九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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GPSを用いた屋外活動計測の有用性に関する予備的検討
Heat mapによるイベント推定と速度変化によるイベント識別について
*溝田 康司
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キーワード: GPS, GIS, 身体活動
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p. 219

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抄録

【目的】

軍事目的で開発された全地球測位システム(Global Positioning System 以下GPS)が2000年に制限解除され、測位精度が格段に向上、小型化が進む中で、GPS内蔵スマートフォンによるヘルスプロモーション、健康産業、医療・保健・福祉への応用は日進月歩にある。

近年、加速度計と連動し屋外を中心とした身体活動計測の有用性検証が、アメリカやオーストラリアを中心に精力的に進められている一方、日本国内における研究は少ない。

今回Garmin社製 ForeAthlete 620Jを用い、GPS単体で屋外における活動とその識別が可能か予備的検証を試みたので報告する。

【対象と方法】

 データ計測対象は男性1名(53歳)、研究者当人とした。また、協力者1名が、安全性確保の観点から、2回の検証実験のうち乗用車運転を伴う1回に同行した。

 計測には腕時計型GPS(Garmin社製 ForeAthlete 620J)を用いた。測位は毎秒設定とし、動作停止時のポーズ機能は解除した。屋外活動の検証は、①約5kmの計測路を設定し自由歩行から速走行まで速度を任意に変化させた活動、②日常生活で一般的な買物活動を想定し、往復約3.5kmの計測路を設定、出発点から乗用車を利用しショッピングセンターまで移動、店内で一定時間経過後、出発地点に戻る活動、の2つのパターンで行った。

計測データは、Garmin社が提供するWeb application“Garmin connect”へ一旦取り込み、分析用PCへ、更にフリーウェアGolden Cheetah ver3.3を用いて、CSVファイルとして書出し、速度、加速度等の処理後、地理情報システムオープンソース・フリーウェアQGISにインポート、Heat map処理によるイベント推定と速度変化によるイベント識別のための視覚化を行った。また、速度については1.5m/sを歩行、走行(乗用車)の識別境界とし、Heat mapには速度による重み付けを行った。

【結果】

任意に速度を変化させた歩行及び走行活動については、平均速度2.1m/sで、段階付けを行うことにより、低速歩行(0.5~1.00m/s)、高速歩行(1.0~1.5m/s)、低速走行(1.5~2.0m/s)、中速走行(2.0~2.5m/s)、高速走行(2.5m/s以上)と識別が可能で、また、Heat mapでは信号待ちによる滞留識別(0~0.5m/s)が可能であった。

乗用車を利用したショッピングセンターへの買物活動では、速度重み付けによるHeat map及び速度1.5 m/sを識別境界に用いることで、車使用区間、曲がり角や交差点による減速が識別可能で、ショッピングセンター内活動については、屋内におけるGPS測位限界からピンポイントの識別は不十分であったものの、歩行による買物活動の推定は可能であった。

【考察】

今回GPS単体から取得したデータを用い、GISソフトを利用し速度及びHeat map処理によるGPSデータ滞留の視覚化をもとに屋外活動の識別を行った。その結果、屋外活動では歩行、走行についてはある程度その様態まで識別可能であったが、屋内活動を伴う買物行動については、店内活動時のGPS測位の問題から、識別自体が推定のレベルであった。今後の課題と言える。

近年、Sedentary Behavior(座位行動)とPhysical Activity(身体活動)が健康に及ぼす影響に関心が集まりつつある。屋外を含めた生活空間における生体モニターと連動したGPSの活用は、今後理学療法における身体活動の評価計測機器として極めて有用なツールとなると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

研究協力者については、口頭にて研究方法、内容を説明し同意を得た。また本研究においてはメーカー等からの謝金や研究費は一切受けておらず、開示すべき利益相反はない。

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