下肢荷重量を測定すると共に起立動作前後での上肢M1の興奮性の変化について経頭蓋磁気刺激装置(TMS)を用いて検討した。

    【対象と方法】

    対象は起立動作が可能で、上肢M1で安静時運動誘発電位(MEP)を記録できる脳梗塞後片麻痺患者2名(患者A ・B)とした。患者Aは60歳代 女性、体重53Kg、病巣は右運動野並びに感覚野、発症後9カ月で上田式12段階片麻痺グレードは左上肢12、手指12、下肢11。患者Bは 50歳代男性、体重82Kg、病巣は右放線冠、発症後13カ月で上田式12段階片麻痺グレードは左上肢7、手指7、下肢8。両者共右利き、MMSE30点であった。研究方法はTMS (MagPro R30、Magventure社製)と8の字コイルを使用し、2日に分けて行った。1日は麻痺側下肢の荷重量が体重の50%となるよう介助下で起立動作を行い、もう1日は介助なしで実施した。起立動作方法は10回を1セットとし、合計3セット一定の動作速度で行った。メトロノームを使用し、2秒で起立、2秒で着座、1秒休みのリズムで行い、セット間は2分の休憩を設けた。両足底に体重計を置き荷重量は検査者が確認した。評価は右上肢M1領域の頭皮上にコイルを当て、安静時運動閾値の120%の強度で刺激し、左第一背側骨間筋から安静時MEP振幅を記録した。各起立動作の前後でMEP振幅を10回記録し、その平均を求めた。

    【結果】

    患者Aでは介助ありの麻痺側荷重量は各平均23.5Kg(体重の44.3%)、介助なしでは19.3Kg(体重の36.3%)であった。MEP振幅値は、介助ありでは起立動作前に比べ1セット後にMEP振幅が35.4%、2セット後に0.8%、3セット後に10.7%下降した。介助なしでは起立前から1セット後に12.7%、2セット後に28.6%、3セット後に11.0%下降した。患者Bでは、介助ありの麻痺側荷重量は各平均46.3Kg (体重の56.4%)、介助なしでは45.0Kg (体重の54.8%)であった。介助ありでは1セット後にMEP振幅が29.5%、2セット・3セット後に88.5%上昇した。介助なしでは1セット後に20.9%、2セット後に13.3%、3セット後に89.4%上昇した。起立動作後のMEP振幅は、荷重量が非麻痺側優位の患者Aでは低下し、麻痺側優位の患者Bでは増大した。また患者Aの麻痺側荷重量の測定結果より、慢性期脳卒中片麻痺患者では麻痺側下肢へ十分な荷重をかけるよう調整することは、介助下でも困難であった。

    【考察】

    麻痺側への荷重量の少ない患者Aでは起立運動後のMEP振幅値が低下し、逆に麻痺側へ十分に荷重可能な患者BではMEP振幅値が起立運動後に上昇したことから、起立訓練時の下肢への荷重量が上肢M1の興奮性に影響することが推察された。今回の結果を踏まえて急性期より、麻痺側下肢へ多く荷重をかける練習方法にすることで、下肢・体幹機能だけでなく麻痺側上肢の運動機能向上にも良い影響を与えることが考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は当院の研究倫理委員会の承認を受け、対象者から書面による同意を取得後に実施した。

  • 松澤 雄太, 貴嶋 芳文, 木山 良二, 福永 誠司, 藤元 登四郎, 関根 正樹, 田村 俊世
    p. 9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    加速度計は簡便に歩行を計測することが可能で,諸家によりセンサ装着位置や解析方法が検討され,歩行評価や理学療法の効果判定等に利用されている.しかし,加速度のデータは対象者が理解することが困難である.そのため,歩行中の前額面,矢状面における加速度を散布図として可視化したリサージュ図形を用い,結果の解釈やフィードバックを容易にする手法が考案されている.また,リサージュ図形の特徴を示す指標として,各4つの象現の矩形面積の比を基に算出するLissajous Index (LI)が報告されている.前額面の第1・2象限のLI(左右LI)は,完全な左右対称で0となり,値が大きいほど非対称になることを意味する.若年者に比べ,高齢者で左右LIが高値を示すことなどが指摘されており,LIは解釈が容易で治療の効果判定にも有効であると考えられる.しかし,片麻痺患者の歩行時の加速度のリサージュ図形に関する報告は少ない.本研究の目的は,片麻痺患者の歩行中の加速度のLIとその他の加速度指標との関連性から,リサージュ図形の有用性について検討することである.

    【方法】

    対象は,脳卒中片麻痺者18名(年齢66±11歳,男性10名,女性8名,下肢Br.stage Ⅲ2名,Ⅳ8名,Ⅴ8名,右片麻痺9名,左片麻痺9名)であった.3 軸加速度センサ(サンプリング周波数100Hz)の感度方向は,後方向,右方向,上方向を正とした.加速度センサを第3腰椎レベルに装着し,屋内16m直進路を快適速度で歩行させ,中央の5歩行周期を分析対称とした.1歩行周期を100%として時間正規化を行い,LI,Root Mean Square (RMS),Root Mean Square ratio (RMSR),Autocorrelation (AC)の定常性および対称性,歩行速度を算出した.LIは,5歩行周期を加算平均し,左右LI(前額面,第1・2象限)と,前後LI(矢状面,第1・2限),上下LI(矢状面,第2・3象限)を算出した.前後LIと上下LIは,値が大きいほど後方,下方への加速度が大きいことを示す.各LIと加速度指標の関係を検討するため,Spearmanの順位相関係数を用いた.統計学的検定にはR-2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした.

    【結果】

    左右LIと全ての加速度指標には,有意な相関を認めなかった.上下LIと前後・上下・左右方向のRMS (rs=0.56-0.61, P<0.05),上下AC定常性(rs =0.61, P<0.01),上下AC対称性(rs =0.49, P<0.05),歩行速度(rs =0.58, P<0.05)に有意な正の相関を認めた.

    【考察、まとめ】

    本研究の結果から,矢状面における上下LIは,RMSや上下ACとの相関を示し,片麻痺歩行における定常性や対称性を反映することが示唆された.片麻痺患者の歩行時加速度のリサージュ図形では,特に矢状面における上下方向の形状が重要であると考えられた.リサージュ図形は臨床における簡便な歩行分析やフィードバックの手段としての応用が可能である.今後は,歩行の自立度や下肢筋力が,リサージュ図形に及ぼす影響についても検討をすすめる必要がある.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者には,研究の趣旨と内容について説明し,理解を得た上で書面にて同意を得た.また,研究の参加は自由意志であり,被験者にならなくても不利益にならないことを十分に説明した.データはコンピューターで処理し,研究の目的以外には使用しないこと,及び個人情報の漏洩に注意した.なお,本研究の内容は所属施設の倫理委員会(承認番号第92号)にて承認を得た.本研究は開示すべき利益相反関係にある企業はない.

  • 橋本 裕司, 羽田 清貴, 奥村 晃司, 井原 拓哉, 杉木 知武, 川嶌 眞人
    p. 10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    スポーツ動作時のマルアライメントに関して、回内足や足部内側縦アーチ(以下、MLA)の低下による、上行性の運動連鎖の破綻がACL損傷やシンスプリントの危険因子であるとの報告が散見される。また、MLAの形成は、足部内・外在筋が重要で、特に足部内在筋の筋力低下や萎縮がMLAの低下に関与するとした報告がある。

    臨床で頻繁に行われるタオルギャザーエクササイズ(以下、TGE)は、一般的に股・膝関節90°屈曲位、足関節底背屈中間位で実施されるが、MLA形成への影響は一定の見解がない。この肢位は、MLA形成に重要な足部内在筋が使用しにくい肢位と考えられる。

    本研究は、TGE実施肢位の違いが即時的にMLAに対して影響を及ぼすか検証することを目的とした。

    【対象】

    過去6ヶ月以内に下肢関節に整形外科疾患の既往のない、健常成人10名(男性6名、女性4名、年齢は24.6±2.5歳、身長168±8.6㎝、体重57±5.0㎏)で利き足を対象とした。

    【方法】

    TGEは先行研究で用いられている股関節・膝関節屈曲90°、足関節底背屈中間位で行う通常TGEと膝関節伸展位・足関節最大底屈位で行う変法TGEの2条件とした。足趾運動の回数は200回とし、重錘500gをタオルの端に設置し実施した。また、変法TGEはDIPを屈曲しないように指示した。同一被検者に2条件を、1週間以上開けて実施した。

    測定項目は舟状骨高と足長とし、介入前後で測定した。測定肢位は、先行研究で高い信頼性を得ている端座位で体重計上に体重の20%を足部に負荷した状態とした。各測定は同一検者が実施した。

    解析は、Dr.SPSS Ⅱ for windows 11.0.1 Jを用いて行い、2条件のTGE実施前後で比較し、検討項目は舟状骨高、足長、アーチ高率とし正規性を確認した後、t検定を用いて統計処理を行った。なお、統計学的有意水準は、危険率を5%未満とした。

    【結果】

    通常TGE実施前の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ4.7±0.9㎝、24.4±1.4㎝、19.1±3.0%で、TGE実施後の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ4.7±0.8㎝、24.3±1.4㎝、19.1±2.7%でTGE実施前後での有意差は認められなかった。

    一方、変法TGE実施前の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ、4.5±0.8㎝、24.4±1.5㎝、18.6±2.6㎝で、TGE実施後の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ4.9±0.8㎝、24.1±1.5㎝、19.9±2.4%でありTGE実施前後で全項目に有意差が認められた(p<0.05)。

    【考察】

    本研究の結果より、変法TGE実施後でMLAが有意に増加した。変法TGEの測定肢位は、膝関節伸展位・足関節最大底屈位である。この時足部外在筋の起始・停止が近づき、筋は弛緩する。さらに、足部外在筋の長母趾屈筋や長趾屈筋を使用しDIP屈曲を行わないように指示した結果、より足部内在筋を使用しやすい条件になったと推察された。この2点が通常TGEと異なり、変法TGEはMLAに影響を及ぼすことが示唆された。

    また、橋本らの先行研究によるとフィンガースプリントを使用し、足趾運動200回を週3回、合計8週間実施した場合、立位におけるMLAの形成を認めたと報告している。今回は、臨床で簡易的に用いられるタオルを使用し、運動前後での即時的な効果を検証し、結果的に即時的な運動療法の効果として有効であることが示唆された。

    本研究は体重の20%を負荷した状態でアウトカムを測定したが、非荷重下での足長、舟状骨高の測定が出来ていない為、MLAが上昇したのかまたは、荷重時のMLA保持が可能となったのかを断定することが出来ない。今後は、非荷重下でMLAを測定し再度検証することが必要と考えられる。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院の倫理委員会の承認を得て、被検者に十分な説明を行い同意が得られた後に実施した。

  • 榎本 拓也
    p. 11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    上肢機能障害に対するリハビリテーションについて脳卒中ガイドライン2015では「麻痺が軽度の患者に対しては、適応を選べば、非麻痺側上肢を抑制し、生活の中で麻痺側上肢を強制使用させる治療法が強く勧められる。」と言われている。麻痺側運動機能は比較的軽度にも関わらず、非麻痺側上肢優位にてADL・IADLを遂行している症例に対しCI療法を行い目標達成に至ったケースを報告する。

    【対象】

    右被殻出血を発症した60歳代女性。急性期病院にて27日間入院加療の後、当院回復期病棟へ転院となった。麻痺側運動機能は、Br.stage/grade上肢Ⅳ/8、手指Ⅴ/11、FMA40点、STEF66点、MAL使用頻度2.0点、動作の質1.4点、FIM117点と入浴を除く病棟セルフケアは自立していたが、ADL遂行上は非麻痺側上肢のみを使用する状態であった。本人からは「左手はまだ使えん」とのコメントが聞かれていた。

    【方法】

    通常のOT訓練80分間を14日間実施した場合と通常のOT訓練に加えCI療法を加えた14日間を実施した場合での上肢機能訓練結果を比較した。一般的なCI療法では、1日5時間×10日間の実施が推奨されているが、1日3時間のmodified constraint-induced movement therapy (mCI療法)においても上肢機能の改善が報告されており、今回は短時間バーションである1日3時間×14日間にて行った。CI療法の内容は、1日午前・午後各90分ずつ実施し、非麻痺側は固定し使用できない状態にて行った。具体的には、Shaping課題の中から、粗大動作(腰に手をまわす、麻痺側上肢に荷重をかける)、巧緻動作(リズミカルに電卓を打つ、紙を握る、クリップをつまむ)、両手動作(紐を結ぶ、紙で箱を包む、タオルを絞る)など各項目から12~13題を選択し行った。一方で、通常訓練では、40分×2回、調理訓練や掃除動作の確認などの動作訓練を実施した。動作訓練時には積極的に麻痺側上肢を使用する促しを行った。評価項目は、CI療法導入前後のFIM、Br.stage、grade、Fugl-meyer-assesment(FMA)、STEF、Motor-Activity-Log(MAL)を比較した。

    【結果】

    通常訓練時、FIM117点、Br.stage/grade上肢Ⅳ/8、手指Ⅴ/11、FMA43点(7.5%)、STEF68点(2.9%)、MAL使用頻度2.4点(20%)、動作の質1.7点(21.4%)であった。調理訓練では、非麻痺側上肢にて固定を行わずに切る、歯磨きでは歯ブラシを置いて歯磨き粉をつけるなど非麻痺側上肢での固定や把持など補助手としての使用は行えていなかった。CI療法実施後には、FIM117点、Br.stage/grade上肢Ⅴ/10、手指Ⅵ/11、FMA58点(37.5%)、STEF72点(6.1%)、MAL使用頻度3.7点(65%)、動作の質3.7点(142.6%)となった。調理訓練では、麻痺側上肢にて食材を把持し切る、皮を剥くなどの動作を行うなど、補助手として使用し、両手動作にてADL、IADLを行うことが可能となった。

    【考察】

    通常訓練と併せCI療法を実施した事により、通常の訓練場面においても麻痺側手を意識した行動を行うことができた。本事例は、回復期病棟入院中であるため、上肢機能の回復段階にあるケースとも考えられるが、限られた提供単位数の中で効果的な上肢機能の改善が図ることができたと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者に症例報告について十分な説明を行い,同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

  • 道下 裕之, 遠藤 正英, 猪野 嘉一
    p. 12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    脳卒中片麻痺患者における麻痺側肩関節の亜脱臼は臨床上しばしば認められ,疼痛や拘縮が生じリハビリテーションを施行する上で阻害する要因となることが多い.これまで麻痺側肩関節の亜脱臼に対して様々な肩装具が報告されているが,亜脱臼の程度による肩装具の効果の違いを検討した報告は少ない.そこで同程度の体格で亜脱臼の程度が異なる2症例に対して,当院で亜脱臼を呈する脳卒中片麻痺患者に対して採用している肘関節屈曲型肩装具New Arm Suspender(以下NAS,アルケア株式会社製),肘関節伸展型肩装具Ring Shoulder Brace(以下RSB,有園義肢株式会社製),それぞれの装着時と非装着時の比較検討を行い一定の考察を得たので報告する.

    【対象・方法】

    対象は臨床上触診で1横指以上の麻痺側肩関節に亜脱臼が認められる回復期リハビリテーション病棟入院患者2名とした.症例1はBody Mass Index(以下BMI)25.1 kg/m?,Brunnstrom recovery stage(以下Brs)上肢Ⅲ,手指Ⅱ,症例2はBMI25.3 kg/m?,Brs上肢Ⅱ,手指Ⅱであった.対象において座位で非麻痺側肩関節,NAS装着時,RSB装着時,非装着時の各条件下での麻痺側肩関節のX線写真(AP方向)を上肢下垂位で撮影した.撮影方法はX線が肩甲上腕関節面にほぼ直角に入射するように,対象を約30°斜位にして15°~20°上方より斜入した.各X線写真において肩峰骨頭間距離(以下AHI)を3回測定し平均値を各AHIとして算出し,麻痺側AHIから非麻痺側AHIを引いた値を非麻痺側AHIで除した値をAHI比とした.また,非装着時のAHIから麻痺側のNAS装着時,RSB装着時のAHIそれぞれを引いた値を亜脱臼の整復量(以下整復量)として各条件下で比較した.

    【結果】

    症例1における非麻痺側AHIは16.0mm,麻痺側の非装着時AHIは24.4mm,AHI比は52.8%であり,NAS装着時のAHIは18.6mm,整復量5.8mm,RSB装着時のAHIは16.5mm,整復量7.9mmであった.症例2における非麻痺側AHIは10.6mm,麻痺側の非装着時AHIは27.6mm,AHI比は159.7%であり,NAS装着時のAHIは17.0mm,整復量10.7mm,RSB装着時のAHIは22.9mm,整復量4.7mmであった.

    【考察】

    遠藤らは亜脱臼を呈する脳卒中片麻痺患者における三角巾装着時,RSB装着時,非装着時の比較を行い,非装着時とRSB装着時には有意な差が認められ,三角巾装着時とRSB装着時には有意な差が認められなかったと報告している.症例1において三角巾と類似した整復を行うNASとRSBの装着時における整復量は大きな違いがなく,先行研究と同様の結果が得られRSBは肘関節屈曲型肩装具と同等程度の整復力を有していることが考えられた.また症例2は症例1と比較してAHI比が大きく,亜脱臼の程度が大きかった.そのため症例2は肩関節周囲筋の整復力低下を補完するため,症例1より大きな整復力が必要であると考える.古田らによると,肘関節屈曲型肩装具はある程度の強固な支持力が得られるとしており,より大きな整復力が必要な症例2において,RSB装着時と比較して前腕全体から支持して整復を行うNAS装着時の方がより整復量が大きかったと考えられる.つまり,麻痺側肩関節に軽度の亜脱臼を呈する脳卒中片麻痺患者において肘関節伸展型肩装具は肘関節屈曲型肩装具と同等程度の整復力を有しているが,亜脱臼の程度が大きい患者に対しては肘関節屈曲型肩装具が整復力を示す可能性が示唆された.今後は症例数を増やして検討を行っていく必要があると考える.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は当院倫理審査委員会による承諾を得て実施した(審査番号2015012701).また,対象者には十分な説明を行い,同意を得た.

  • 中村 篤, 臼杵 扶佐子
    p. 13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    胎児性水俣病患者も還暦を迎え,身体機能およびADL能力の維持は現在重要な課題になっている.これまで,慢性期の胎児性水俣病患者に対し,振動刺激治療と促通反復療法(川平法)を取り入れたリハビリテーションを行い,足底痛,下肢痙縮,足背屈可動域,ADLが改善したことを報告してきた.今回さらに,筋力低下の予防や運動学習効果を期待して,コンピュータ制御で身体能力をアシストする機能をもつロボットスーツであるHAL(Hybrid Assistive Limb)を平行棒内歩行訓練に導入した.慢性期胎児性水俣病患者に対するHALの導入効果について報告する.

    【症例紹介】

    胎児性水俣病と診断された60代男性,脳性麻痺様の症状(運動障害,四肢痙縮,全身性のジストニア,構音障害,嚥下障害),右足底腱膜緊張による疼痛が認められ,頚椎症,右手首の外傷性正中神経障害を合併している.2008年より開始した振動刺激治療および促通反復療法(川平法)により,下肢の筋緊張低下,右足底の疼痛減少がみられた.さらに,運動の柔軟性が向上するとともに足関節背屈の可動域制限も改善され,両足底の十分な接地が可能となり,ADLはFIMで61点から66点へ改善した.立位,移乗動作も要介助から監視レベルとなった.

    【方法】

    週2日,振動刺激治療,促通反復療法(川平法)の後,HAL装着による歩行訓練を5mごとに休憩しながら1~1.5往復(10~15m)実施.HAL導入前と3ヵ月後に,平行棒内5m自由歩行における所要時間,歩行速度およびPCI(Physical Cost Index)評価を実施した.

