九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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急性期放線冠梗塞患者における拡散強調画像を用いた機能予測
*山口 雄介*末永 陽祐
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キーワード: 脳梗塞, 拡散強調画像, 予測
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p. 4

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抄録

【目的】

急性期脳梗塞の拡散強調画像(以下:DWI)は細胞性浮腫を最も早期に検出できることから診断及び機能予測、治療方針の決定において多く利用される。これまでに急性期の画像所見から症状増悪の傾向を辿るBranch atheromatous disease(以下:BAD)に関する機能予測に関する報告は多くみられる。近年では、拡散テンソル画像を用いた残存機能の予測に関する報告が多く、脳の構造画像を用いた予後予測の精度が高まっている。しかし、臨床場面において脳画像と臨床所見との乖離があるなどの課題もあるため、画像から得られる情報を整理し、他の医学的情報や臨床所見も踏まえた機能予測を行なうことが重要である。そこで、急性期DWI画像から病巣位置と機能障害との関係を調査し、画像所見と臨床所見において機能的乖離がみられた症例の特徴を明らかにすることを目的とする。

【方法】

対象は当院に平成27年1月から平成28年3月に入院した放線冠を含む脳梗塞を発症した患者42名(平均年齢75±12歳、男性24名、女性18名)とした。運動機能の評価として入院時のBrunnstrom-recovery-stage(以下:BRS)、を用い、対象者のうち上下肢それぞれに対してBRSⅢ以下を重症群、BRSⅣ以上を軽症群に分類した。画像所見は、入院後1週間以内に撮影されたDWIの傍側脳室体部レベルのスライスを用い、梗塞巣面積及び体積と病巣位置を計測した。梗塞巣面積は傍側脳室体部レベルにおける面積を計測し、梗塞巣体積はABC/2法にて便宜的に算出、病巣位置は病巣中心から側脳室後極との距離(CP)と側脳室前極から後極との距離(AP)との比(CP/AP)を用いた。解析は梗塞巣面積と体積及びCP/APのそれぞれを各群における平均値を比較した。統計解析はMann-WhitneyのU検定を行ない、有意水準は危険率5%未満とした。

【結果】

上肢機能は重症群10名、軽症群32名であり、梗塞巣面積(重症群:220.5±64.4mm2、軽症群:138.3±121.7mm2、p<0.05)と梗塞巣体積(重症群:3.8±1.8ml、軽症群:1.8±2.1ml、p<0.01)においては有意差を認めたが、CP/APにおいては有意差を認めなかった。下肢機能は重症群8名、軽症群34名であり、梗塞巣面積(重症群:229.5±45.3mm2、軽症群:141.0±120.9mm2、p<0.05)と梗塞巣体積(重症群:4.3±1.6ml、軽症群:1.8±2.1ml、p<0.05)においては有意差を認めたが、CP/APにおいては有意差を認めなかった。上下肢ともにBRSⅢ以下に分類された全例にBAD型の梗塞巣の拡大を認めていた。軽症群のうち、重症群と同程度の梗塞巣面積及び体積を有する症例は6名であった。

【考察】

本研究においても、先行研究と同様に梗塞巣面積及び体積が運動機能障害に大きく影響することが示唆された。一方で画像所見から重度の運動麻痺を呈する症例と同程度の梗塞範囲であるものの運動機能障害が少ない症例を複数認めた。その特徴は梗塞巣の中心(CP/AP:62.5%)が、重症群(CP/AP:47.9%)、梗塞巣の小さな軽症群(CP/AP:47.0%)と比較しても、前方に位置する傾向にあった。本研究からは、梗塞巣中心部の位置から運動機能局在を判断する結果には至らなかったものの、皮質脊髄路が放線冠の後方を走行するという報告と併せて、梗塞巣の大きさと位置から機能予測を行なう一助になると考えられる。

【まとめ】

急性期脳梗塞においては、病態及び画像所見から病巣の進行のリスクを理解し、機能予測を行なうことで適切な理学療法介入が行えると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に基づき、個人が特定されないように情報の取り扱いには十分に配慮し、後方視的に情報を収集して実施した。本研究において利益相反に関する開示事項はない。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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