九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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腰椎変性側弯症に対する広範囲矯正固定術術後患者の理学療法を経験した一症例
*宮崎 雅司*藤川 寿史*下村 珠美*増田 誠*田丸 智章*榊間 春利*井㞍 幸成
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p. 187

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抄録

【目的】

腰椎変性側弯症は、近年高齢社会の影響により増加している。またそれに伴う疼痛やしびれが問題となる患者も増加し、保存療法では改善せず手術適応となることも多い。その術式は、Instrumentation用いた、神経学的責任病巣に限局した除圧・固定術(short fusion)や隣接椎間障害を考慮した広範囲矯正固定術(long fusion)などが行われている。しかしその術後患者に対する理学療法の報告は少ない。今回広範囲矯正固定術後患者に対する理学療法を経験したため、若干の知見とその経過について報告する。

【症例紹介】

70代女性 診断名:腰椎変性側弯症 主訴:寝返りしたり歩いたり、動くと腰が痛くなる 現病歴:以前より腰痛あり術前1年前より腰痛増悪、当院受診。保存療法にて10か月経過も改善なく手術施行(Th10-L5広範囲矯正固定術)。術後早期より理学療法開始。術後21日目に他院転院。術後71日目より外来理学療法開始。術前の疼痛は改善するも、基本動作や歩行中に腰背部痛が継続、運動プログラムの変更にて改善。合併症:高血圧 既往歴:特になし 疼痛:腰背部 VAS:術前70㎜→外来開始時30㎜(歩行時)→術後4か月後0㎜ 感覚検査:術前より異常なし SLR(°):術前70/65→外来開始後4ヵ月後75/70 ハムストリングス、股関節内転筋群に短縮+ MMT:体幹屈曲4 伸展3 股関節屈曲4/4 外転4/4 伸展3/3 姿勢評価:立位(術前)前額面:著明な左凸側弯、骨盤右挙上、肩甲骨左内転・下方回旋、重心右側偏移 矢状面:頭部前方偏移、上部胸椎後弯、下肢軽度屈曲位 (術後)矢状面:頭部前方偏移と上部胸椎後弯+、下肢屈曲位改善 Cobb角:術前26.3°術後6.4° ADL:Bathel Index:術前 95点 術後100点 JOAスコア:術前12点→退院時13点→外来開始時17点→5カ月後23点

(運動療法経過)理学療法開始時より、寝返りや歩行に伴う腰部の疼痛強い。理学療法行うも改善乏しい。術後は、ROMex、リラクセーション、腹圧トレーニング、ADL基本動作練習、歩行練習実施。外来理学療法では、下肢ROMex、下肢筋力増強運動、腹圧トレーニングを中心に実施も疼痛残存。荷重時の頭部前方偏移と上部胸椎後弯による矢状面のアライメント不良が疼痛の原因と考え、筋再教育運動(体幹伸展)、立位バランス練習を追加することで術後4ヵ月頃より疼痛が改善した。

【考察】

本症例は、術後に術前の疼痛は改善したが、動作に伴う腰背部痛が出現し、外来にて理学療法を継続した。広範囲矯正固定の術後成績は、近年Instrumentationの発展により向上している。特に矢状面でのアライメント改善が術後成績に影響するという報告や、術後長期経過において腰椎前弯角が減少するという報告など、術後成績関する要因が報告されている。本症例も術後側弯の矯正が得られたが、腰背部の脊柱起立筋群の疼痛と思われる疼痛が見られ、股関節伸展と体幹伸展筋力の低下による立位時の体幹屈曲と下肢屈曲姿勢が影響していると考えられた。よって矢状面のアライメントの改善を目的に頚部伸展と上部体幹伸展、股関節伸展の筋再教育運動と立位バランス練習を実施し疼痛改善がみられ、広範囲矯正固定術後患者に対し矢状アライメント改善目的の運動は有効であると考えた。

【まとめ】

腰椎変性側弯症患者に対する術後理学療法を経験した。術後残存する動作時の腰背部痛に対し体幹伸展運動を実施したところ疼痛の改善がみられた。今後の腰椎変性側弯症患者に対する術後理学療法確立の一助になると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

症例には本報告の趣旨を十分に説明し,同意を得た。また利益相反による開示事項はない。

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