    【結果】

    HAL導入早期から,訓練後HALを外した直後の車椅子からの立ち上がり動作やトイレ動作の改善が観察された.また,症例からも「HALを使っての訓練で力がでてきた」との声が聞かれた.HAL導入3ヵ月後の平行棒内での5m自由歩行では,所要時間が5分42秒から2分57秒と顕著に減少した.さらに,エネルギー効率の評価指標であるPCIが11.3beats/mから4.7beats/mへと減少し,分速が導入前0.88m/minから1.69m/minへと増加した.はさみ足や足の振り出しもHAL導入前と比べ改善した.

    【考察】

    今回の対象事例は,振動刺激治療と促通反復療法(川平法)を継続的に実施した結果,足底痛や痙縮の改善,足背屈可動域の改善がみられ,平行棒内歩行訓練を開始することができた慢性期の胎児性水俣病患者である.車椅子による筋力低下の予防,HALによる運動学習効果を期待してHALを導入したが,HALの持つ身体能力をアシストし運動学習を促す機能は,患者の歩行能力を活かした歩行訓練(10m~15m)に効果的であった.週1~2回,3ヶ月の訓練の結果,歩行時間およびPCIは顕著に減少した.訓練後HALを外した直後の立ち上がり動作の改善もHAL導入早期より認められた.HAL装着による反復訓練の学習効果によって,歩容,足の振り出し,立ち上がり動作の改善がもたらされ,エネルギー効率の改善に影響したと推察される.

    今回の結果から,慢性期の胎児性水俣病患者でも,HALの導入により歩行能力の改善,ADL能力の維持・向上が見込まれることがわかった.症例は歩行の再獲得に意欲が高く,熱心にリハビリを続けているが,HALの導入は,そのニーズを満たしモチベーションをあげることにも有用であったと思われる.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    今回の報告については,対象事例に書面および口頭説明によるインフォームドコンセントを行い,承諾書への署名を得た.また,医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,株式,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない.

  • 板井 幸太, 内山 大也, 小田部 道代, 尾畑 十善, 木村 聡, 米良 英和
    p. 14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    Parkinson病(PD)に伴う首下がりは、定義や原因が明確でなく報告や臨床所見も様々である。当院でも、首下がりに対するリハビリテーション(RH)として腹臥位療法に電気療法・BTX等の併用療法の有用性について報告してきたが、効果が一定せず介入方法に難渋するケースが多い。今回、Wall occipit-test(WOT)に加え表面筋電図(EEG)を用いた評価を実施し、その特徴とそれに応じたアプローチ方法の検討にて効果が得られた為、以下に報告する。

    【対象】

    H23~H27年に当院でRH実施した患者のうちWOT陽性で且つHoern-Yarh分類Ⅲ~Ⅳの3名を対象とし、EEGは入院時と退院時の計2回施行した。

    【方法】

    各期間中のRHは、週6日の介入で2週間(計24回午前・午後で各1回)とした。使用器具はNIHON-KOHDEN社EEG-1714を用い、座位と背臥位にて胸鎖乳突筋(SCM),頭板状筋(SC),僧帽筋上部線維(TzU)を測定した。

    【結果】

    Ⅰ.EEG:初期(Rt./Lt.)⇒最終(Rt./Lt.) ※最大振幅を記載 単位:mv

    〈座位〉

    ⅰ)症例A:SCM (0.1/0.1),SC (0.8/1.3),TzU(0.4/0.3)⇒SCM (0.1/0.3),SC (0.3/0.3),TzU(0.2/0.1)

    ⅱ)症例B:SCM (0.1/0.1),SC (1.0/0.7),TzU(1.1/1.2)⇒SCM (0.1/0.1),SC (0.6/0.2),TzU(0.1/0.3)

    ⅲ)症例C:SCM (0.1/0.1),SC (0.4/1.2),TzU(0.2/0.5)⇒SCM (0.1/0.1),SC (0.2/1.1),TzU(0.1/0.3)

    〈背臥位〉

    ⅰ)症例A:SCM (0.1/0.1),SC (0.6/1.7),TzU(0.5/0.3)⇒SCM (0.2/0.1),SC (0.4/0.2),TzU(0.2/0.2)

    ⅱ)症例B:SCM (0.1/0.1),SC (0.4/0.3),TzU(0.8/0.6)⇒SCM (0.1/0.1),SC (0.8/0.3),TzU(0.2/0.3)

    ⅲ)症例C:SCM (0.3/0.5),SC (0.1/0.2),TzU(0.1/0.3)⇒SCM (0.7/1.0),SC (0.2/0.4),TzU(0.2/0.2)

    Ⅱ.WOT評価:(初期→中間→最終) ※耳孔~肩峰間距離を記載 単位:cm

    ⅰ)症例A:(10.1→6.1→4.5),症例B:(16.7→7.9→4.9),症例C:(21.5→13.2→15.1)

    【考察】

    首下がりにおけるEEGの先行研究では、安静座位で後頸筋群の強い筋放電を認めるが前頸筋群ではほぼ認めず臥位では弛緩すべきSCMの筋放電はさかんになる1)と多数報告されており、当院でも安静座位では3例とも同様の結果を示した。しかし、背臥位では1例は報告通りのSCMの筋放電があった(I群)が、2例はSCMよりもSC,TzUの強い筋放電を認め(Ⅱ群)、一見同様の症状であっても異なる筋放電が生じている事が分かった。その為、腹臥位療法実施後にⅠ群には背臥位での前頸筋群、Ⅱ群には腹臥位での後頸筋群の促通訓練を実施した。その結果、3例ともWOT,EEGでは最大振幅の軽減や数値の改善を認めたが、Ⅰ群で僅かではあるがWOTでの増大を認めた。この要因として、PDに伴う姿勢障害が前頸筋群の短縮と後頸筋群の伸長といった筋のアンバランスをもたらし2)、それが長期化した事で頚椎変形や拘縮といった骨性変化が生じているのではないかと考えた。しかし、今回の介入ではX線評価は実施しておらず、その評価方法の考案も課題として残存している。より客観的な評価とRH効果を図る為、継続した検証を実施していきたい。

    【展望】

    PDは進行性疾患であり、今回のような骨性変化が疑われる症例であっても前・後頸筋群等のターゲットを絞った促通訓練が持続効果を得る一助となる事が考えられた。しかし、症例数が少なく統計学的処理が行えていない為、症例数を増やし有意差の検証など一定の成績が得られるようエビデンスの確立に繋げていきたい。

    【参考文献】

    1) 伊澤 奈々:Neurological Medicine VOL81 No.1 特集Ⅰ神経内科 Parkinson病の首下がり症候群における筋電図所見

    2)目崎 高広:Neurological Medicine VOL81 No.1 特集Ⅰ神経内科 1-8,2014 首下がり症候群の病態生理

    【倫理的配慮,説明と同意】

    「研究に際し、対象者と家族に十分な説明を行い同意を得た。また医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金等のサービスは一切受けておらず、利益相反に関する開示項目はない。」

  • 大久保 杏奈
    p. 15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

     当院では脳卒中後の上肢痙性麻痺に対し、A型ボツリヌス毒素(以下BTX-A)投与を行っており、その後に外来リハビリを中心に集中的な上肢機能訓練を実施している。過去に、初回投与後の上肢機能改善により、更衣遂行時間が短縮したこと、複数回投与により難易度の高い上肢使用が可能になったことを報告した。今回、長期にわたり3回以上の投与を行っている症例の治療効果について検討したので報告する。

    【対象と方法】

     対象は2012年10月から2016年3月までにBTX-A投与を3回以上実施した当院外来患者7名(男性5名、女性2名、平均年齢67.1±28.1歳、発症から投与までの平均羅患期間6年6か月±10か月)で、投与回数は7回が1名、5回が3名、4回が1名、3回が2名であった。上肢機能評価としてBTX-A投与前、1週間後、1ヶ月後、4ヶ月後にBrunnstromstage(以下BRS)、ModifiedAshworthScale(以下MAS)、関節可動域(以下ROM)、StrokeImpairmentAssessmentSet(以下SIAS)、WolfMotorFunctionTest(以下WMFT)、FunctionalAbilityScale(以下FAS)、10m歩行、口頭によるADL状況確認を実施し、比較検討した。投与と併せて、外来個別リハビリ、および自主訓練を全期間で継続した。

    【結果】

     全症例で、2回目投与以降のMAS・ROM・WMFT・FASの評価のいずれかに改善が見られた。7名中6名に、初回から直近の投与までの期間でWMFTの向上がみられた。具体例として症例1では、3回目投与後に肩関節屈曲が最大100°拡大し強い痛みが消失した。症例2では、2回目投与後から対立つまみでのピンチ力向上に伴い袖通しが自立し、3回目投与後にチャックやボタンかけが可能となった。また、連合反応としての麻痺側上肢の屈曲が外見上のコンプレックスとして悩んでいた症例3.4(女性2名)は、3回目投与後から連合反応が消失し、麻痺側上肢を体側に維持できることで悩みが解決した。加えて、麻痺側下肢の振り出しを阻害しなくなったことで「歩くときに腕が伸びやすくなって歩きやすい。」と効果を認識できた。全ての症例で、痛み・固さ・使用しづらさ等の主観的な訴えに基づいた継続投与となっており、投与間隔は6名で延長し、最大1年5か月の間隔を得られたケースもあった。

    【考察】

    複数回投与後に上肢機能の改善が図れた要因として、対象者の痛みや使用しづらさなどの主観的な訴えに対応し、次回の投与を行うため、不使用期間を作らず、ADL上での使用を維持できたからだと考える。使用しづらさの出現なく経過している場合も、生活動作に近いWMFTのより難しい評価項目を成功したいという意欲に伴う投与となり、機能低下を起こさないままに継続できたからだと考える。このように、ADL上での機能低下を伴う不使用期間がなく、生活上での使用を継続できたことが、投与期間の延長に繋がったと思われる。また、セラピストの主観ではあるが、評価を継続する中で、麻痺側上肢の使用が維持されている時、効果が著しいのは3回目投与後だと感じている。

    【まとめ】

     BTX-Aの効果を最大限に発揮するためには、対象者の意欲を引き出し、不使用期間を作らせない作業療法・自主訓練の提供・マネジメント的な立場での関わりが重要だと感じている。現在、最長のBTX-A投与継続者は3年半であるが、今後も長期に渡って経過を追っていきたいと考えている。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    尚、本研究の実施にあたり「ヘルシンキ宣言」に沿って、全ての対象者に趣旨及び目的について説明し、同意を得ている。

  • 花山 友隆
    p. 16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    近年,地域包括ケアシステムの整備や生活行為向上マネージメントなどにより,活動や参加に対して支援することが推奨されている.当院では急性期より作業に焦点を当てた介入を実践している.地域社会で生活を再開した後も,作業へ参加し,挑戦している事例を紹介し,考察を加え,急性期に求められる作業療法のスキルを再考する.

    【事例紹介】

    Aさん70歳台の男性.妻と2人暮らし.趣味は写真を撮ること,読書など.コーラスのサークルに所属しており,友人も多く他者との交流が好き.会社を退職後は,妻の習い事の写真撮影や送迎,買い物など,自宅では読書やTVを見て過ごされていた.

    【作業療法評価】

    脳梗塞を発症し,重度の右片麻痺.夜間の睡眠不足で傾眠傾向,悲観的な発言もあり,今後の生活などに関しては具体的に考えられていなかった.FIM:65点.院内生活上でAさんが行うセルフケアや読書などを経験して頂き,Aさんより「一人でトイレに行きたい」と獲得したい作業が挙った.この作業の観察では,姿勢をまっすぐに保つことや立つことが難しく,靴の着脱や移乗,下衣の操作に介助を要する.屈むことや力の調節が難しく,動作に勢いがつき,制動時にふらつきを助長する.まだ動作に対する経験も少なく,自身の能力を把握できていない.などの問題が抽出された.

    【介入方針・経過】

    作業療法介入プロセスモデル(OTIPM),日常作業遂行に対する認知オリエンテーション(CO-OP)の概念を考慮し,Aさん主体で参加型の介入を心がけた.また介入はできるだけAさんの希望する作業を用いて実施した.介入をしながら退院後の作業についても,その都度検討していくこととした.靴を履く,車いすのフットプレートに足を乗せる,下衣の上げ下げなど,できることが増えると,日々の生活をAさん自身で振り返り「着替えができるようになりたい」「ズボンを履く時に靴を履く要領ですればできた」「足を洗う時も一緒」など,他の場面でもAさん自身で問題解決を行えるようになった.また生活がしやすいように工夫をするようになった.

    【結果】

    重度の運動障害は残存しているが,靴を履く,洋服を着替える,一人でトイレに行くことが可能となり,院内生活でも読書をしたり,他者と交流をしたりすることを多く見受けるようになった.FIM:102点.その後,回復期リハビリテーション病棟を経て退院.現在は家族とお花見に出かけたり,写真を撮ったり,近くのスーパーに一人で買い物に行っている.一人でコーラスのサークルに参加することを目標としTAXIや公共交通機関を使用した外出の練習を行っている.

    【考察・まとめ】

    世界作業療法士連盟は,作業療法の定義の中で「クライエントは作業療法過程に積極的に関与し,作業療法の成果は多様かつクライエント主導であり,参加の観点,あるいは参加がもたらす満足という観点から判断される」と明記している.今回,目標を決めるために,作業を経験することから始め,Aさん自身が目標とする作業を決め,計画し,実行して,上手くできたかどうかを確認することを支援した.その過程を他の場面にも応用し,Aさん自身で問題解決が図れるようになった.これらをきっかけに,現在も新たな作業に挑戦されている.急性期は,対象者が作業療法と初めて出会う場でもある.対象者が個々の大切な作業に携われるように作業療法に参加をする.この認識を基盤とすることで活動と参加への架け橋となることができる.これらが,社会から求められる急性期の作業療法のスキルであると考えられる.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    なお,今回の報告に関しては対象者に十分な説明を行い,同意を得ている.

  • 福井 綾, 山下 寛樹
    p. 17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    今回,脳梗塞(左放線冠)発症後に摂食嚥下障害を呈した症例を担当する機会を得た.東嶋ら1)は脳卒中や脳外傷,変性疾患における嚥下障害患者において,健常者と変わらずに常食を摂取できるか否かには静的および動的端座位保持能力が影響をおよぼす因子のひとつであると報告している.摂食機能と座位保持能力および家族との関わりに着目し,自宅退院に向け介入した経過を報告する.

    【症例紹介・評価】

    症例は70歳代男性で,4年前の化膿性脊椎炎術後より,基本動作・ADLは全介助レベルとなっていたが,常食を介助にて摂取できるレベルであった.妻の介助・サービス利用を受け終日自宅のみで生活を送っていた.入院時は,VE・VFにより感覚低下・早期咽頭流入・嚥下反射遅延による嚥下障害を認めており,経鼻経管栄養となっていた.また,JCS2桁で覚醒状態にもムラがあり,安定した状態での座位保持時間が短く,Hoffer座位能力分類(JSSC版)では座位能力3レベルであった.覚醒状態が良ければ短文でのコミュニケーションは可能であった.今回の入院から退院まで,FIMが18点,BIが0点で点数変化はみられなかった.介護者である妻は70歳代で,主婦業全般と夫の介護が役割となっていた.面会に毎日来ており,今後は介助で食事摂取ができれば自宅で介護をしたいという希望があった.

    【問題点・目標設定】

    まず,経口摂取が困難となっていたことにより自宅復帰が困難となっていたことを問題点として挙げた.次に,自宅退院後は妻の介護が必要となるが,症例の現状を妻が受容できず,退院に向けて今まで以上に食事に関する介助が必要となることを実感できていないことを挙げた.最終目標は,妻より介助を受けながら安全に経口摂取が可能となりサービスを併用しながら自宅生活を送ること,短期目標は座位保持能力の向上,基本動作・ADLの介助量軽減,妻が安全な介助方法を習得することを挙げた.

    【経過】

    入院当初は座位保持訓練・直接嚥下訓練を中心に介入し,座位保持・覚醒状態の変化に伴い食事形態・介助方法の検討を行った.入院中期より,基本動作時の協力動作が増加し妻との会話の中にも,自発語や笑顔が増え良い変化がみられた.座位保持時間が延長しHoffer座位能力分類(JSSC版)では座位能力2レベルと改善が得られた.また,妻自ら意欲的に介助場面に参加する機会が増えたことで妻の心理面にも変化が生まれ,退院後の不安要素に関する話題が増えた.入院後期では,週に4回・60分程度は車いすで離床する機会をつくり,妻へ介助方法の指導を行った.その結果,妻の介助により安全に摂食が可能となり自宅退院となった.

    【考察】

    評価結果と妻の現状の受容において相違があり,退院後も病前同様に常食を摂取する可能性があった. 小林らは2)補助栄養を必要とせず経口のみで必要な栄養・水分を摂取可能となるには端座位保持能力に関連性があると考えられると報告している.安全に摂食できるように,座位保持能力に着目して介入を行い,改善の有無を検討した.座位保持能力の向上は摂食機能の改善に良い影響を与えるのではないかと考える.また,機能訓練と並行して妻へ症例の小さな変化について面会時にフィードバックを行い,現状の受容を促したことも,自宅退院が可能となった要因のひとつであったと考える.

    【参考文献】

    1)東嶋美佐子・他:摂食・嚥下の自立に影響する因子の検討.作業療法17(3):212-218.1998.

    2)小林健太郎・他:慢性期脳卒中患者における嚥下障害の帰結に影響する因子の検討(第1報).臨床リハVol.16(7):660.2007

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は,対象者に十分に説明を行いヘルシンキ宣言に基づき実施した.

  • 大竹 英次, 中原 寿志, 田上 茂雄, 柚木 直也
    p. 18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    脳卒中後肩関節疼痛(Post stroke shoulder pain:以下PSSP)は多くの症例で認められる重要な合併症の一つで,麻痺側機能回復の遅延につながるだけでなく,日常生活動作や機能訓練における阻害因子となる.臨床では,疼痛管理を目的とした経皮的電気刺激療法(Transcutaneous electrical nerve stimulation:以下TENS)が安全で簡便な鎮痛方法として使用されている.疼痛緩和のメカニズムはゲートコントロール理論(Gate control theory:以下GCT)とTENSにより内因性オピオイド放出による影響が報告されている.濱出によると肩,手関節の疼痛に対しTENSと関節可動域訓練(Range of motion exercise:以下ROM-ex)の同時治療にて疼痛が軽減したと報告しており,TENSと十分なROM-exは,有効な併用治療となり得ると考える.今回,PSSPにより関節可動域(Range of motion:以下ROM)の制限を認めた症例に対し,TENSとROM-exの併用治療の効果を検証した.

    【方法】

    対象は70歳代女性,右利き,脳梗塞により右片麻痺を呈した症例.発症後25日時点での上肢機能評価としてBrunnstrom Recovery Stage上肢Ⅱ,手指Ⅱで随意的な運動は困難な状態.Fugl-Meyer Asessmentの上肢項目6点.肩関節に100mm Visual Analog Scale(以下100mmVAS)にて73mmの疼痛を認め,関節可動域テスト(Range of motion test:以下ROM-T)は85°と制限を認めた.介入方法としてはTENS非介入2週間(非介入期),TENS介入2週間(介入期)とし比較を行う.介入期では低周波治療器ESPURGE(伊藤超短波製)を使用し,周波数1~250Hzの変調モード、パルス幅100?s、電極貼付位置をC5/6/7/8/Th1のデルマトーム上に設置し,訓練前に20分間TENSを実施し,訓練前後に100mmVAS,ROM-Tを行った.統計学的解析は非介入期と介入期の前後での比較を対応のあるt検定を用い,統計解析はRcommander を使用.有意水準は5%未満とした.

