九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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当院における管理職研修の現状と今後の展望
*有村 智美*有川 敏成*橋口 伸吾*川越 一慶*山口 燿司
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p. 37

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抄録

【はじめに】

当院リハ科は約40名のスタッフで構成され、その2/3が経験10年目未満のスタッフである。平成25年4月院内の組織再編に伴いリハビリテーション(以下リハ)科に5名の管理職(課長、病棟主任2名、外来主任、在宅主任)が配置されることとなり、手探りでの管理業務が始まった。日々試行錯誤を繰り返すうち組織の管理運営方法を学びたいとの思いが強くなり、平成26年6月からその手法を学びながら様々な取り組みを行なってきたので、これまでの経過と若干の展望を加え報告する。

【方法】

リハ科管理職スタッフ3名(課長、病棟主任)が、月に2回4時間を管理職研修の時間として充て、外部より1名の指導者を招へいして指導を受ける。新たに掲げた『リハ科目標』達成に向けて各スタッフに役割分担を課すなどスタッフ教育を実践したり、リハ科の問題点を助言を受けながら解決することを経験したりするなどして管理運営のあるべき姿を学んでいる。

【経過】

まず、業務遂行にあたり必要となる『リハ科の理念』を、病院の理念を前提として、スタッフ全員の提案から投票を経て決定し、リハ科として“こうありたい”という考え方を統一した。さらにBSC(バランスト・スコアカード)を使用し「財務の視点」「患者様・ご家族の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」に当院独自の「職員の視点」を加えた5つの視点から問題点を整理して『リハ科管理実践計画書』を策定した。その中の『リハ科目標』達成に向けて戦略を立て、まずは「業務プロセスの視点」からアプローチを開始した。患者様の最終目標を共有し、その達成に向けた各療法の中期目標や評価結果を互いに理解し合い、より効果的なリハプログラムを提供するという当たり前のことを確実に実施するために『リハ効果判定評価表』を作成、担当者間で週1回以上のカンファレンスも義務付けた。併せて、経過記録の中に各療法の短期目標とプログラム内容を記入する欄を追加し、新しい書式を作成した。それらの記録を各病棟主任が内容確認し、1ヶ月ごとのリハ効果を判定している。

その他の視点においては、毎日のリハ予定単位数と実績単位数を集計し、その差を個別に分析(「財務の視点」)したり、患者様に退院時『リハビリ満足度調査』への回答を依頼し、必要に応じ回答結果を担当セラピストへフィードバックしたりする(「患者様・ご家族の視点」)など並行して行っている。

これらの『リハ科管理実践計画書』に沿った主な取り組みに加え、その時々に発生した懸案事項に対し解決の助言を受けて検討を重ね、管理運営の観点から当院リハ科として最善と思われる方法を実践する形で研修を継続している。

【展望】

リハ組織における管理職者の役割とは①業務遂行と改善②部門目標の達成③人材育成であると考える。今回このような研修の機会を得て、これまでの臨床経験の中でリハに関する専門的技術は懸命に身に着けてきたが、組織の管理運営の方法について学んだことはなく、これらの役割を果たすためのスキルは持ち合わせていないことを自覚した。

今後当院においては、患者様へ提供するリハの質を更に向上し、スタッフにとって働きやすい環境を保持するためにも、管理職研修で学んだ知識、技術に基づいた管理運営手法を駆使し、繰り返し実践していく必要がある。また、これらの取り組みに経験の浅いスタッフにも参加を促し、早い時期から管理運営の考え方に触れることで属する組織の理解を深め、管理職者としての観点も育てていけるのではないかと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本報告の計画立案に際し、事前に当院倫理審査委員会の承認を得た(承認日平成28年4月25日)。

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