    【結果】

    100mmVAS(訓練前→訓練後)では非介入期:43.0±20.59mm→40.4±17.81mmと有意差は見られなかった.介入期:49.66±19.31mm→13.44±4.53mm(p<0.05)と有意差が見られた.ROM-T(訓練前→訓練後)では,非介入期:87.0±2.22°→91.5±2.42°(p<0.05)介入期:93.3±5.6°→112.8±6.67°(p<0.05)であった.

    【考察】

    今回PSSPに対してTENSを実施し,介入期に疼痛緩和が図られた.徳田らは設定周波数を1~250Hzと変調したTENSを実施することで,周波数に依存して異なる多種の内因性オピオイドが放出されると報告している.本症例においても,これらのメカニズムが関与し,疼痛緩和が図られたと推測できる.また, ROM-Tにおいても介入期に大幅な改善を認める結果となった.ROM-exは,ROMの維持,改善を目的とした運動療法であり,関節運動が髄液や滑膜,関節軟骨に影響を及ぼし,ROM改善に関与すると言われている.そこでTENSにて疼痛緩和を図り、可動域を確保した中で,ROM-exを行えたことが,ROM改善に影響したと考えられる.よってTENS単独介入もしくはROM-ex単独介入を実施するだけでなく,TENSとROM-exの併用した介入を行うことで相乗効果が図られ,脳卒中後の麻痺,疼痛を呈した症例における介入方法として有効ではないかと考察する.

    【まとめ】

    PSSPに対し、ROM拡大を目的としたTENSとROM-exの併用療法を試みた.TENSによる介入期では疼痛,ROMに大幅な改善が見られる結果となり,PSSPに対する作業療法に積極的に導入することで,より安全に効果のあるリハビリテーションを提供していく一助となりうると考える.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、対象者に十分な説明を行い、同意が得られたのちに評価および介入を行った.利益相反に関する開示事項はなし。

  • 脇坂 成重, 遠藤 正英, 猪野 嘉一
    p. 19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    視床は大脳皮質と多くの神経線維連絡をしている為,視床出血を生じると多彩な症状を呈する.また視床出血は少量の出血でも予後不良となる場合がある為,機能予後を検討する上で血腫量のみならず,出血の進展方向や血腫の存在部位を考慮する必要がある.本研究の目的は,出血の進展方向と血腫の存在部位が歩行予後に及ぼす影響を検討することとした.

    【方法】

    対象は平成27年4月~28年4月に当院回復期病棟に入棟し,再発患者及び発症前ADLが自立していない者を除外した視床出血患者18名(平均年齢67.6±14歳,男性11名,女性7名)とした.対象の一般情報(年齢,性別,発症~当院入院までの日数,在院日数),退院時のFIM,Mini-Mental State Examination (以下MMSE),下肢Brunnstrom stage(以下Br.stage)をカルテより後方視的に調査した.またCT情報(血腫量,脳梁体部レベルでの放線冠の損傷の有無,松果体レベルでの内包後脚の損傷の有無)を発症日のCT画像を基に調査,視床内における血腫の存在部位をKreigの視床地図を基に,①視床前端から血腫前端までの距離と松果体中央から血腫内側端までの距離を測定,②視床前端~出血部位前端・視床前端~出血部位後端までの距離を求め,視床前後径で除した値を百分率で算出,同様に横径も百分率を算出した.退院時FIM移動能力が6・7点を歩行自立群(FIM),1~5点を非自立群とし,各項目を2群間で比較検証した.統計学的解析は各項目をt-testとMann-Whitney’s U test,2群間での放線冠と内包後脚の損傷の有無をFisherの正確確率検定で,各項目間の関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検証した.有意水準はいずれも5%未満で処理した.

    【結果】

    2群の内訳は,歩行自立群11名と非自立群が7名で,年齢,性別,発症からの日数に有意差は認めなかった.血腫量は自立群10.6±7.9ml,非自立群24.1±8.5ml(p<0.05),松果体中央から血腫内側縁までの距離が自立群0.9±0.5mm,非自立群0.3±0.2mm(p<0.05),放線冠の損傷が非自立群6例に対し自立群3例であり,放線冠損傷の有無と自立・非自立の間に有意な相関が認められた(p<0.05).

    【考察】

    先行研究において視床出血後の予後は血腫量が機能予後に影響を及ぼすとの報告が多い.しかし,視床出血では少量の出血でも予後不良となるケースがあり,出血の進展方向及び視床内血腫の存在部位が機能予後に影響を及ぼすと考える.本研究結果において,出血の進展方向で放線冠損傷の有無と自立・非自立の間に有意な相関が認められた.北井らは,視床より上位に出血が進展した放線冠の障害が下肢に強い麻痺を出現させたと報告しており,血腫の上方進展による側脳室レベルでの放線冠の損傷が歩行予後不良の一要因になっていると考える.血腫の存在部位において,歩行自立・非自立群間にて松果体中央から血腫内側縁までの距離で有意差を認め,MMSE及び認知FIMと松果体中央から内側血腫縁までの距離においても相関関係を認めたことから,松果体レベルでの視床内側部への出血が歩行予後不良となる傾向が得られた.視床内側部は前視床放線を介して前頭連合野との線維連絡により認知機能を司っており,視床内側核の損傷により認知機能の低下を生じ,運動学習や遂行機能の低下によって歩行予後に影響を及ぼしていると考える.視床出血の機能予後は,血腫の大きさや出血の進展方向を考慮することに加え,視床における血腫の存在部位を考慮することで,より正確な予後予測に繋がると考える.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はヘルシンキ宣言に沿って行い,収集した情報は個人情報が特定できないよう十分な配慮をした.

  • 玉利 誠, 宇都宮 英綱, 永良 裕也
    p. 20
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

     パーキンソン病(以下PD)は黒質のドパミン細胞の変性を責任病理とする多系統変性疾患であるが,これまでその病勢をMRIで評価することは困難であった.そのため,PD患者のリハビリテーションでは運動障害の重症度に応じたプログラムの設定が推奨される一方,黒質の変性程度と運動障害の重症度との関連やリハビリテーション効果との関連について検証することは困難であった.しかし近年,ドパミン細胞に含まれる神経メラニンをMRIにて描出する手法(神経メラニン画像,以下NMI)が確立されたことから,NMIを用いて黒質の変性程度を非侵襲的かつ簡便に定量化することができれば,より効果的なPD患者のリハビリテーションプログラムの構築に寄与するものと考える.そこで今回,NMIを用いて黒質の信号強度を半自動的に定量する解析プログラムを開発し,PD患者と健常人の比較を行った.

    【対象と方法】

     対象は,PD患者29例(男性11例,女性18例,年齢65.9±7.9歳)(以下,患者群)と健常人26例(男性11例,女性15例,年齢68.0±11.6歳)(以下,対照群)とした.患者群のHoehn & Yahr stageは,stageⅠ:6例,stageⅡ:1例,stageⅢ:15例,stageⅣ:7例,stageⅤ:0例であった.NMIの撮像にはPHLIPS社製Achieva 3Tを用い,撮像条件はFast Field Echo,matrix size:320×242,FOV:200×200mm,Slice厚:1mm,TR:27ms,TE:5.7msとした.解析にはMATLAB(Math Works社製)にて開発した解析プログラムを用い,NMIを平滑化した後,黒質(背外側部,中央部,腹内側部)と中脳被蓋の信号強度を定量し,黒質の各部位と中脳被蓋の信号強度比を算出した.統計学的処理にはR commanderを用い,各群の黒質の各部位と中脳被蓋の信号強度比について,一元配置分散分析(Post hoc: Tukey法)とKruskal-Wallis検定(Post hoc: Steel-Dwass法)を併用して比較した.また,患者群と対照群の信号強度比について,Mann-Whitney U検定とt検定を併用して比較した.

    【結果】

     患者群の黒質の各部位と中脳被蓋の信号強度比は,背外側部:1.01±0.02,中央部:1.07±0.03,腹内側部:1.08±0.03であり,背外側部と中央部(p<0.001),背外側部と腹内側部(p<0.001)の間に有意差が認められた.同様に,対照群は背外側部:1.05±0.03,中央部:1.10±0.02,腹内側部:1.12±0.03であり,背外側部と中央部(p<0.001),背外側部と腹内側部(p<0.001)の間に有意差が認められた.また,両群の信号強度比を比較した結果,背外側部(p<0.001),中央部(p<0.001),腹内側部(p<0.001)のすべてにおいて,患者群が有意に低値を示した.

    【考察】

     剖検脳を用いた神経病理学的研究において,黒質の背外側部は腹内側部と比較してメラニン含有量が少ないことや,PDでは黒質の変性が外側に始まり,次いで正中に向かって進展することが知られている.本研究においても,背外側部の信号強度比がその他の部位よりも有意に低値を示し,また,PD群の黒質各部位の信号強度比が対照群よりも有意に低値を示したことから,本研究の結果は病理学的知見とよく一致しており,PDの黒質の変性を反映したものであると考えられる.これらのことから,NMIと本研究で開発した解析プログラムを用いて非侵襲的かつ簡便に黒質の病勢評価が可能であることが示唆され,今後,運動障害の重症度との関連などについて調査することにより,より効果的なリハビリテーションプログラムの構築に寄与すると思われる.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はF病院の倫理審査委員会の承認(FS-95)を受け,対象者の同意のもとに各種データを連結不可能匿名化して行った.

  • 野中 信宏, 田崎 和幸, 山田 玄太, 坂本 竜弥, 油井 栄樹, 林 寛敏, 宮崎 洋一, 貝田 英二
    p. 21
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    運動機能再建術には術後の機能転換の問題があるため,一般的に損失した筋機能の共動筋を用いて再建される.しかしながら,今回は,共動筋ではない筋を用いて再建することになった症例の筋再教育訓練を経験したので,短期成績と術後2年の結果を報告する.

    【症例】

    症例は本報告に同意を得た60歳代の男性で右利き,職業は大工である.約2年前に左橈骨骨幹部骨折にて骨接合術を受けた.その約1年後に左母指伸展不能に気付いたが仕事上の都合で放置していた.その約1年後に左母指伸展不能を主訴とし,当院受診し,左長母指伸筋腱(以下EPL)皮下断裂の診断にて再建手術を計画された.

    【再建手術とセラピィ経過】

    通常ドナーの第一選択であった固有示指伸筋腱(以下EIP)が欠損していたため第二選択の固有小指伸筋腱を用いて腱移行術を行った.しかし,術後2週時,腱縫合部を保護していたスプリントを勝手に外して就寝し,再断裂した.2日後,再断裂部を確認した後,長橈側手根伸筋腱(以下ECRL)を力源として腱移行術を行った.術後翌日から早期運動療法を開始し,運動時以外はスプリントによる外固定を行った.手指自動屈曲運動には手関節背屈筋のECRLも共動筋として働くため,強い手指自動屈曲運動も禁止させた.運動は関節拘縮予防に手関節背屈位で母指の単関節を軽く外転,屈曲方向へ他動運動した.また,腱縫合部周囲の癒着予防目的と母指の伸展方法を覚えさせるために手関節背屈しながら,わずかに動く程度の軽い母指自動伸展運動を行った.術後3週後から母指の自動伸展運動を何度も反復させた.また,示指から小指の自動屈曲時や手関節背屈動作時に共動する母指の伸展動作と分離するようにswitching訓練をすすめた.術後6週時にスプリントを除去したが,強いつまみ動作は控えるように指導した.術後8週で治療は終了し,術後10週で職場復帰した.

    【結果】

    術後8週時,母指TAMは健側比96%で,手関節,母指CM関節にも拘縮は認めなかった.術後2年時においても良好な関節可動域を維持しており,握力は健側比80%であった.手関節背屈動作を伴わずとも母指自動伸展可能であり,逆に母指を伸展させずとも手関節背屈が可能であり,分離して母指を使いこなせていた.そのため,手関節背屈しながらでも力強いつまみ動作が可能で,釘を把持しての橈屈動作も行うことができ,大工動作に支障ないということであった.

    【考察】

    EIP の筋活動は母指伸展張力の増加に伴い漸増することが報告されており,母指伸展機能の再建術にEIPを用いることは筋再教育が容易で当然であるといえる.一方,ECRLを用いた報告もあるが,多くは筋伸縮距離の議論で,筋再教育に言及したものはほとんどない.ECRLを用いた臨床的な問題は,母指による特に強いつまみ動作の際に共動筋であるECRLが同時に収縮することにより,対立を保持したい母指が伸展力を持つことである.今回は,安全面ではその動作により腱縫合部の再断裂や縫合不全を発生させないこと,機能面では,母指の運動方法を認識させること,その上で,母指の運動を繰り返し,手関節自動伸展,手指自動屈曲の動作と分離するように訓練することが効果的であったと考えている.年齢や器用さなどと筋再教育との関係性は現在,不明であるが,結果ふまえ印象としては,運動再学習の過程として新しい動きを認識できるようになれば,反復訓練を含めたセラピィにより共動筋でなくとも機能転換できる可能性があると考えた.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究の実施ならびに報告について,対象に十分な説明を行い,同意を得た.なお,開示すべき利益相反関係にある企業等はありません.

  • 東島 直生, 古川 拓馬, 佐藤 健仁, 井手 衆哉, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    p. 22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

     当院では人工膝関節全置換術(TKA)術後2日目より、全荷重許可し歩行練習を行う。歩行状態に応じて歩行補助具を使用し、T字杖歩行自立獲得が目標の一つである。しかし、一定期間でのリハビリテーションにおいてのT字杖歩行自立の可否は患者により異なる。本研究の目的は、TKA術後患者をT字杖歩行自立の可否により分け比較すること、また、T字杖歩行自立に関する因子を検討することである。

    【対象と方法】

     2014年1月から2014年12月までに片側TKAを行い、評価可能であった59例59膝(男性5例、女性54例)。調査項目は、年齢、性別、BMI、術前日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準(JOA score)とした。測定項目は、術側・非術側の膝伸展筋力・股関節外転筋力、術前・術後膝関節屈曲・伸展可動域、歩行時の疼痛(Numerical Rating Scale)とし、理学療法介入終了時(17.8±2.8 日)に実施した。統計処理は、対象をT字杖歩行自立の可否により可能群44例、困難群15例の2群に分け、比較はカテゴリー変数にはχ2検定を、連続変数については、Shapiro-wilk検定を用いて変数の正規性を確認した後にMann-WhitneyのU検定、または対応の無いt検定を使用した。T字杖歩行自立の可否を従属変数、T字杖歩行自立可能群、不可能群の比較における有意確率が0.20未満の変数を独立変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。また、多重ロジスティック回帰分析で抽出された変数についてROC曲線を使用し、カットオフ値を算出した。有意水準は5%未満とした。

    【結果】

     調査項目のうち、年齢において有意差を認めた(p=0.005)。測定項目については、術側股関節外転筋力に有意差を認めた(p=0.028)。多重ロジスティック回帰分析の結果、年齢(p=0.022)、術側股関節外転筋力(p=0.025)が抽出された。ROC分析を行った結果、最も有効な統計学的カットオフ値は年齢78.5歳(感度0.884、特異度0.773、AUC0.742)であった。

    【考察】

     本研究結果から、TKA術後患者のT字杖歩行自立の可否により分けた2群の年齢、術側股関節外転筋力の2要因に有意差が認められた。可変的要因である術側股関節外転筋力について、股関節外転筋力は主に中殿筋、大殿筋、大腿筋膜張筋であり、歩行時の骨盤安定化、前額面における側方姿勢制御に関わる。股関節外転筋力が不十分なことで、前方への推進力低下、歩行効率の低下となり安定したT字杖使用しての歩行、また、自立困難となる原因と考えられる。不可変的因子である年齢については、これまでも術後機能に影響を及ぼす因子として報告されており同様の結果であった。今回、78.5歳という具体的カットオフが示せたことで、カットオフ値以上の患者の後療法についてはT字杖歩行自立が遅延する可能性を踏まえた理学療法プログラム立案、実施が重要であると考える。

    【まとめ】

     TKA術後患者のT字杖歩行自立の可否により分けた2群間では、年齢、術側股関節外転筋力に差があり後療法においては、それらを考慮した理学療法プログラム立案、実施が重要であることが示唆された。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者には、検査実施についての十分な説明を行い、研究参加の同意を得た。

  • 竹井 晃太, 小村 直人, 瀬戸口 悟, 幸良 光栄, 鶴田 大介, 問覚 やよい, 坂元 香織, 楊 昌樹
    p. 23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    腰椎椎間板ヘルニア(以下LDH)は男性が女性の2?3倍多く発症すると言われている。今回我々は、その発生メカニズムに大腰筋や腰椎アライメントの関連性の有無があるか調査を行ったので報告する。

    【対象及び方法】

    対象は2012年3月?2015年12月にL4/5のLDHと診断され、当院で内視鏡下ヘルニア摘出術を行った患者83例(男性49例、女性34例、平均年齢52.0±16.4歳)である。

    大腰筋計測は、MRIのL5椎体上面部の冠状断像を用いた。大腰筋位置は、L5棘突起尖端とL5椎体中央を通る直線に対し、L5椎体最前縁を通る垂線と、大腰筋最前縁を通る垂線間の距離を計測し、椎体に対する大腰筋位置とした。大腰筋面積は除脂肪し計測した。腰椎前弯角(以下LLA)は、術前・術後1ヶ月後の単純X線側面像を用い、L1椎体上縁とL5椎体下縁のなす角を計測した。画像は全て画像解析ソフトOsiriXで計測した。なお、比較は男女2群間とし、t検定及び相関係数の検定を用いて統計処理を行った。

    【結果】

    1)2群間での大腰筋位置・面積の比較

    男性群は女性群に比べ、有意に前方に位置し、面積も大きかった。(P<0.01)

    2)LLAと大腰筋位置との関連性

    LLAと大腰筋位置に相関は認めなかった。

    3)大腰筋位置と面積の関連性

    男性群において正の相関を認めた。

    4)LLAの比較

    2群間において、LLAに有意差は認めなかったが、LLA平均値は、2群共に一般的なLLA値を下回っていた。また術後LLAは2群共に増大し、特に男性で有意差を認めた。(P<0.01)

    【考察】

    LDH患者を対象にした今回の調査では、男性群の大腰筋は有意に前方に位置し、大腰筋面積も大きかった。このことより、男性群は女性群に比べ腰椎中心軸より大腰筋筋線維がより多く前方へ位置することが分かった。男性群においては、大腰筋により、腰椎屈曲方向への作用が増大する事が予測される。その為、大腰筋のストレッチングや腰背部筋力強化等を多く取り入れることで、腰椎屈曲方向のストレスを軽減させることに繋がると考える。また大腰筋が腰椎安定化や股関節屈曲作用として機能を発揮できるようなトレーニングを実施することはLDH再脱出を防ぐ意味で重要である。

    LLA減少によって大腰筋位置が前方に移動すると報告があるが、今回の検討ではLLAと大腰筋位置に相関は認めなかった。しかし、男性群においては大腰筋位置と筋面積は相関を示した。大腰筋は腰椎側面に付着しており腰椎のアライメント変化では移動せず、筋面積の増大により前方に位置することが判明した。このことからも、男性群では腰椎屈曲作用が大きいと考える。

    また、術前LLAは一般的な値よりも下回っていたが、術後1ヶ月時のLLAと比較すると、2群間とも増大していた。LDHによる逃避姿勢からの改善や術後の動作指導・体幹トレーニングにより腰椎アライメント改善に繋がったと考えられる。

    以上のことから、術後の腰椎アライメント改善は、LDH再脱出を防ぐ重要な要素であり、腰椎前弯の再構築を目標としたトレーニングを今後も継続すべきである。

    【まとめ】

    ・男性群では、女性群よりも大腰筋の面積が大きく、より前方に位置しており、腰椎の屈曲作用が大きくなることが予想され、大腰筋のストレッチングや腰背部筋力強化が必要である。

    ・大腰筋位置と腰椎アライメント間に関連性はなく、大腰筋の位置は筋面積に相関する。

    ・LDH患者のLLAは減少しており、腰椎前弯の再構築を目標にしたトレーニングが必要である。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者には研究の趣旨と内容について説明し、同意を得た上で行った。

  • 慶田元 真希, 新保 千尋, 松田 友秋, 児玉 興仁, 榎畑 純二, 福田 秀文
    p. 24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    近年、脊髄損傷不全麻痺者を対象にロボット技術を用いた様々な歩行練習の試みがなされており、ロボットスーツHAL(以下HAL)を用いた臨床研究では歩行速度や歩行能力の向上(長谷川2014、吉川2014)など歩行支援に対する有用性が報告されている。今回、痙縮の増悪によりバランス能力や歩行能力が低下した脊髄損傷不全麻痺者に対しHALの治療効果を検証したのでここに報告する。

    【方法】

    症例は60歳代男性で、平成X年に頸髄損傷を受傷し同年C3/4CPS+C5/6椎弓形成術を施行した。金属支柱付き短下肢装具(AFO)とロフストランド杖を使用した歩行が自立していたが、術後約140日目以降より身体機能・歩行能力の改善が乏しかった。そこで術後169日目よりHALを用いた歩行練習(以下HAL歩行練習)を開始した。実施期間は2週間(週3回の頻度)とし、通常理学療法と併用して実施した。実施内容に関して、通常理学療法実施日は促通反復療法、床上動作、階段昇降練習を40分、歩行練習(AFOとロフストランド杖使用)を20分実施した。HAL歩行練習日は、通常理学療法日の歩行練習20分でHAL歩行練習(AFOと歩行器使用)を実施した。理学療法評価としてAmerican Spinal Injury Association(ASIA)下肢スコア、manual muscle test(MMT)、Modified Ashworth Scale(MAS)、Functional Balance Scale(FBS)、10m歩行時間(最大努力時)、歩行率、2分間歩行試験をHAL歩行訓練開始前と6回実施後(最終)に実施した。

    【結果】

    HAL開始前と比較し最終で改善した項目はMAS(右/左で表記)の膝関節(開始前1+/2、最終1/1+)、足関節(開始前2/3、最終1+/2)、内転筋(MASマニュアルに準じて評価。開始前3/3、最終2/2)、FBS(開始前42点、最終52点)、10m歩行時間(開始前15.8秒、最終14.7秒)、歩行率(開始前115.4step/min、最終120.8step/min)2分間歩行試験(開始前60m、最終71m)であった。一方でASIA下肢スコア(42点)とMMT(右/左で表記:腸腰筋5/2、中殿筋5/3、大腿四頭筋5/4、ハムストリングス5/3、前脛骨筋5/4、下腿三頭筋4/4)は開始前後で変化はみられなかった。歩行観察では、HAL開始前にみられた股関節内転筋の痙縮に伴うはさみ足歩行と体幹側方動揺が最終時に軽減し、左右対称性の向上を認めた。

    【考察】

    今回の結果から、HAL歩行練習後に痙縮、バランス能力、歩行能力の改善が得られた。本症例は、歩行時に左股関節内転筋群の痙縮がみられ、歩行距離が伸びるとともに痙縮の増悪を認めていた。この痙縮の増悪がバランス能力に悪影響を及ぼし、歩行能力が低下していた。HALは生体電位信号を読み取ることで装着者の動作に合わせ適切な運動を支援し、装着者の能力に合わせて設定することが可能である。またHALの運動効果として、立脚期・遊脚期のそれぞれをアシストする制御機構が左右の非対称性を改善することが報告されている(吉川2014)。以上の事より、本症例も歩行時の適切な筋活動をHALにより支援、促通できたことが改善に至った要因ではないかと考える。

    【まとめ】

    今回、脊髄損傷不全麻痺者に対しHALを用いた歩行練習を実施した。HALの使用により歩行時の適切な筋活動をアシストすることができ、歩行時の痙縮、歩行能力、バランス能力の改善が得ることができたと考える。今回は短期間での検討であったが、今後は長期的な効果検証を行っていく事が必要と考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は当院倫理審査委員会の承認を得た上で実施した(平成28年1月27日)。研究に際し、本人にHALの概要を含む治療の説明と治療データの使用許可を説明し、署名による同意を得た。また、本研究において開示すべき利益相反はない。

  • 岸本 進太郎, 辛嶋 良介, 近藤 征治, 杉木 知武, 川嶌 眞之, 川嶌 眞人
    p. 25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    近年,野球肘に関しても投球肩障害と同様に,肩後方タイトネスやScapula Dyskinesiaなどの存在を指摘する報告がされている.今回,成長期の選手における野球肘と肩関節機能の関連性ついて調査したので以下に報告する.

    【対象と方法】

    対象は,2015年9月から2015年12月の期間に当院を受診し,野球肘と診断され加療を行った7例(内側型4例,外側型3例)とした.全例男性,右利き,右投げであり,平均年齢12.3歳(10?17歳)であった.なお,投球時の一発外傷例は除外した.方法は,肩関節機能の理学所見を原テスト11項目で評価し陽性率を調査した.評価内容は以下のとおりである.①Scapula-spine distance(以下SSD),②Combined abduction test(以下CAT),③Horizontal flexion test(以下HFT),④下垂時外旋筋力テスト(以下ISP),⑤下垂時内旋筋力テスト(以下SSC),⑥下垂時外転筋力テスト(以下SSP),⑦Elbow extension test(以下EET),⑧Elbow push test(以下EPT),⑨Loosening test(以下loose),⑩Hyper external rotation(以下HERT),⑪Impingement test(以下impingement).また,内側型野球肘4例(平均年齢10.5±0.6歳)を内側群,外側型野球肘3例(平均年齢14.7±2.5歳)を外側群とし11項目の陽性率を2群間で比較した.統計学的検討にはχ2検定を用い,いずれの検定も有意水準5%未満とした.

    【結果】

    原テスト正常項目は平均6.6(5?8)項目であった.陽性率は,SSD:100%,CAT:57.1%,HFT:71.4%,ISP:14.3%,SSC:42.9%,SSP:42.9%,EET:71.4%,EPT:28.6%,loose:0%,HERT:0%,impingement:14.3%であった.2群間の比較では,SSCは内側群75%,外側群0%で有意に内側群が高かった(p<0.05).CATは内側群25%,外側群100%で有意に外側群が高かった(p<0.05).SSD,HFT,ISP,SSP,EET,EPT,loose,HERT,impingementの陽性率は有意な差を認めなかった.

    【考察】

    可知らは中学・高校野球選手に対する投球時の肘痛と肩関節機能について調査し,肘痛を有する野球選手の原テスト正常項目は6.3項目であったと報告していた.本調査も平均6.6項目とほぼ同様の結果であった.自験例から,肩甲骨位置異常,肩後方タイトネスを示す項目の陽性率が高い傾向にあり,成長期の野球肘において,肘関節に加え肩関節機能の評価と治療が重要だと考えられた.また,coking phaseからacceleration phaseの野球肘が発生しやすい投球相で,骨頭を求心位に保つ腱板に機能不全を起こしている可能性が示唆された.両群間でSSCとCATに差が認められたが,これは受診時の年齢の違いに起因する問題が原因として考えられた.内側群は平均年齢が低く,筋機能の未発達な時期に投球負荷が加わり,腱板機能にimbalanceを起こすと思われた.一方,外側群は平均年齢が高く,無症候性に病態が進行するため,障害発生の危険因子として特徴的な肩後方タイトネスが顕著となったと思われた.本調査の限界として,症例数が少なく今後も調査を継続していきたい.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本調査はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,当院倫理員会の承認を得て実施した.また研究の実施に際し,対象者に調査内容について説明を行い同意を得た.利益相反に関する開示事項はない.

  • 衞藤 貴郷, 遊佐 真改, 山村 沙和, 枝村 和也, 徳丸 一昭
    p. 26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【諸言】

    現在、骨粗鬆症患者は全国で1300万人にも上ると言われる状況下、骨脆弱性を背景とした非定型大腿骨骨折(Atypical femoral fractures:以下AFF)を罹患した患者の治療に携わる機会を得た。AFFは大腿骨骨幹部に単純X線画像にてストレス骨折様の像を呈し、大半に大腿骨外弯を認める。また高い対側発症率を有するとの報告もある発生頻度が全大腿骨骨折の1%と極めて稀な骨折である。本疾患を罹患した患者の治療に際し、対側下肢のAFF発生防止の観点から歩容の改善、歩行能力の向上に重点を置き足底板やテーピングを用いてアプローチを行った結果、良好な結果を得られたので若干の知見を加え報告する。

    【症例】

    80歳代の女性。発症の2ヶ月前から右大腿部痛訴えあり。予防的OPE実施の数日前に段差昇段時に発症。右AFFと診断され手術目的で入院。既往として骨粗鬆症があり、3年前から他院にてビスフォスフォネート製剤(骨吸収抑制剤:以下BP製剤)にて服薬治療中であった。当院受診後服薬中止。

    【経過】

    髄内釘による骨接合術施術。術後2週間患肢免荷。術後15日目から部分荷重開始。術後41日目全荷重許可。その後、段階的に歩行形態を上げ、術後83日目1本杖自立にて自宅退院。

    【評価】

    術前の単純X線画像にて両大腿骨共にAFF発症高リスク領域の外弯変形を認め、術後も非術側には外弯変形残存、骨幹部外側に骨肥厚(+)。特記すべき理学的所見は胸椎後弯増強、腰椎前弯減少、骨盤後傾、1.5㎝の脚長差(右>左)、両膝関節内反変形(KL分類2)、足部ハイアーチ(右>左)、右中殿筋筋力低下(MMT3)である。更に歩行訓練開始時には、左遊脚中期~踵接地時の墜落性跛行、左立脚期の過剰な足関節制御、左踵接地時の重心線の内方偏位、右足圧中心の外方偏位といった問題点を抽出した。

    【結果】

    即時効果として墜落性跛行は消失、左踵接地時の重心線の内方偏位も改善。5?歩行は10.7秒から8.7秒に短縮し、歩幅も35.7㎝から41.9㎝に向上。杖歩行訓練開始後2週間で裸足歩行でも墜落性跛行消失。術後半年時点では、70歳代の平均歩行能力と同程度の数値を示した。

    【考察】

    義家らはAFFの発症原因をBP関連型、薬剤・合併症型、外弯型、更にそれらの混合型に分類している。また本症例が該当する混合型(BP関連・外弯)の発生機序として、鈴木らは大腿骨外弯という異常なアライメントが大腿骨骨幹部に応力集中を生み、微細な骨損傷を生じさせ、更にBP製剤による骨のリモデリング抑制が、この微細な骨損傷の蓄積を加速させ発症に至らしめると述べている。その発生機序と評価から、治療戦略として対側発症を防ぐ事を目的に、左大腿骨弯曲部への応力集中の低減を最重要課題とした。この課題達成の為に大腿骨への荷重負荷の軽減、異常な重心移動の修正、過剰な筋収縮の抑制、左立脚期の大腿骨骨幹部と重心線の距離の短縮を図る必要があると考え、右手での杖の使用、右中殿筋の遠心性収縮訓練の他、左足部には足底板の作成・適応、右足部へはテーピングによる修正等を行った。以上のアプローチの結果、即時的にも長期的にも歩容の改善、歩行能力の向上を獲得し良好な結果を得られたものと考える。

    【まとめ】

     本疾患の特性上、今後も対側発症リスクは残存するが、本症例へのアプローチにより、良好な結果が得られている事から、外弯型、外弯を有する混合型AFFの対側発症リスクに対する理学療法士の積極的介入は有意義であり、その発生機序を理解し、アプローチを行う重要性を再認識することができたと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    個人情報保護を遵守した症例研究である旨を本人に説明し書面にて同意を得た(平成27年10月1日)。

  • 吉田 貢己
    p. 27
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    強直性脊椎炎は、体軸性関節(仙腸関節および脊椎)の慢性炎症とそれに引き続く不可逆的な骨化を主病態とする脊椎関節炎の原型となる疾患である。今回、既往歴に強直性脊椎炎を有した症例を担当する機会を得た。30年前に発症、関節可動域制限や両下肢筋力低下による、転倒を繰り返していた。度重なる転倒により、車椅子での移動獲得を目標にしたが、本人とご家族は「もう一度だけでも歩きたい」と強く望まれていた。そこで、歩行による転倒を防止することを目的として膝装具に工夫を加え、結果歩行が自立したためその内容をここに報告する。

    【対象】

    70歳代女性。左大腿骨頚部骨折により当院入院。既往歴に強直性脊椎炎、右大腿骨顆上骨折、右膝蓋骨骨折がある。入院前の移動は屋内外ともに歩行車にて自立していた。入院時評価としては、頚部は全方向、体幹は屈曲以外の方向、両下肢は膝関節屈曲に著明な関節可動域制限あり。徒手筋力検査(MMT)両下肢2レベル。基本動作は中等度介助。機能的自立度評価法(FIM)は71/126点であった。

    【経過および結果】

    理学療法実施し、病院内歩行は歩行車にて自立していたが、退院前日に膝折れによる転倒を起こし、両脛骨粗面骨折を呈した。その後も再び膝折れを起こし、左膝蓋骨骨折と右脛骨粗面転移を呈し、急性期病院にて手術後当院に再入院となった。チームの方針としては車椅子移動自立を目標としたが、本人やご家族は「もう一度だけでも歩きたい」と強く望まれた。そのため、方針を転換し歩行自立を目標に膝装具の検討を行った。しかし、既存の装具では膝折れを防ぐことができるものがなかったため、膝装具に以下に示す工夫を加えた。両側支柱付膝装具を使用し、支柱をリングロック膝継手へ変更。膝装具のずり落ちを防止するために上下にベルトを装着。本症例は頚部を屈曲させて、ベルトの装着を確認できる関節可動域がなかったためベルトの留め具を音で確認できるものを使用した。膝装具を使用した歩行訓練を実施し動作定着を図り歩行車にて歩行が自立し自宅退院となった。

    【考察】

    強直性脊椎炎は、脊柱の骨化が著明で、仙腸関節、両側性の股関節、膝関節、肩関節、全脊柱の強直により重大な機能障害を残すと言われている。膝折れの原因として、強直性脊椎炎による重度の関節可動域制限と受傷前からの歩行が膝をロックし大腿四頭筋を使用しない歩容であったことにより、歩行時に膝がロックできず荷重を掛けたことが原因と考えられる。それにより、歩行に関しては、転倒を繰り返していたと考えられる。そのため、機能改善を目的とした運動療法を実施したが、変化はみられなかったため、膝折れ防止に対して膝関節の安定性を重視した膝装具を作製した。それにより、今後在宅生活を送る上で安全性かつ自立性を補えるものになるのではないかと考える。膝装具を作製したことで、歩行立脚期に膝関節の安定性が図れ、膝折れの心配がなく、歩行車にて歩行が自立し在宅復帰できたと考える。

    【まとめ】

    今回、症例は移動方法として屋内を膝装具使用した歩行車歩行、屋外を電動車椅子使用し在宅復帰となった。基盤となる機能面・能力面へのアプローチはリハビリテーションとして重要であるが、環境面にもアプローチを行い、安全な日常生活活動(ADL)の獲得に繋がる事を学んだ。今回の経験を活かし、様々な視点からの気づきを増やしていくとともに、多方面からのアプローチを行っていきたいと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき発表に関しての趣旨を説明した上で、同意を得た。

  • 青野 達, 松垣 亨
    p. 28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    下腿骨骨折は臨床で経験することの多い骨折の1つである。脛骨は皮膚の直下に骨が存在しているため開放骨折を起こしやすく、GustiloⅢB以上の開放骨折では軟部組織の損傷あるいは挫滅による感染や遷延癒合、偽関節のリスクが高く治療が難渋する症例が多い。今回、脛骨骨幹部開放骨折症例に対し遊離筋弁移植と骨接合術施行後、骨折部の遷延癒合を起こした症例の経過報告と術後理学療法について考察する。

    【症例提示】

    62歳男性。原付バイク乗車中に乗用車と衝突し当院へ緊急搬送となった。右脛骨骨幹部開放骨折(Gustilo分類:ⅢB AO分類:C3)の診断にて同日にデブリードマン、創外固定術を施行した。粉砕した骨片は汚染により破棄、開放創は下腿内外側の2カ所でみられヒラメ筋線維の一部が挫滅し、また腓骨神経不全麻痺の合併もみられた。術翌日より創内持続洗浄療法を開始、10日後に広背筋弁移植術、骨移植術、創外固定術(リング式創外固定器に変更)を施行。術後は広背筋弁の生着のため2週間の安静が必要であったが、その間は足関節尖足防止と下腿血流改善を主に理学療法を実施した。術後2週より1/3荷重を開始、術後10週より1/2荷重へ荷重量を増加させ荷重・歩行練習を継続した。その後骨折部の明らかな転位がないものの骨癒合を得る事が出来なかったため、術後4ヶ月に骨移植を行い創外固定をプレート固定に変更した。術後は骨癒合の状態をみながら術後2ヶ月より部分荷重を開始、術後4ヶ月より全荷重を開始し、足関節拘縮などの機能的な問題はなく受傷後8ヶ月で自宅退院となった。

    【考察】

    本症例は腓骨神経不全麻痺に加え広背筋弁生着のため術後安静が必要となったため、足関節拘縮などの機能障害の発生が危惧されたが、術後早期より足関節尖足防止を中心とした理学療法を実施したことで足関節の機能障害を起こすことなく治癒することができた。また骨癒合が遷延したが化骨形成の状態を評価しながら適切な荷重を行うことで、骨折部の転位をきたすことなく機能障害を予防することができ術後早期に自宅退院が可能となった。

    脛骨の遠位1/3は解剖学的に筋の付着がほとんどなく、骨癒合の過程で周辺組織からの血液供給が十分に得られにくく遷延癒合や偽関節が起こりやすいとされる。GustiloⅢB以上の脛骨開放骨折では前述した解剖学的特徴に加え軟部組織損傷により、骨折部周囲の血行が遮断されている可能性が比較的高く骨癒合に時間を要す。術後理学療法を実施するにあたり骨折部の損傷程度の把握はもとより、軟部組織の損傷程度とその回復状態を考慮し、術後早期は軟部組織の回復を妨げないように下肢機能障害の予防に努め、骨癒合に程度に合わせた荷重・歩行練習を実施していくことが重要である。

    【結語】

    重度下腿骨開放骨折の遷延癒合症例について経過と考察を述べた。GustiloⅢB開放骨折においては早期に足関節尖足防止を中心とした下肢機能障害の改善と予防を行い、骨癒合の程度や軟部組織の回復に応じた荷重・歩行練習を行うことが重要であると考えられる。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    ヘルシンキ宣言に基づき、症例報告を行う意義や個人情報の保護など対象者に十分な説明を行い同意を得た。また利益相反に関する開示事項はない。

  • 村井 聖, 有地 祐人, 佐々木 貴之
    p. 29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    腰椎変性疾患の症状の経過として下肢のしびれから始まり、疼痛、筋力低下、膀胱機能障害と徐々に悪化していくのが一般的である。腰椎辷り症の主症状として腰部痛や下肢痛が多く、神経性の間歇性跛行も呈する。臨床場面において、術前に筋力低下がある腰椎辷り症患者の場合、術後改善があまりみられないケースもしばしばある。術前に下肢筋力が低下している腰椎辷り症患者の術後状態を検討するために、当院で集約している腰椎変性疾患の間歇性跛行データベースを用いて報告する。

    【対象と方法】

    対象は当院の間歇性跛行データベースにおいて、2012年9月から2016年4月の間で当院に入院し、腰椎辷り症と診断され手術を施行した患者144名(平均年齢66.3±11.2歳、男性64名、女性80名)とした。患者には説明し同意を得た。調査項目は、理学的検査よりMMT(大腿四頭筋、前脛骨筋、足趾伸筋、腓腹筋)、Kemp徴候、SLR、ラセーグ徴候、大腿神経伸張テスト(FNST)、膝蓋腱・アキレス腱反射を選択した。歩行状態の指標として、術前と術後2週後にトレッドミルを使用し最大500mの間歇性跛行の検査を行い、その時の歩行速度、最大歩行距離、安静時疼痛(腰部・殿部・大腿後面)の有無について調査した。上記の下肢筋全てのMMTが5(Normal) である群と4(good)以下である群の2群に分け、前者を筋力正常群64名(以下正常群)と後者を筋力低下群80名 (以下低下群)として検討した。2群間において、術前後の比較として1) 正常群術前と正常群術後、2)低下群術前と低下群術後、筋力での比較として3)低下群術前と正常群術前、4)低下群術後と正常群術後の4つに分類しt検定を用いて各値を統計学的に分析した。

    【結果】

    手術前後の比較として1)と2)では、術後にKemp徴候と疼痛(腰部、殿部、大腿後面)が有意に改善し、歩行速度、歩行距離もそれぞれ有意に増加した(p<0.01)。2)のみ足趾伸筋と腓腹筋が術後の方が有意に大きかった。3)ではアキレス腱反射が歩行前後左右の下肢にそれぞれ有意な差がみられた(左p<0.05、右p<0.01)。4)ではKemp徴候、ラセーグ徴候、FNSTの神経症状が正常群の方に有意に陰性傾向であり、歩行後アキレス腱反射も正常群の方が有意に正常であった(左右p<0.01)。

    【考察】

    1)2)より手術による椎体間の固定や神経根の除圧により馬尾・神経根症に関連した腰部・下肢痛が緩和、かつKemp徴候が改善され、結果として2群とも術後歩行状態は改善している。2)3)より低下群術前の筋に何らかの異常がある可能性が示唆される。4)で示す術後2群よりKemp徴候、ラセーグ徴候、FNSTが有意差を認めている。これらは神経根の圧迫様式により神経根圧排徴候と神経根絞扼徴候に分類されるが、手術により神経根は除圧されているため、術前炎症による神経の易刺激状態が持続していると考える。さらに歩行後のアキレス腱反射にも有意差があり、筋の耐久性低下など何らかの間歇性跛行症状が筋力低下群の術後に残存している可能性が示唆される。そのため腰椎辷り症の症状が進行する中で筋力低下が誘発する前に外科的処置を行うことは重要である。以上より筋力低下を誘発している腰椎辷り症患者では術後歩行状態は良好だが神経の炎症は残存していることが窺える。術後2週後の検査であるため、長期的に見ると神経炎症が治まり予後が変化する可能性もある。その時の指標としてKemp徴候、ラセーグ徴候、FNSTが有効となる。今後の課題として術後3ヶ月など手術の長期的な成績の把握や、X線画像上でのMeyerding分類による重症度分類別での調査を行い検証していきたい。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者に本研究の説明を行い、同意を得たものにのみ評価の一環として実施した。

  • 山口 佳介, 永吉 由香, 繁松 敬幸, 玉置 巧伍, 石橋 竹虎, 瀨口 真太郎, 舌間 崇士
    p. 30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    転倒により外傷が発生する頻度は54~70%程度で、このうち骨折に至るケースは6~12%程度であるといわれている。つまり骨折の予防には、転倒への対策は欠かせないものであると言える。転倒の原因は、身体状況に関連した「内的因子」と生活環境に関連した「外的因子」に分けることができ、内的因子には加齢に伴う筋力の低下、バランス能力の低下がある。これらの能力が低下すると転倒に対するリスクが高くなるとされている。我々は転倒し、脊椎椎体骨折を受傷した患者に対し、バランス運動と筋力強化運動を中心に行い、退院時にはこれらの運動の継続を指導している。しかし、「転倒した高齢者の50%が再転倒する可能性が高い」との報告があるように、これだけで再転倒を防ぐことができるのかとういう疑問を感じた。今回、外的因子に関する調査を行い、転倒の原因を調査することで、退院時指導を強化し、再転倒の予防につながるのではないかと考えた。

    【対象と方法】

    転倒受傷し、当院にて脊椎椎体骨折と診断を受けた9例(男性2例・女性7例、平均年齢78.3±8.37歳)を対象に直接記載にてアンケート調査を施行した。アンケート内容は、①転倒の原因、②転倒場所、③転倒時の履物とした。なお脳血管疾患に起因する障害や認知面に問題のある症例は除外した。

    【結果】

    対象者9例(男性2例・女性7例)のうち、①転倒の原因は「滑って転んだ」が44%(4例)、「何かに躓いて転んだ」が33%(3例)、「動作時にバランスを崩した」が22%(2例)であった。②転倒場所は「屋内」が88%(8例)、「屋外」が11%(1例)であった。「屋内」の詳細な場所は、「居間」が50%(4例)、「台所」が25%(2例)、「玄関」、「廊下」がそれぞれ12%(1例)であった。③転倒時の履物は「スリッパ」が50%(4例)、「靴下」が37%(3例)、「裸足」が12%(1例)であった。

    【考察】

    『高齢者ができる限り要介護状態に陥ることなく、健康で生き生きした生活を送れるように支援すること』。近年、社会の流れはこの介護予防の必要性が強く唱えられている。高齢者で介護が必要となった原因の1つに転倒、転落などによる骨折があり、転倒・骨折が要介護に至った原因の10.2%を占めているとの報告もある。転倒予防の運動療法として、バランス運動と筋力強化運動が有効であるとされており、当院においても転倒が起因した疾患の患者に対し、転倒予防の観点から運動の重要性や自主にて行えるバランス運動や筋力強化運動や動作を指導し、パンフレットを配布している。今回のアンケート調査より、屋内で転倒したものが8割を超えることが分かった。さらに、その中で外的因子となりうる履物に関しては靴下、スリッパを着用していたものが8割を超えていた。靴下、スリッパ履きでの屋内の移動は、滑りやすいことが容易に判断できる。これらの結果より転倒の原因となる外的因子にも着目し、屋内での転倒が多いことから滑り止めのある靴下、踵まで覆われた室内履きの使用を勧めることをパンフレットに追加し、指導を開始した。今後、継続調査とともに症例数を増やし、更なる転倒予防策を見出していきたい。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本調査はヘルシンキ宣言の精神に則って行った。データ使用については、対象者に調査の趣旨と個人情報保護について説明し、同意を得た

  • 田代 昌也, 岩永 勝, 出永 文也, 上野 真副, 軍神 安孝, 浦本 達也, 政時 加奈恵
    p. 31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    今回、大腿骨病的骨折を受傷し左大腿骨近位端置換術Kyosera limb salvage system(以下:KLS)を施工した症例を担当した。転移性骨腫瘍に対してKLSを施行し歩行ADL経過を追った報告は少ない。そのため、病状に伴い短期間ではあったが歩行経過を追うことができたためここに報告する。なお今回の発表について本人の同意を得ている。

    【症例紹介】

    80歳代男性。肺癌末期(stageⅣ)。BMI:15.2とやせ型でありMini Nutritional Assessment(以下:MNA)は1/14と低栄養状態である。入院前生活は住宅型有料老人ホームにて歩行・身の周りのADL自立。転倒され左大腿骨転子下骨折受傷。CTにて肺癌、肝転移、多発性脊椎転移を認め、肺癌の骨転移部での骨折と判断される。6病日目、KLS施行。41病日目、リハビリテーション(以下:リハビリ)目的で当院転院。

    【理学療法評価】

    手術の侵襲により疼痛、筋切開による筋機能低下、可動域制限が誘因となり基本動作は、軽介助~近位監視レベル。歩行能力は、患側立脚期の短縮、患側下肢の過度な外旋位での振り出しがみられ、平行棒内にて近位監視レベルであった。治療目標として歩行能力向上、トイレまでの移動自立を掲げた。

    【経過】

    41病日目からリハビリ介入開始。平行棒内での荷重訓練、前方ランジを中心的に実施した。また、多発性脊柱転移も認めているため、起立動作は座高クッションを使用した。46病日目に歩行車歩行軽度介助レベルにて遂行可能となる。日により体調にムラがみられ、訓練量を調整する必要があった。また、疲労感・倦怠感の訴え、腫瘍熱の出現により介入できない日もあったが、61病日目に歩行車歩行60m近位監視レベルにて可能となった。

    【考察】

    今回、本症例に施工されたKLSは30cmと広範囲にわたる切開であった。そのため、股関節周囲の筋機能低下、可動域制限、荷重時痛が問題となり、歩行能力低下をきたした。腫瘍用人工関節では広範囲の侵襲に加え、筋をステムに逢着するため、積極的な筋機能向上は困難とされている。本症例では、これに加え肺癌末期、低栄養ということから、より筋機能向上が困難と考えられた。訓練は立脚期、遊脚期と各周期に分け反復的にアプローチを実施した。立脚期に関しては、平行棒内において荷重訓練を行い患側下肢立脚期の筋収縮を促すよう意識づけをした。遊脚期では、前方ランジで患側下肢を正中位で振り出すよう意識させ、振り出し動作を反復的に実施し筋収縮を促した。これにより、歩行能力は平行棒内歩行近位監視レベルから歩行車歩行近位監視レベルへと能力向上を図ることができ、移動範囲を拡大することが可能となった。しかし、トイレまでの移動能力を獲得することが出来ず、実用性のある歩行を獲得することが出来なかった。これには、①ステム逢着による筋機能向上困難②癌末期の進行③低栄養状態が能力向上を妨げる因子として考えられる。本症例のように病的骨折をきたしKLSを施行した患者は、切開範囲が広く筋機能向上を図ることが困難であり、入院前の歩行能力を獲得することが難しい。また、本症例の場合、癌末期や低栄養など能力向上に対しての阻害因子も併存している。そのため、本人の意志を尊重し主病のみならず多方面からのアプローチを実施していくことが、歩行能力向上に繋がっていくと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    ヘルシンキ宣言に基づき同意を得て実施した。

  • 井上 幸輝, 岡本 さやか, 村中 進, 小松 智, 平川 信洋, 小峯 光徳, 鶴田 敏幸
    p. 32
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    恥骨骨融解症(Pubic osteolysis以下PO)は恥骨部の疼痛・違和感にて発生し、X線にて恥骨に骨融解像を認め、特に悪性腫瘍との鑑別が問題となる疾患である。その発症は明らかな受傷機転を有するものと誘因のないものとで半々を占めると報告されている。今回、仙骨骨折後にPOを発症し歩行障害と原因不明の膀胱直腸障害を生じた症例のリハビリテーション(以下リハ)を経験したので報告する。

    【症例】

    80歳代女性、独居。主訴:自宅復帰、排泄管理の自立。既往歴:RA、骨粗鬆症。現病歴:平成27年9月に玄関にて膝に力が入らず左臀部から転倒。徐々に臀部の疼痛増強したため当院受診。仙骨骨折と診断され入院となる。その後症状安定していたが、鼠径部痛と下肢痛が出現し、徐々に尿・便失禁も出現した。X線とMRI所見にて恥骨の骨破壊像を認め、POと疑われた。確定診断の為他院へ転院し、1か月後加療の為再度入院となる。

    【経過】

    入院時は、Barthel Indexは0点と全介助状態であった。疼痛が強いためベッドサイドにてリハ開始となった。リハ時は各種動作にて腹圧上昇し尿・便失禁を生じるため、可能な限り腹圧上昇を抑えながら行った。1か月後には棟内廊下(50m)歩行器にて近位監視下で可能となった。この時期の禁忌として恥骨に負担となる股関節の運動、体幹回旋、長時間の座位や立位、歩行などであり、疼痛の範囲内で管理することが重要であった。3か月後X線所見にて骨融解像に変化なく、疼痛の増悪も認められないため股関節可動域訓練、体幹回旋、平行棒内歩行訓練、シルバーカー歩行訓練開始と負荷量を上げ、4か月後には歩行器にて移動自立し、現在はT-cane歩行自立レベルでの自宅復帰を果たした。

    【考察】

    本症例は、骨粗鬆症が基盤にあり転倒を機転として発症したと思われる。今回の主な治療方針は、安静を保ちながら恥骨に直接的に刺激が加わらないこと、骨盤開大による骨癒合の遅延を防止するために骨盤ベルト常用しながら負荷量を疼痛の範囲内で慎重に進めていくことであった。

    体動や歩行時に尿・便失禁が起こり、リハへの意欲の低下や拒否等があった。それらに対して看護師と相談しリハ時間の前後にトイレ動作の時間を設けるよう調整したり、女性理学療法士と協力しながら心理面のサポートを行った。その後徐々に活動量が増加し、ADL拡大により患者自身で出来ることが増えたことが意欲向上に繋がった。運動負荷量に関しては、医師、看護師、理学療法士で話し合い、X線所見や患者のADL状況等を踏まえて調整をおこなった。その結果、先行研究と同様の期間でT-cane歩行自立にて自宅復帰が可能となった。今回の症例は疼痛が長期間持続し患部の免荷による活動性の低下及び膀胱直腸障害による心理的ストレスに対して、医師を中心にコメディカルが積極的に介入することにより意欲の低下を防ぐことが出来たと考える。POは発症から寛解までに長期間を要することから身体的機能のみならず、心理面のアプローチが重要であると考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    症例には、本研究の調査内容や起こりうる危険、不利益などを含め説明し、また、個人情報に関しては、学会などで研究結果を公表する際には個人が特定できないように配慮することを説明し同意を得た。

  • 和田 あゆみ
    p. 33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    大腿骨頚部/転子部骨折ガイドラインによると骨密度の低下は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子であるといわれており、早期からの治療は骨粗鬆症性骨折を予防し、QOLの維持向上を目指している。今回大腿骨近位部骨折患者の骨密度は術後2週目の歩行状態とADL、回復期病院退院時の歩行状態とADL及び総在院日数に影響があるかを調査したので報告する。

    【対象・方法】

    2015年7月から2016年1月の期間に当院で手術を施行し、地域連携パスを使用した大腿骨近位部骨折患者の52名のうち、転院後の情報を把握できた患者35名(男性6名、女性29名)を対象とし、骨密度により当院入院中に実施した骨密度測定(Dual‐energy X-ray Absorption;DXA)にてYoung Adult Mean;YAM値の70%未満を骨密度低値群、70%以上を骨密度高値群に分類した。低値群は22名(男性4名 女性18名 年齢79±10)、高値群は13名(男性2名 女性11名 年齢79±7)。調査内容として受傷前の基礎情報は、年齢、BMI、入院前歩行状態、入院前ADL、認知機能(長谷川式簡易知能スケール)、反対側の骨折歴とした。また受傷後については術後2週での歩行状態とADL、回復期退院時歩行状態とADL、総在院日数を調査した。ADLはBarthel Index(以下BI)を、歩行状態はBIの歩行項目の点数を使用して自立15点・介助10点・車いす5点・不能0点とした。また各群内の入院時・退院時の歩行状態・ADLにおいてもそれぞれ比較を行った。統計学的解析はt検定、χ二乗検定、ウィルコクソンの符号付順位和検定にて、危険率5%未満を有意差有りとした。

    【結果】

    大腿骨近位部骨折患者のうちYAM値が70%未満であったのは全体の62.8%であった。低値群と高値群の受傷前の基礎情報を比較すると(低値群vs高値群)、年齢、BMI、認知機能に有意差はなかった。歩行状態に関しては術後2週(6.9vs7.5 p=0.82)、退院時(11.3vs10.7 p=0.91)であった。ADLに関しては術後2週(62.6vs66.3 p=0.42)、退院時(79.2vs80.9 p=0.63)であった。在院日数に関しては、(82.6vs78.8 p=0.68)であった。低値群の入院時と退院時の歩行状態で有意差を認めた(14.9vs11.3 p=0.003)。その内訳は入院時退院時ともに自立が64%、自立から介助は18%、介助から車いすが18%であった。反対側の骨折歴は低値群4例、高値群0例であったが統計的な有意差は認めなかった。

    【考察】

    今回、骨密度の差による歩行状態、ADL、在院日数においては有意差を認められなかったが、低値群の36%は退院時の歩行状態が低下しているということが示唆された。また今回の調査では低値群のうち4例に反対側の骨折歴があった。大数加らは大腿骨頚部/転子部骨折を生じた患者は対側のリスクが明らかに高く、対側の骨折は33%が1年以内、52%が2年以内に発症していると報告していることから残りの18例も対側の骨折が予想される。よって、今後は地域連携パスを通して骨粗鬆症に対する治療と転倒予防を念頭においた運動療法や生活指導を含めた患者教育など包括的な対策に取り組む必要がある。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究に際して患者データを使用する旨を説明し同意を得た。

  • 善明 雄太, 重松 良次, 安藤 憲洋, 田中 亜季, 岩本 尚悟
    p. 34
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【緒言】

    当院には,脊椎脊髄疾患を加療するために脊椎脊髄外科治療センターがある.主に脊髄損傷,脊髄梗塞,脊髄腫瘍,脊椎椎体骨折,脊髄変性疾患等の患者を入院加療をしている.また,麻痺を呈した患者が入院加療をすることもある.今回我々は,2013年7月から2016年2月までの期間に入院加療となった2078名に対して離床スケジュールを使用した早期離床,褥瘡対策を実施した.その内,麻痺患者は153名であった.結果,早期からのADL向上,褥瘡発生件数0件に成功したため報告する.

    【取り組み内容】

    麻痺患者の入院加療の際に早期より離床スケジュールの作成,排尿排便障害患者のトイレ誘導時間設定,褥瘡予防ベッドマットやクッションの使用,リハビリサイドから看護師サイドへの移乗動作やポジショニング指導等をチーム医療として行っている.離床スケジュールを作成する際に患者の全身状態,耐久性,合併症等の有無を含めカンファレンスを実施している.離床スケジュールではリハビリ時間,看護師サイドでの離床時間帯,臥床時間帯,排尿排便障害の生じている患者にはトイレ誘導時間設定等を決めている.離床は状態に応じて長時間行えるように計画している.離床スケジュール実施と並行してリハビリでは可能な範囲にて車椅子自走訓練,看護師への移乗方法の伝達,患者に合ったベッドマットやクッションの選択を実施している.看護師サイドではリハビリより伝達のあった移乗動作方法等の伝達を病棟看護師全員にしている.車椅子自走自立,離床時間の延長が可能になった患者には移乗動作のみ介助にて行い,病棟での車椅子移動自立を可能にしている.

    【結果】

    前述の様な取り組みをすることで早期からのADL向上,褥瘡発生件数を0件にできたと考える.

    【考察】

    早期からカンファレンスを実施するメリットとしてチームでの患者状態の把握,体動困難な患者の場合はポジショニングの統一を可能にすることである.ポジショニングに関しては、写真撮影を行い伝達ミスがないようにしている.移乗動作等をリハビリサイドから看護師サイドへ伝達することで移乗時の転倒予防にも繋がったと考える.麻痺患者は障害受容の段階にてメンタル面の低下がみられる.早期から離床時間の延長や車椅子自走自立を可能にすることで患者のモチベーションの維持,向上を促せたと考える.維持,向上することで麻痺患者の意欲低下を防止し,早期からのADL向上ができたと考える.長時間座位時の褥瘡予防としてロホクッションを使用している.ロホクッションは一般的にも除圧効果が高いといわれており,感覚障害のある麻痺患者には有効であると考え使用している.長時間座位時のプッシュアップ指導も患者本人にしっかりと行っている.排尿排便障害を呈した患者に対して早期からのトイレ誘導を実施している.排尿排便障害を呈した患者は尿意や便意を感じることができないケースが多いため,その際はこちらが時間設定して誘導するようにしている.時間設定をして誘導する目的としては,日課にすることで排尿排便に対しての意識を持ちやすくする為である.実際のトイレに行くことで環境刺激にもなり,排尿排便障害の改善に繋がる可能性があると考えている.このような早期からのADLに対するアプローチ,メンタル面に対するフォローは回復期リハビリテーション病院に転院する際にも役立っていくと考えている.

    【まとめ】

    このような患者達にはチーム医療は大変重要である.今後も様々な取り組みを行っていきチーム医療の質の向上を目指していく.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    倫理的配慮をしており,発表の同意を得た.利益相反なし.

  • 石阪 靖英
    p. 35
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

     左上肢熱傷に対し、植皮術を施行した症例への治療介入を行った。肘関節は関節拘縮を生じやすく、早期の治療介入が重要とされている。症例は術後から治療開始まで2ヶ月間の期間があり、重度な関節拘縮を認めていた。皮膚の柔軟性・滑走性に着目した治療介入や、テーピング施行後に自宅での自主練習を指導した結果、肘関節屈曲可動域が大きく改善しADL動作が可能となったのでここに報告する。

    【症例紹介】

     対象は60歳代女性。H26年11月下旬、ろうそくの火が服に燃え移りⅡ度(深達性)の熱傷受傷。同日形成外科病院へ入院。同年12月初旬に植皮術施行。術後8週より、本院にて熱傷術後・左肘関節拘縮の診断に対し外来での理学療法を開始する。

    【理学療法評価】

     主訴は「左肘が曲がらず顔が洗えない、茶碗を口まで運べない」であった。熱傷部位は左上腕から前腕部にみられ、特に前面尺側部に皮膚の瘢痕形成を認めた。肘関節後面に瘢痕形成は認めなかったが、左上肢全体に皮膚の柔軟性・滑走性の低下を認めた。介入初期(術後8週)の左肘関節可動域は屈曲110°、伸展‐50°であり、自動・他動運動ともに最終屈曲域で肘頭部に疼痛の訴えを認めた。筋緊張は左上腕三頭筋、上腕二頭筋、上腕筋で高かった。

    【経過および結果】

     介入初期より左肘関節に対し、渦流浴、超音波、筋リラクゼーション、上腕三頭筋の癒着・滑走性の改善を目的とした選択的収縮練習、関節可動域練習、自宅での自主練習指導を行った。介入初期から6週経過時点(術後14週)で左肘関節周囲筋の筋緊張低下を認め、屈曲110°から130°まで改善したが、可動域の改善に伴い肘頭部の疼痛増強を認めた。また、翌日の介入前には115°まで戻り治療効果の継続は困難であった。そこで、健側と比較したところ肘関節後面の皮膚に柔軟性・滑走性の低下を認めたため、肘頭部の皮膚に皺が集まるようテーピング(伸縮性)を施行したところ、疼痛は軽減し肘関節屈曲可動域改善の即時効果を得た。自宅でもテーピングを施行し自主練習を継続してもらった。結果、介入初期から14週経過時点(術後22週)には肘関節可動域は屈曲145°、伸展-10°まで改善し洗顔や食事動作も可能となった。

    【考察】

    一般的な肘関節屈曲の可動域制限因子として、関節包の肥厚、上腕三頭筋の瘢痕化・癒着、内側側副靱帯の短縮、異所性骨化等が挙げられる。上記を考慮し治療介入を行ったが可動域の改善に伴い肘頭部の疼痛は増強し、介入初期から6週経過時点には屈曲可動域の改善は停滞した。そこで治療プログラムを再検討し皮膚への介入を追加した。

    皮膚は運動軸から最も距離が遠い組織であり皮膚による運動制限は意外に大きいとされている。福井は、伸張されている部位を弛緩すると伸張方向への運動が大きくなるという皮膚運動の原則を報告している。これをもとに、肘関節後面に皺が集まるようテーピングを施行し肘頭部の皮膚を弛緩させた。結果、肘関節屈曲運動時の疼痛は軽減し、他動屈曲可動域に近い角度まで自動屈曲が可能となった。この結果から、肘頭部の疼痛は皮膚の伸張痛が原因と考え、自宅でのテーピングを継続した。皮膚を弛緩させた状態を保つことで、日常生活動作や自宅での練習が容易となり、治療効果に繋がったと考える。また、症例は幸いにも肘関節後面の皮膚が保たれていたことも屈曲可動域が改善した理由の1つだと考える。

    熱傷後の瘢痕が柔らかくなるには通常6カ月から1年を要するとされているが、早期より皮膚運動学などを考慮した練習なども根気強く行うことが重要と考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者には本報告の内容と公表について十分な説明を行い、同意を得た。

  • 藤田 賢太郎, 簗瀬 誠
    p. 36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    作業療法士養成教育では,多様化する学生の学習意欲を高め,主体的な学習へ導くことの重要性が指摘されている.主体的な学習には動機づけが重要であり,個人によってその動機づけは異なることから,学生がどのような動機のもと学習に取り組んでいるか,より正確に把握することが重要である.本研究では,課題価値という概念を用いて,授業形態の違いが学生に与える動機づけの在り方を明らかにすることを試みた.

    【対象】

    四年制専門学校作業療法学科の3年生37名,および3年生に対して開講される22の作業療法専門科目であった.

    【方法】

    課題価値とは,学習者が学習内容にどのような価値付けを行っているのかという観点から学習の動機づけをとらえるものである.この概念をもとに作成された尺度が課題価値測定尺度である.本尺度は,学習することの楽しさや面白さを表す「興味価値」,ある内容を学習することで自身が望ましいと考える自己像を獲得できるという「私的獲得価値」,その内容を学習することが他者からみて望ましいと考える「公的獲得価値」,学習内容が就職や試験で合格するために必要であるという「制度的利用価値」,さらに学習内容が職業的な実践において役立つという「実践的利用価値」の5つの下位尺度から成り,それぞれの下位尺度には6つの質問項目が含まれている.これを7件法で評価し下位尺度ごとに平均得点を算出する.

    【分析】

    まず,知識伝達型授業科目群と参加体験型授業科目群それぞれにおける授業に対する価値付けの傾向を把握するために,群ごとに下位尺度得点を求め比較を行った.つぎに,授業形態による価値付けの違いを明らかにするために、知識伝達型授業科目群と参加体験型授業科目群の2群間で下位尺度得点の平均値の比較を行った.検定には,一元配置分散分析およびBonferrini法による多重分析,対応のないt検定を用い,いずれも有意水準を5%とした.なお,本研究は鹿児島医療技術専門学校倫理委員会の承認(第1号)を得て実施した.

    【結果】

    対象としたすべての科目のアンケート回収率の平均は94.5%であった.知識伝達型授業科目群では、実践的獲得価値と制度的利用価値に比べ私的獲得価値は有意に低く(p<0.01,0.05),実践的利用価値に比べ興味価値は有意に低かった(p<0.05).参加体験型授業科目群では実践的利用価値と制度的利用価値に比し私的獲得価値が有意に低かった(p<0.01,0.05). 知識伝達型授業科目群と参加体験型授業科目群の下位尺度間での得点の比較では,すべての下位尺度において参加体験型授業科目群の得点が高く、興味価値、私的獲得価値、公的獲得価値、実践的利用価値において有意差がみられた(p<0.01,0.05).

    【考察】

    学生は授業形態に関わりなく授業に対する私的獲得価値の価値づけが低いことが明らかになった.本結果は自分が望ましいと考える自己像が未だ曖昧であり,望ましい自己像の獲得手段として授業を価値づけることが困難であることを示していると考えられる.一方,制度的利用価値,実践的利用価値はどちらも高い傾向にあり,学生の多くは将来の職業である作業療法士を意識して授業を受けていることが示唆された.また授業形態の比較において,参加体験型授業は,知識伝達型授業よりも私的獲得価値を除く総ての下位尺度得点が有意に高く,知識伝達型授業よりも学生の学習動機を高め,将来の職業をより意識させることが可能となる授業形態であることが確認された.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    調査に際しては、成績などに影響しないことを説明し、個人が特定できないよう無記名での回答とした。本研究は鹿児島医療技術専門学校倫理委員会の承認(第1号)を得て実施した.

  • 有村 智美, 有川 敏成, 橋口 伸吾, 川越 一慶, 山口 燿司
    p. 37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    当院リハ科は約40名のスタッフで構成され、その2/3が経験10年目未満のスタッフである。平成25年4月院内の組織再編に伴いリハビリテーション(以下リハ)科に5名の管理職(課長、病棟主任2名、外来主任、在宅主任)が配置されることとなり、手探りでの管理業務が始まった。日々試行錯誤を繰り返すうち組織の管理運営方法を学びたいとの思いが強くなり、平成26年6月からその手法を学びながら様々な取り組みを行なってきたので、これまでの経過と若干の展望を加え報告する。

    【方法】

    リハ科管理職スタッフ3名(課長、病棟主任)が、月に2回4時間を管理職研修の時間として充て、外部より1名の指導者を招へいして指導を受ける。新たに掲げた『リハ科目標』達成に向けて各スタッフに役割分担を課すなどスタッフ教育を実践したり、リハ科の問題点を助言を受けながら解決することを経験したりするなどして管理運営のあるべき姿を学んでいる。

    【経過】

    まず、業務遂行にあたり必要となる『リハ科の理念』を、病院の理念を前提として、スタッフ全員の提案から投票を経て決定し、リハ科として“こうありたい”という考え方を統一した。さらにBSC(バランスト・スコアカード)を使用し「財務の視点」「患者様・ご家族の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」に当院独自の「職員の視点」を加えた5つの視点から問題点を整理して『リハ科管理実践計画書』を策定した。その中の『リハ科目標』達成に向けて戦略を立て、まずは「業務プロセスの視点」からアプローチを開始した。患者様の最終目標を共有し、その達成に向けた各療法の中期目標や評価結果を互いに理解し合い、より効果的なリハプログラムを提供するという当たり前のことを確実に実施するために『リハ効果判定評価表』を作成、担当者間で週1回以上のカンファレンスも義務付けた。併せて、経過記録の中に各療法の短期目標とプログラム内容を記入する欄を追加し、新しい書式を作成した。それらの記録を各病棟主任が内容確認し、1ヶ月ごとのリハ効果を判定している。

    その他の視点においては、毎日のリハ予定単位数と実績単位数を集計し、その差を個別に分析(「財務の視点」)したり、患者様に退院時『リハビリ満足度調査』への回答を依頼し、必要に応じ回答結果を担当セラピストへフィードバックしたりする(「患者様・ご家族の視点」)など並行して行っている。

    これらの『リハ科管理実践計画書』に沿った主な取り組みに加え、その時々に発生した懸案事項に対し解決の助言を受けて検討を重ね、管理運営の観点から当院リハ科として最善と思われる方法を実践する形で研修を継続している。

    【展望】

    リハ組織における管理職者の役割とは①業務遂行と改善②部門目標の達成③人材育成であると考える。今回このような研修の機会を得て、これまでの臨床経験の中でリハに関する専門的技術は懸命に身に着けてきたが、組織の管理運営の方法について学んだことはなく、これらの役割を果たすためのスキルは持ち合わせていないことを自覚した。

    今後当院においては、患者様へ提供するリハの質を更に向上し、スタッフにとって働きやすい環境を保持するためにも、管理職研修で学んだ知識、技術に基づいた管理運営手法を駆使し、繰り返し実践していく必要がある。また、これらの取り組みに経験の浅いスタッフにも参加を促し、早い時期から管理運営の考え方に触れることで属する組織の理解を深め、管理職者としての観点も育てていけるのではないかと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本報告の計画立案に際し、事前に当院倫理審査委員会の承認を得た(承認日平成28年4月25日)。

  • 新地 昭彦
    p. 38
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    学習者の意識的、無意識的な学習に対する様々な工夫を、学習ストラテジー(以下、ストラテジー)と言い、学習成果の差が生じる要因の一つに、ストラテジー活用の違いが関連していると考えられる。今回、学生に対しストラテジーの活用傾向を調査し、結果と成績との関連性調べ、学習支援および学習環境作りのあり方を検討することを目的し報告する。

    【方法】

    平成27年度、理学療法学科2年生44名に、全科目試験終了後にOxfordが考案した言語学習ストラテジー調査法SILL(Strategy Inventory for Language Learning)をもとに、独自に作成したアンケート調査6分類(記憶12項目・認知12項目・補償2項目・メタ認知8項目・情意6項目・社会5項目)の全45項目を各4段階スコアにて回答してもらい、スコアが高い程、ストラテジー活用が高い事とした。結果から、全体および、分類毎の内的整合性を示すクロンバックのα信頼性係数(以下、α係数)を計測し、α係数の結果に応じて、基本統計量、各分類のスコア間の分散分析とTukey法による多重比較の検定を行い、スコアと成績との関連性を調べた。(基本統計Microsoft Excel 2010使用、P<0.05)

    【結果】

    α係数は、全体で0.89、分類毎で記憶0.63、認知0.73、補償0.21、メタ認知0.72、情意0.39、社会0.71で、α係数の低い補償・情意は除外し、4分類37項目にて分析をおこなった。また補償、情意除外後の全体のα係数は0.89であった。ストラテジーの37項目の平均値は2.8(標準偏差±0.85)で、平均値以上を示したのは18項目。平均値の高い順から、“重要なポイントをマークする(記憶)”“自分で調べる(認知)”“友達に教えてもらう(社会)”などで、低い順では、""予習をする(記憶)""""図書館の利用(認知)""""教師への質問(社会)""などであった。分散分析の結果では、各分類のスコア間に主効果が認められた。多重比較の結果、記憶スコア1より3,1より4、認知スコア1より3,1より4,2より3,2より4、メタ認知スコア1より3,1より4,2より3で有意差が認められたものの、社会には有意差が認められなかった。

    【考察】

    学生は、学習を行うにあたり多種類のストラテジーを活用し、意識的、無意識的に工夫していることが分かった。比較の結果、スコアが高いほど、高成績である関連性が認められ、なお高低2群に分かれる傾向となった。また今回、社会には有意差が認められず再調査の必要性もあるが、グループ学習など、“学生同士の協力”は行うものの、“教師への質問”のスコアは低かった。これは学生の教員に対するコミュニケーション不足も考えられるが、教員への質問など否定的評価を受けるようなストラテジーを学生が好まない傾向もあると思われ、教授側への問題提起となる結果となった。また、ストラテジーが高いにも関わらず低成績者もいることなど、具体的な活用法などの分析も必要と思われる。

    【まとめ】

    今回の調査で、学生が活用するストラテジーの一部を把握できたと思われる。今後、新しいストラテジーを含む再調査を行い、学習者の環境要因も考慮しながら、個々の学習能力に応じた有効的なストラテジー活用の指導が出来るようになることが、今後より良い学習支援につながるものと思われる。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    当研究を遂行するにあたり、当機関の倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に従い、アンケート調査に際しては、調査実施後、学生に研究目的と内容、また個人情報などの漏洩がないことを説明し同意を得た者に対し行った

  • 遠藤 正英
    p. 39
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    平成25年から27年までの理学療法士(以下PT)国家試験合格者数は全体の有資格者数の22.6%を占めており、臨床経験の少ないPTが急増している。しかし、臨床経験の少ないPTは臨床経験の多いPTに比べて、業務に関して分からないことも多く、社会的、専門的な知識も低いことが多い。さらに介助下における転倒などの事故も多い傾向にある。そのため、多くの病院では新卒PTに対して色々な方法で教育を行っている。しかし、新卒教育を講義で行っても、365日体制の病院が多い昨今において全員が一度に受講することは困難で、知識に差が生じやすい。また、臨床で教育を行っても、臨床経験の多いPTが少ないため、指導をできるセラピストが少なく、指導するセラピストにより指導内容にばらつきが生じる。そこで当院では均一な新卒教育ができるように独自の新人教育システムを実施しているため紹介する。

    【教育システム】

    当院では新卒教育を試行錯誤し色々な方法で行っていたが、平成26年度より、業務、社会的な知識を学ぶ「基礎新人教育」、専門的な知識を学ぶ「専門職教育」を講義で行い、臨床での介助方法を学ぶ「基礎演習」を臨床で教育している。「基礎新人教育」は24テーマ、「専門職教育」は22テーマあり、講義は1回30分程度、週3から4回行っている。しかし、全てに全員が参加することが難しいため、講義を動画で撮影し講義資料と一緒にeラーニングシステム上で誰でも閲覧可能にしている。eラーニングシステムは、オープンソースの学習運営システムであるMoodleを使用している。また、全講義終了後にMoodle上で試験を行い、不合格者は次年度も同様に講義と試験を受ける。「基礎演習」は寝返り、起き上がり、起立、歩行、階段昇降、屋外歩行について、新卒は色々な理学療法士の訓練に入り、各動作の見学を1回、体験を4回別々の患者に行う。体験4回が終了した動作は、リハビリテーション部管理者の前で実技試験を行い、合格した動作のみ一人で介助を行ってよいとしている。不合格の場合は合格できるまで体験を続け、合格できるまでは全ての新卒教育が修了した理学療法士の監視の下、介助を行うようにしている。

    【結果及び考察】

    平成27年度、講義形式の新卒教育は平均参加率が基礎新人教育71.5%、専門職教育64.2%だった。参加できない理由は「仕事が休みだった」、「業務の都合」が多くを占めていた。つまり、講義での新卒教育に全員が参加することは難しく、その理由も回避不可能なものだった。しかし、試験の合格率は基礎新人教育86.5%、専門職教育92.3%で非常に高かった。このことから、講義に参加できなくてもeラーニングシステムでの学習が可能だった事が推測される。介助の教育は6月中旬には新卒全員が合格した。4月から8月における新卒1人当たりの転倒、転落の事故件数は、平成25年度が1.7件、平成27年度は0.3件だった。このことからも介助方法の研修を臨床にて行うことによる技術力の向上が図れたのではないかと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    対象者に十分な説明を行い,同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

  • 平賀 大貴, 山内 康太, 鈴木 裕也, 岩松 希美, 後藤 圭, 小柳 靖裕, 林 真理, 山本 舞, 平野 郁恵, 海塚 安郎
    p. 40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    ICU入室患者に対して入室早期から積極的にリハビリテーション(以下リハ)を実施するケースが増えており早期離床の取り組みが注目されている.当院では2014年8月からリハスタッフが看護師間の申し送りに参加しICU入室患者の状態や一日の流れの把握,スケジュールの調整,リハが必要な症例の検討に取り組んでいる.本研究の目的はリハスタッフの申し送り参加による効果を検討することである.

    【方法】

    対象は,2013年8月~12月(以下13),2014年8月~12月(以下14),2015年8月~12月(以下15)の各5ヶ月のICU入室3日以上の患者とした.リハスタッフがICUの申し送りに参加開始した14年と15年と取り組み開始前の13年を比較した.評価項目は,リハ開始までの日数,ICUでの実施率,1ヶ月のICUリハ合計単位数,ICU滞在日数, リハ介入症例の死亡率,死亡症例を除く在院日数およびBarthel Index(以下BI)を比較した.統計解析は,名義尺度にX2検定,その他にone way ANOVA,Kruskal-Wallis検定を用い多重比較にTukey法,Steel-Dwass法を使用した.

    【結果】

    対象は172例(男性101例,女性71例,13年57例,14年49例,15年66例,平均年齢78歳)で各年度間に差はない.有意な差を認めた項目として,リハ開始までの日数:13年5.0日,14年3.5日,15年3.0日に短縮,ICUでのリハ実施率:13年61%,14年84%,15年77%と14年以降増加,1ヶ月のICUリハ合計単位数:13年28単位,14年69単位,15年76単位と14年以降増加,在院日数:13年39日,14年37日,15年24日で15年において短縮を認めた.差を認めなかった項目は,3群間のICU滞在日数(中央値):各年度5日,リハ介入症例の死亡率:13年28%,14年27%,15年27%,退院時BI(中央値):2013年80点,2014年50点,2015年60点であった.入院時と退院時の差を入院期間で除したBI利得率(中央値)は13年1.8,14年1.1,15年2.3と15年で高かった.

    【考察】

    近年,早期のリハ介入による有効性が数多く報告されており, ICU専従配置による効果として、処方患者数の増加や理学療法介入時間の増加などが報告されている.また,SchweickertらはPTとOTがICUから積極的に介入することにより,ADL改善のみならず,せん妄の割合や長期的な予後に大きく影響することを報告し急性期からの積極的なリハの有効性を強調している.今回,効果を認めた理由としてリハスタッフがICUの申し送りに参加することで,患者状態や一日の流れの把握によりスタッフ間での時間調整,治療目的の明確化につながりリハ開始日数,ICUにおけるリハ実施率,1ヶ月のICUリハ合計単位数,死亡症例を除く在院日数に有意な改善を認めたのではないかと考える.退院時BIに関しては各群間に差を認めなかったが, 入院時と退院時の差のBI利得率で向上を認めた.向上した理由としてリハ開始までの日数の短縮,ICUでのリハ実施率,単位数の向上が影響しているのではないかと考える.また,当院では2014年より地域包括ケア病棟の設立,2015年にベッドコントロールチームを結成した背景もあり在院日数の短縮につながっていると考えられる.本研究の限界として対象者の重症度を統一し比較していないことが挙げられる.今後はICUにおける統一した早期リハの適応・中止の基準プロトコルを作成しICUにおける患者側,医療資源の効果を検討していく必要がある.

    【まとめ】

    リハスタッフがICUの申し送りに参加することで,リハ開始日数,ICUにおけるリハ実施率,1ヶ月のICUリハ合計単位数,死亡症例を除く在院日数が有意に改善することが示唆された.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得てヘルシンキ宣言に沿って研究を行った. 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,株式,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない.

  • 山﨑 登志也, 出口 直樹, 光安 達仁, 金子 尊志, 平田 翔子, 白瀧 敦子
    p. 41
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    脳卒中片麻痺患者の座位バランスは、ADLと関連がある(Sandinら,1990)とされており、重要な評価項目である。座位バランスの評価は、座位リーチテストが一般的で、前方及び非麻痺側に行い、麻痺側の定量的なバランス能力評価とは言い難い。近年、座位バランスの評価として座圧分布測定器で座圧中心(以下、COP)の移動距離を評価しているものが散見される。光安ら(2016)はCOPの移動距離とFIMとの関連を明らかにしているが、麻痺側及び非麻痺側の影響が強いのか不明であり、麻痺の程度は考慮されていない。そこで、本研究ではCOPの移動距離における麻痺側及び非麻痺側の関係を麻痺の程度の影響を補正して明らかにしたので報告する。

    【方法】

    対象は当院入院中の端座位保持が自立した脳血管疾患片麻痺患者21名(男性10名、女性11名、年齢62.5±14.1歳)とした。コミュニケーション困難な重度の失語症患者・動作遂行の困難な高次脳機能障害患者は対象から除外した。麻痺の程度はBrunnstrom recovery stage(以下、Brs).上肢Ⅱ:6名,Ⅲ:5名,Ⅳ:6名,Ⅴ:2名,Ⅵ:2名、Brs.下肢Ⅱ:1名,Ⅲ:7名,Ⅳ:5名,Ⅴ:5名,Ⅵ:3名であった。COPの計測はSRソフトビジョン数値版(フコク物産)を用いた。足が着かない高さの座面に深く座り、腕を組み左右にバランスを崩さない最大範囲で重心移動を実施。左右の最大到達点の幅を算出(以下、左右)し、静止座位のCOPの位置から麻痺側最大到達点の幅(以下、麻痺側)及び非麻痺側最大到達点の幅(以下、非麻痺側)を算出。体格の違いを考慮するため両大転子の幅で除し標準化し、計測値とした。事前に十分な説明を行い、練習を1回、計測を3回実施。左右と麻痺側と非麻痺側の相関を年齢とBrs.上肢・下肢を制御変数とした偏相関分析にて検討した。有意水準は5%とした。なお統計はSPSS 21.0を用いた。

    【結果】

    計測値の左右は0.49±0.15麻痺側は0.25±0.08、非麻痺側は0.24±0.06であり、FIM-mの合計点は73.7±13.8であった。

    左右、麻痺側、非麻痺側のすべてに有意な相関を認めたFIMの項目は、整容(r=0.77 p<0.00、r=0.52 p=0.03、r=0.61 p=0.01)、上衣更衣(r=0.64 p<0.01、r=0.48 p=0.04、r=0.72 p<0.01)、ベッド移乗(r=0.54 p=0.02、r=0.47 p=0.05、r=0.49 p=0.04)であった。左右、麻痺側のみに有意な相関を認めたのは、トイレ動作(r=0.48 p=0.04、r=0.50 p=0.04)であった。左右、非麻痺側のみに有意な相関を認めたのは、下衣更衣(r=0.51 p=0.03、r=0.47 p=0.05)であった。左右で有意な相関を認めたものの麻痺側および非麻痺側に相関を認めなかったのは、トイレ移乗( r=0.50 p=0.03)であった。

    【考察】

    今回、COP移動距離は歩行などの立位でのADL動作と、食事・清拭・排尿管理・排便管理は座位での重心移動が少ないADLとは関連は見られず、整容・上衣更衣・下衣更衣・トイレ動作・ベッド移乗・トイレ移乗の座位での活動を伴うADLと関連が見られた。その中で左右以外に下衣更衣は非麻痺側と、トイレ動作は麻痺側と関連があり相反していた。また、トイレ移乗では左右のみ関連が見ら、これは麻痺側と非麻痺側でバランスをとる者がいたためと考えられる。つまり座位バランスを麻痺側と非麻痺側に分けて評価することが必要であることを示唆できた。今後は,ADLの自立に関連する因子を明らかにするために症例数を増加し,高次脳機能障害に加え麻痺側・非麻痺側のCOPの影響を回帰分析にて明らかにしたいと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は当院倫理委員会の承認を得た(承認番号:FRH2015-R-029)。対象者への説明は当院倫理規定に基づいた研究説明書、同意書を準備し、十分な説明を行い書面で同意を得た。また本研究による利益の発生は行われていない。

  • 溝添 夕美, 脇本 竜次, 砥板 泰久, 小嶋 栄樹
    p. 42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    HAL(Hybrid Assistive Limb 以下HAL)は、身体機能を改善・補助・拡張できる、世界初のサイボーグ型ロボットである。HAL装着下での訓練実施前後の痺側下肢への荷重量増加や歩行速度向上などの即時的な効果判定についての報告は多いが、歩行速度の変化率に関する報告は少ない。

    当院では平成24年4月からHALを導入し、地域連携として福岡大学病院の患者紹介もあり、現在まで36症例の訓練を実施しその効果検証を行っている。今回脳卒中患者の歩行速度に着目して、HAL実施における、歩行速度の変化率について、得られた結果をもとに報告する。

    【方法】

    対象は当院の急性期、または回復期に入院中であるHAL装着下での歩行訓練を行った脳卒中患者36症例(年齢50~70歳代、脳梗塞18症例、脳出血18症例)。HAL両脚タイプ(CYBERDYNE社・福祉用)を用いた起立訓練および歩行訓練をHAL装着下で1回20~30分として、週に2~3回の頻度で実施。10mの歩行速度をHAL実施前後に測定し、歩行速度の変化率について検証した。検定方法としては、関連多重多群比較として、Tukey検定を用い、HAL実施1回目の実施前後の10M歩行速度からHAL実施9回目に至るまでの10M歩行速度を比較した。P値は0.05とした。

    【結果】

    今回、10M歩行速度のデータを以下のように分類し、結果を述べていく。

    ① HAL1回目実施前の10M歩行速度

    ② HAL1回目実施後~4回目実施前の10M歩行速度

    ③ HAL4回目実施後の10M歩行速度

    ④ HAL5回目実施前の10M歩行速度

    ⑤ HAL5回目実施後の10M歩行速度

    ⑥ HAL6回目実施前~9回目実施後の10M歩行速度

    HAL実施前1回目の10M歩行速度は平均して29.47secであり、①HAL1回目実施前と②HAL1回目実施後~4回目実施前を比較すると、有意差のない結果となった。①HAL1回目実施前と③HAL4回目実施後では有意差が得られる結果となり、③4回目のHAL実施後には平均20.58secへと改善している。その後、①HAL1回目実施前と④HAL5回目実施前を比較すると、有意差は無くなり、④HAL5回目実施前の平均は23.01secであった。①HAL1回目実施前と⑤HAL5回目実施後で比較すると再度、有意差が得られる結果となり、⑤HAL5回目実施後の平均は21.71secとなっている。そして、①HAL1回目実施前と⑥HAL6回目実施前~9回目実施後の比較では有意差が得られる結果となっているが、②HAL1回目実施後~4回目実施前および、⑤HAL5回目実施後と⑥HAL6回目実施前~9回目実施後の比較では有意差が得られない結果となった。

    【考察】

    今回の結果から、HALによる歩行速度の改善に4回の実施を要する結果となり、5回目までのHAL実施では、歩行速度を指標としてHALの効果を検証できることが可能であると考える。しかし、5回目以降のHALでは、歩行速度の変化が得られにくく、歩行速度以外での効果を検証する指標が必要であると考える。そのため今後、5回目以降では歩行速度以外での検査測定項目の追加が必要であることが考えられる。

    【まとめ】

    今回の研究ではHALの歩行速度に限局した検証となったが、HALによる効果として、臨床で我々が目的としているものは、歩行速度のみでなく、歩容、FIM、QOL(quality of life)なども重要である。そのため、HALがもたらす効果をより多面的に、検証していく事が必要であり、セラピストが行う、HALの設定も、より良いHALの効果が得られる設定方法を選出できる技術が必要となる。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    HALを使用するにあたって、本人とご家族にHALの概要、適応、禁忌を含む治療の説明と治療データの使用承諾書の説明を実施し、署名による同意を得た。

  • 岡本 愛美, 田代 伸吾
    p. 43
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    Branch atheromatous disease(以下BAD)における先行研究は多数あるが、リハビリテーション(以下リハ)と関連のある報告は少ない。BAD患者においてはリハ開始後、麻痺の進行、呂律障害など様々な症状が出現することが少なくない。私たちはその些細な変化を見逃さないため、発症早期のリハ介入には、十分に注意を払わなければならない。今回BADと診断され、初診時よりNIHSSが増悪した群(以下、症状増悪群)と、増悪しなかった群(以下、症状非増悪群)の2群間に分け、様々な項目との関連性を調べた為、以下に報告する。

    【方法】

    対象は、2013年2月14日から2015年4月11日の期間に当院に救急搬送され、脳神経外科にてBADと診断された43名の入院患者(男性:21名、女性:22名、平均年齢:73.3±11.1歳)。評価項目は、①年齢、②性別、③高血圧、④喫煙、⑤糖尿病、⑥脂質異常症、⑦在院日数、⑧入院時NIHSS、⑨退院時NIHSS、⑩リハ開始時Brunnstrom stage(以下Br.stage)上肢・手指・下肢、⑪退院時Br.stage上肢・手指・下肢、⑫入院時FIM、⑬退院時FIM、⑭退院時Modified Rankin Scale(以下MRS)、⑮90日後MRS、⑯転帰の16項目とした。統計学的解析はSTATMATE ver.3.18を用いて、2群間において各項目を対応のないt検定にて比較検討した。また、症状増悪の有無との相関も各項目において検討した。いずれも有意水準は5%未満とした。

    【結果】

    対象者43名のうち、症状増悪群は17名(39.5%)、症状非増悪群は26名(60.4%)であった。症状増悪群は平均2.1±1.7病日目で症状増悪をしていた。⑨退院時NIHSS、⑪退院時Br.stage上肢・手指・下肢、⑬退院時FIM、⑭退院時MRS、⑮90日後MRS、⑯転帰において、2群間に有意差を認めた。①年齢、②性別、③高血圧、④喫煙、⑤糖尿病、⑥脂質異常症、⑦在院日数、⑧入院時NIHSS、⑩リハ開始時Br.stage上肢・手指・下肢、⑫入院時FIMにおいては、有意差を認めなかった。また、症状増悪の有無と各項目の相関において、16項目すべてに明らかな相関は認めなかった。

    【考察】

    症状増悪群と症状非増悪群で、入院時NIHSSやリハ開始時FIMにおいて差は認めなかった。しかし、退院時NIHSSや退院時FIMにおいて、症状増悪群の方が症状非増悪群と比べ、有意に低値であり障害が残存しているということがわかった。退院時Br.stage上肢・手指・下肢においても、Stageが低く、ADLに支障を来していると考える。また、症状増悪群において、転帰先も、自宅ではなく回復期病院等への転院が多数を占めていた。これも退院時ADLが低いことが要因として考えられる。先行文献では、BAD患者の機能予後は不良であるということが示されているが、本研究からも、BAD発症後の症状増悪の有無によって機能予後は左右されることが示唆された。症状増悪の有無と各項目の相関において有意差を得られなかったことから、BAD患者は、発症後に症状増悪を予測することは難しいということが言える。現在のところ、症状増悪因子が明確でないため、急性期からBAD患者のリハを開始する際、症状の増悪について注意深く評価を行うことが重要であり、十分なリスク管理を行った上での早期リハが望まれる。

    【まとめ】

    今回の研究で症状増悪因子を明確にすることはできなかったが、症状が増悪すると麻痺やADLの改善に影響を及ぼすことが分かった。BAD患者の発症後の症状増悪は予測が困難なため、より注意深い評価と、十分なリスク管理のもと早期離床を行うことが重要である。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究においての主旨を、症例または家族に説明し同意を得た。なお、収集したデータは匿名化し個人情報管理に十分注意を払った。

  • 上橋 秀崇
    p. 44
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    パーキンソン病(以下PD)における症状を緩和・治療する脳深部刺激療法(以下DBS)は良好な治療効果がおさめられており、手術療法の主流となっています。今回DBS術後の副作用から左下腿三頭筋痙性による足関節背屈制限が著明であり、歩行障害となっているPD患者の症例を経験した。足関節背屈制限による歩行障害に対しての治療介入にて、補高による反射機構調整と認知運動療法により改善が得られたため、以下に経過・考察に関して報告する。

    【症例紹介】

    対象はDBS留置術を行い3W後にリハビリ目的にて入院された症例(性別:女性 年齢62歳)。入院時、周波数130Hz、パルス幅60μs、Hoehn-Yahr重症度分類stageⅢ、UPDRS:33(off57)点、FIM65、左足関節背屈activeROM-40°、passiveROM-40°、下腿三頭筋MAS:3、歩行は平行棒内監視にて左尖足歩行となる。

    【介入戦略と経過】

    パーキンソン病に対する理学療法・可動域訓練を行い、術後3W→8WでDBS電圧0.2→1.1V、FIM65→100点(移動3→4点、ノルディックポール使用)、UPDRS:33 (off57)→23(off29)点と改善するも左足関節背屈passiveROM:-40°→-35°左足関節背屈activeROM:-40°→40°・MAS:3→3。10m歩行25.53秒。

    術後8W→15Wにて、左足関節に対し歩行時の下腿三頭筋の過剰収縮を促さないように踵部への補高5cmを追加。右下肢へは0.7cmの補高にて徐々に調整し最終は2.5cm。DBS電圧1.1→1.6V、FIM100→106(移動4→6点、ノルディックポール使用)、UPDRS:23(off29)→5(off6)点、左足関節背屈passiveROM:-35°→5°左足関節背屈activeROM:-40°→0°・MAS:3→1。左足関節の可動域が改善してくると共に認知運動療法による短軸プラットフォームでの第1段階~3段階による運動・感覚の細分化を行い、筋緊張・自動運動が改善。10m歩行:25.53→12.91秒。術後16Wより外来フォローとなる。

    【結果】

    左足関節背屈passiveROM: 5°activeROM:0°、MAS:1、歩行は修正自立(10m歩行:12.91秒)へと改善。補高無し歩行でも踵接地可能(修正自立)となる。

    【考察】

    DBS術後副作用の痙性による筋緊張・可動域は5W経過しても著変無し。日常生活における尖足での生活がより下腿三頭筋への収縮を惹起している状態で伸張反射も発生しやすい状況となり、神経回路の興奮レベルにて持続収縮しやすい。よって関節の不動状態が続き可動域制限の要因となっている。反射は協調された非随意の運動反応であり、末梢の受容器に刺激が与えられることで始まる。そこで踵部に補高を行うことにより、歩行時におけるイニシャルコンタクト(IC)で踵接地を促し、伸張反射の抑制、踵部からの感覚入力と共に前脛骨筋の遠心性収縮、よって相反抑制による下腿三頭筋の弛緩が生み出されたと考える。体性感覚受容器からの感覚情報からの脊髄反射での調整を行った後、上位中枢からの下行性指令の可塑的変化のため認知運動療法を行い、随意的な運動が向上したことでより脊髄反射経路の伝導の性質を修正し、反射機構のバランスが安定し可動域改善に繋がったと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づいて、対象者の個人情報の保護に留意し、当院での倫理審査にて承認を得て実施し、対象者に説明と同意を得た。

  • 長野 毅, 堺 裕
    p. 45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    基本的動作が一つでも障害されると、日常生活活動に支障を来すので、理学療法士は担当患者の一連の基本的動作能力を把握する必要がある。しかし、これまでの基本的動作に関する研究は、歩行か起立動作に関した報告が多く、寝返り・起き上がりも含めた一連の動作の関連性を検証した研究は少ない。基本的動作の一連の関連性が理解出来れば、一つの動作能力の改善のみでなく、他の動作能力の改善も視野に入れながらの介入が行え、より効率の良い介入が可能になると考えられる。

    本研究の目的は、脳卒中片麻痺(片麻痺)患者の歩行自立度と麻痺側運動機能、起居動作自立度及び起居動作遂行時運動機能の関連性を検証することである。

    【方法】

    対象は、2施設で理学療法を受けている片麻痺患者のうち、本研究の目的を説明し同意が得られた45名であった(骨関節疾患、神経難病、高次脳機能障害を呈している方は除外)。方法として、対象者の歩行の自立度を0点(困難)~10点(屋外独歩レベル)で、起居動作の寝返り、起き上がり、起立の自立度をそれぞれ、0点(困難)~8点(自立)で点数化した。麻痺側運動機能はBrunnstrom stage(BRS)にて評価し、起居動作遂行時の運動機能は、機能的片麻痺起居動作評価表(FAHB)を用いて点数化した。FAHBは、26項目31点満点である。内訳は、非麻痺側方向への寝返り6項目8点、非麻痺下側臥位からの起き上がり動作8項目8点、端座位からの起立動作12項目15点である。各項目は起居動作を構成している頭頸部・体幹・骨盤・麻痺側上下肢の運動性(運動方向)を観察にて判定し、判定には具体的な観点を設け、2~3段階で採点する。これまでに、FAHBの信頼性(検者間信頼性及び基準関連妥当性)は検証されており、良好な結果が得られている。統計学的処理は、対象者の歩行自立度と上下肢BRSそして起居動作自立度、FAHBの総得点と各動作点数及び各26項目との関連性についてSpearman順位相関係数を用いて検証した。統計ソフトはSPSS Ver22.0を使用し、有意水準は5%未満とした。

    【結果】

    対象の内訳は、脳出血:28名、脳梗塞:16名、くも膜下出血:1名、右麻痺:25名、左麻痺20名、平均年齢:62.2±11.2歳、平均罹患期間:21.6±46.4ヶ月であった。左片麻痺者と右片麻痺者の間には、上下肢BRS、歩行自立度、起居動作自立度、FAHB各点数に有意差はなかった。歩行自立度と有意な相関が認められたのは、上・下肢BRS(r=0.58・0.54)、起居動作自立度(r=0.83)、FAHB総得点(r=0.71)、FAHB起立点数(r=0.64)、FAHB寝返り点数(r=0.51)及び起き上がり点数(r=0.53)であった。歩行自立度とFAHB各項目では、26項目中23項目が有意な相関であった。

    【考察】

    歩行自立度と麻痺側運動機能、起居動作自立度、起居動作遂行時運動機能との関連性を示した。特に、歩行自立度は寝返り・起き上がり時の麻痺側上下肢の運動の他、頭頸部と体幹の回旋や屈曲運動ともかなりの相関であった。寝返り・起き上がり時の頭頸部の運動は歩行に必要な立ち直り反応と密接に関係しており、体幹は四肢運動の基盤となる。よって、歩行自立度の観点から、ただ起居動作が出来れば(自立していれば)良いのではなく、各関節・部位の運動に着目し、寝返り・起き上がり・起立そして歩行へと一貫した介入の必要性が示唆された。

    【まとめ】

    歩行自立度と麻痺側運動機能、起居動作自立度及び起動作遂行時運動機能との関連性が確認された。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は当法人の倫理委員会の承諾を得て行い、対象者には本研究の目的を説明し同意を得た。また、利益相反に関する開示事項はない。

  • 上戸 杏子, 松田 拓朗, 小谷 尚也, 吉村 ゆかり, 塩田 悦仁
    p. 46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【はじめに】

    抗NMDA受容体脳炎は,2005年にDalmauらによって最初に確認された.抗NMDA受容体脳炎に関連した先行研究には症状,新生物関連,免疫治療,長期的予後といった神経精神学的な報告は散見されるが,本疾患の病態は未だ不明であり,発症後の運動機能や能力の変化,理学療法に関する報告は極めて少ない.

    本症例は腫瘍随伴しない抗NMDA受容体脳炎を呈した症例であり,理学療法介入に伴い経験した特異的な病態や臨床像,治療過程で得られた評価指標などに関して考察を含め報告する.

    【症例提示】

    20代男性,大学生.主訴:異常行動,不明言動,左顔面・両手のつっぱり,熱発,食欲不振,不眠.

    【経過】

    不明言動,異常行動,てんかん重積発作,中枢性低換気等の前駆症状を認め緊急入院,人工呼吸器管理となった.

    理学療法は第11病日より開始.筋緊張著明に亢進し,鎮静中であるが顔面・四肢にジスキネジア様の不随意運動を認めた.GCS E4,VT,M1.人工呼吸器管理下.ADL全て全介助. 第52病日に抗NMDA受容体脳炎抗体陽性,確定診断.第104病日:呼びかけに対する開眼,追視を認めた.第115病日:従命可能,徐々に筋力訓練を開始.第126病日:人工呼吸器離脱.第130病日:端座位から基本動作訓練開始.第137病日:歩行訓練開始.GCS E4,V4-5,M6.両足関節背屈5°.MMT 3?4.深部覚鈍麻.ロンベルグ徴候陽性.基本動作要介助.ADL介助を要しBarthel index 25点.第150病日:独歩可能.GCS E4,V5,M6.理解良好,表出言語にて可能.ROM制限なし.四肢・体幹MMT5.基本動作・ADL自立.Barthel Index 100点.ロンベルグ徴候陰性となったものの動揺著明であり下肢・体幹回旋.

    【結果】

    意識レベル改善後,ROM,筋力,バランス等身体機能は徐々に向上を認めた(ROM:両足関節背屈 0°→ 10°,筋力:四肢MMT 3?4 → 5,バランス:ロンベルグ徴候 陽性 → 陰性).協調性はわずかに拙劣さが残るものの,日常生活に問題がない程度まで回復した.深部覚は個別検査上正常であったが,閉眼立位時に著明な下肢・体幹の回旋がみられ,重心動揺検査でも動揺が著明であった(開眼時外周面積:3.42?, 閉眼時外周面積:40.3?, ロンベルグ率:11.8).

    【考察】

    抗NMDA受容体脳炎は,意識レベル低下を認め人工呼吸器管理下となる重篤な症状を呈するが,長期予後は良好と報告されている.そのため意識レベル改善後,早期離床,早期社会復帰を目指すために,早期からの理学療法介入が必要であり,更に本疾患は多彩な臨床症状を呈するため病期に即した運動療法の実施が必要である.

    本症例において運動機能は向上を認めたものの,閉眼時のバランス能力においては著明に障害され,容易な回復を認めなかった.20代前半の健常者の閉眼時の外周面積は2.41?,ロンベルグ率は1.59と報告されている.同年代のデータと比較し,本症例のロンベルグ率は極めて高値であったことから,バランス能力に対する理学療法アプローチをより早期かつ高頻度での介入を実施すべきであったと考える.

    【まとめ】

    腫瘍随伴しない抗NMDA受容体脳炎患者の閉眼バランス障害のみが著しく残存した症例であった.開眼時のみならず閉眼時バランス機能改善を考慮した積極的な理学療法介入が必要であると考えられる.今回の報告が今後の本疾患に対する理学療法の一助になると考える.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究は,ヘルシンキ宣言の倫理規定に準拠し,個人情報の取り扱いに配慮し,患者の同意を得て実施した.

  • 中原 寿志, 竹内 亨, 大竹 英次, 田上 茂雄, 柚木 直也
    p. 47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    経皮的電気刺激療法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:以下TENS)はゲートコントロール理論(Gate Control Theory:以下GCT)と内因性オピオイド(以下:オピオイド)放出などによる疼痛管理を目的とし、非侵襲的で副作用がほとんどない比較的安全な手段として臨床でも多用されている。脳卒中後の肩関節疼痛(Post Stroke Shoulder Pain:以下PSSP)は臨床上、高頻度で経験する機能障害の一つで、Lindgrenらは、PSSPの発生率は約30%と報告している。PSSP改善に有効な治療手段の報告は少なく、臨床的に非ステロイド性抗炎症薬(Non steroidal anti-inflammatory drugs:以下NSAIDs)を服用することもあるが、長期服用では副作用の影響が問題となる。今回、PSSPを呈する症例に対し鎮痛に向けたTENSを、GCT・オピオイド放出の鎮痛メカニズムを最大限に反映させた方法で介入効果を検証した。

    【方法】

    症例は、脳出血発症後2か月経過し右片麻痺を呈する70歳代女性。麻痺側上肢機能はBrunnstrom Recovery Stage(以下BRS)Ⅱで、Fugl Meyer Assessment(以下FMA)上肢6点であった。安静時に肩関節~上肢にかけて疼痛の訴えが強く100mmVisual Analog Scale(以下100mmVAS):71mmであった。今回はABデザインを採用し、A期を通常理学療法期(以下:コントロール群)、B期を電気刺激期(以下:介入群)とし、各期は2週間と設定した。疼痛評価は100mmVASを用いて、毎回の介入前(以下Pre)・介入後(以下Post)で評価を実施した。電気刺激はESPURGE(伊藤超短波社製)を使用し、刺激パラメータは周波数1~250Hzの変調モード、パルス幅100?s、電極貼付部位をC5/6/7/8/Th1のデルマトーム上に設定した。

    統計学的解析は対応のあるt検定を用い、すべての統計解析はR commander version2を使用、統計学的な有意水準は5%未満とした。

    【結果】

    2群間の変化量はコントロール群が4.2±9.67mm、介入群が40.6±17.91mmと介入群で鎮痛効果が認められた(p<0.05)。Pre-Postの比較では、コントロール群ではPre46.3±20.65mm-Post41.3±17.05mm(p>0.05)と差が認められなかったが、介入群ではPre58.4±22.47mm-Post 17.8±7.91mm(p<0.05)と顕著な差が認められた。

    【考察】

    TENSによる鎮痛メカニズムとしてGCTとオピオイド放出の関与が重要であると報告されている。TENSによるAβ線維への選択的な刺激で疼痛伝達系のゲートが閉ざされ、疼痛伝達線維のAδ線維・C線維が遮断されGCTが成立する。今回、肩~上肢にかけての神経支配領域を考慮してC5/6/7/8Th1のデルマトーム上への電極貼付がGCTの成立に影響したと考える。また、周波数によって異なるオピオイドが放出されることを利用し、周波数を1~250Hzで変調させることで、より多くのオピオイドが放出され鎮痛に至ったと考える。TENSは、疼痛管理の視点から長期間使用しても副作用は比較的少なく非常に安全で有効な手段である。TENSでPSSPによる二次的障害(不動・拘縮・疼痛悪化)に対して疼痛管理することで、即時的な鎮痛効果だけでなく長期的な上肢機能改善や、NSAIDsの減薬にもつながり、より安全で効果のある理学療法を展開していく一助になり得る可能性があると考える。

    【まとめ】

    PSSPに対して、TENSによる鎮痛を試みた。TENSがPSSPの疼痛管理として確立されれば、疼痛出現を最小限に抑えられることや、更なる上肢機能向上など長期効果につなげられる可能性が広がる。

    なお、本研究は宮崎県理学療法士会の助成を受けて実施した。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究を行うに当たり、ヘルシンキ宣言を遵守し、対象には本研究の目的・内容について十分な説明を行い、同意を得た。

    開示すべき利益相反はなし。

  • 久保田 勝徳, 遠藤 正英, 脇坂 成重, 川﨑 恭太郎, 玉利 誠, 猪野 嘉一
    p. 48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    拡散テンソル画像(以下,DTI)を用いて,中脳大脳脚(以下,大脳脚)の拡散異方性の値(以下,FA値)や非病巣側に対する病巣側のFA値の比(以下,FA比)を算出することで,大脳脚のワーラー変性を検出することができる.また,錐体路のワーラー変性の程度から運動機能の予後を予測できる可能性も示唆されており,これまでにも亜急性期から慢性期まで1~3ヶ月毎に経時的に調査した報告が散見されるが,週間単位で調査した報告は見当たらない.脳卒中患者は回復期において運動機能が著しく回復する者も多いことから,大脳脚のFA比と運動機能との関連を週間単位で調査することにより,より詳細な予後予測や回復期リハビリテーションの効果検証に寄与する可能性があると考える.今回,視床出血患者1名を対象に,2週間毎に大脳脚のFA比を算出し,運動機能との関連を調査したため報告する.

    【方法】

    対象は70歳代の男性.左視床出血と診断され,保存的治療を行った.発症翌日より理学療法を開始し,入院時Brunnstrom recovery stage(以下,B.R.S)は上肢Ⅰ,手指Ⅰ,下肢Ⅰ,起居動作は軽介助,起立・歩行は全介助であった.47病日にリハビリテーション目的で当院へ転院となった.症例に対して,入院翌日,2週間後,4週間後にStroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS),National Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)(麻痺側運動機能のみ),B.R.Sを同一検査者が計測した.また,同日に1.5TeslaのMRI装置(GE社製)を使用し,撮像(Single shot EPI,スライス厚5mm,FOV240×240mm,画素128×128,b値=1000,MPG傾斜磁場15軸)を行った.その後,AZE社製のAZE VirtualPlaceを使用し,大脳脚を関心領域として,病巣側および非病巣側のFA値とFA比を算出した.FA値は,ワークステーションの操作に精通した検者1名がそれぞれ3回ずつ計測し,平均±標準偏差を算出した.

    【結果】

    入院翌日のSIASは45点,NIHSSは4点,B.R.Sは上肢Ⅱ,手指Ⅳ,下肢Ⅰ,FA値は病巣側0.42±0.01,非病巣側0.48±0.02,FA比は0.88であった.また,座位保持は軽介助,起立・歩行は長下肢装具を用いて全介助であった.2週間後のSIASは50点,NIHSSは2点,B.R.Sは上肢Ⅲ,手指Ⅳ,下肢Ⅲ,FA値は病巣側0.41±0.02,非病巣側0.48±0.02,FA比は0.84であった.また,座位保持が自立であった.4週間後のSIASは58点,NIHSSは1点,B.R.Sは上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ,FA値は病巣側0.42±0.01,非病巣側0.47±0.01,FA比は0.87であった.また,歩行は長下肢装具を用いて軽介助であった.

    【考察】

    本症例では,運動機能の回復過程においてFA比の著明な低下を認めなかったため,リハビリテーションによって運動機能が回復したとともに,大脳脚のワーラー変性が予防された可能性が考えられる.一方で,脳卒中患者の運動機能の回復には多数の運動関連領野の機能的代償や再編が関与することも知られていることから,今後も週間単位での調査数を増やしつつ,機能回復過程における大脳脚のFA比の経時的変化と運動機能との関係についてより詳細に検討していく必要があると考える.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た(承認番号:2015032304)。 また研究を実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

  • 竹内 亨, 中原 寿志, 田上 茂雄, 柚木 直也
    p. 49
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
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    【目的】

    脳卒中片麻痺患者の歩行時の反張膝に対して、一般的に短下肢装具を使用することで足関節背屈を矯正し立脚期に下腿前傾を促すともに、アライメント改善を図るアプローチが行われる。しかし、短下肢装具を使用することは代償的手段に過ぎず、股関節伸展運動と随意的な足関節背屈の改善に繋がりにくい。また、山下らは、装具への不満について外観が悪いが最も多く、次いで痛い、重い、冷たいの順であったと報告しており、臨床的に装具の受け入れは、必ずしも良好とは言えない。そこで、Functional Electrical Stimulation(以下FES)を使用し、立脚期まで持続的に刺激を入力することで膝制御の再学習が図れるではないかと考えた。今回、麻痺側下肢立脚期での膝制御の再獲得を目的に、FESによる足関節背屈刺激と課題指向型練習を併用し、歩容改善が見られたので報告する。

    【方法】

    症例は、脳梗塞発症後2週間経過し、右片麻痺を呈する60歳代男性である。麻痺側下肢の立脚期に、体幹前傾・股関節屈曲位の後方重心姿勢をとり、立脚中期(Mid Stance:以下MSt)から立脚終期(Terminai Stance:以下TSt)にかけ、膝関節で過伸展傾向(最大6.5°)が見られた。麻痺側下肢機能はBrunstrom Recovery Stage(以下BRS)Ⅲで、Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)下肢は22点であった。歩行評価は、10m歩行速度(歩数)、Timed up and Go Tset(以下TUG)の測定と矢状面で撮影した動画を各周期の静止画に分割し、ImageJを使用した2次元解析を用いた。課題指向型練習は、非麻痺側下肢のステッピング練習(麻痺側立脚期時)と2動作前型での平地歩行とし、FESを併用して反復練習を実施。電気刺激は、ESPURGE(伊藤超短波社製)を使用し、刺激パラメータは周波数10Hz、パルス持続時間500μs、持続的に総腓骨神経-前脛骨筋へ運動闘値で刺激した。3週間の介入前後で角度、歩行スピード、歩幅で比較した。

    【結果】

    介入前後(介入前→介入後)において、歩行中の膝関節屈曲角度(平均値)が麻痺側MStで10.08°→11.16°、TStで1.46°→10.76°と変化し、麻痺側股関節屈曲角度においても、MStで24.04°→14.36°、TStで18.28°→9.5°と改善が見られた。BRSでⅤ、FMA下肢は27点となり、10m歩行は、32.75秒(40歩)→12.45秒(18歩)、TUGは27.63秒→14.92秒と改善を認めた。

    【考察】

    今回の結果から、麻痺側足関節背屈の随意性向上、反張膝改善、歩行スピード向上、歩幅の拡大が認められた。久保田らは、FESと運動療法の併用介入によって、短期的に脳賦活パターンの変化が生じたことを報告している。本症例では、麻痺側MStからTStにかけて膝関節が過伸展傾向であった。そこで、FESと麻痺側立脚期のステッピング練習と2動作前型での平地歩行練習の課題指向型練習を併用した。その結果、麻痺側下肢の振り出しと股関節伸展時の足関節背屈運動が反復され、麻痺側足関節背屈の随意性の改善に繋がったと考える。また、麻痺側立脚期のMStからTStにかけての前方への重心移動が容易となり、反張膝の改善が図れ、歩行スピードの大幅な改善と歩幅の拡大につながったと示唆される。

    【まとめ】

    脳卒中片麻痺者に歩行中膝制御の再獲得を目的に、課題指向型練習とFESの併用介入を行った。麻痺側下肢の随意性向上、反張膝の改善が見られ、歩行速度、歩幅の顕著な改善が認められた。今回のFESは、麻痺側足関節背屈への持続的な刺激であり、Push offが困難であった。今後はPush offへ繋がる介入の検討も必要である。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究を行うに当たり、ヘルシンキ宣言を遵守し、対象には本研究の目的、内容を十分に説明し同意を得て介入した。

    開示すべき利益相反はなし。

  • 瀧口 裕斗, 石丸 智之, 後藤 早弥華, 野田 喜寛, 相間 知子
    p. 50
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    脳卒中は再発し易く、その年間の再発率は約5%と言われている。また、10年間で約半数の患者が再発するという報告もある。再発すると一度目の発症よりも重症となることが多く、新たな後遺症が加わるので、これを防ぐことは非常に大切である。脳卒中の再発予防には健康管理や運動習慣や食生活などの生活習慣の改善が重要となることが知られているが、当院の前年度の退院時指導率は23%と非常に低かった。今回、指導率の向上を目標に看護師、薬剤師、管理栄養士と協力し、各専門分野での脳卒中再発予防に向けたパンフレットを作成し、患者、その家族へ指導を行った。

    【方法】

    対象は、取り組みを開始した2015年8月1日~2016年1月31日までに当院の脳神経外科、脳神経内科病棟に入院した脳卒中または脳卒中関連疾患の患者で、自宅退院が決定した89名(男性56名、女性33名)とする。平均年齢は69.1±14.5歳、疾患の内訳は脳梗塞66名、脳出血12名、くも膜下出血6名、一過性脳虚血発作5名であった。退院時のBarthel Indexの平均値は95点であった。尚、今回の取り組みについて、個人情報の保護など倫理的な配慮について全ての患者に説明を行い、同意を得た。

    退院が決定した患者に対して各職種で個別に作成したパンフレットを使用し、患者本人または患者の家族に指導を行う。最後に各職種のパンフレットを1冊のファイルにまとめ、患者本人または患者の家族に手渡すこととした。介助が必要な状態で自宅退院が決定した患者、その家族に対しては併せてADL指導も実施した。今回は、指導率の比較を行うため、2014年8月1日~2015年1月31日までに自宅退院した脳卒中患者への退院時指導率を後方視的にカルテより調査した。

    【結果】

    2015年8月1日~2016年1月31日までに自宅退院した脳卒中患者の総数は89件であった。その内、退院時指導を実施した件数は87件であり、指導率は98%と前年度と比較して大幅に向上した。

    【考察】

    今回の取り組みにて、退院時指導率は大幅に向上した。また、それに伴い退院時リハビリテーション指導料の算定率も向上した。前年度の退院時指導率は低く、これはセラピストの再発予防に対する意識の低さ、他職種との連携不足が問題点として考えられた。そこで、セラピスト1人1人が再発予防指導の意識を持つこと、他職種との連携、対象者に質の保たれた指導を徹底すること目標とした。今回の取り組みは、パンフレットを作成し指導の質の均等、効率化を図るのみでなく、毎朝リハビリカンファレンスを設置し、退院時指導対象患者や指導内容の確認、セラピストの意識向上を図った。加えて、他職種とも密に連携を取り、実施状況の確認を行うことで指導漏れの防止に努めた。以上の結果、指導率を向上することが出来たと考える。

    今後は、運動指導の理解度や運動の習慣化などの前後評価、再発因子の分析などが不十分であるため、運動指導の効果判定、指導内容・方法の再検討に焦点を当てて検証していきたいと考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    今回の取り組みについて、個人情報の保護など倫理的な配慮について全ての患者に説明を行い、同意を得た。

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