La mer
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東京湾奥部に造成された大森ふるさとの浜辺公園におけるドロメの出現様式と形態発育
中居向 朝海 David E. ANGMALISANG丸山 啓太河野 博
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2022 年 59 巻 3-4 号 p. 113-129

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抄録

東京湾奥部に造成された大森ふるさとの浜辺公園の人工海浜・人工干潟(小型地曳網),垂直護岸(籠網・手網),浅場・澪(定置網)にてドロメの採集を行い,出現様式を明らかにした。また,海浜または干潟で採集された標本のうち274個体の外部形態を計測した。これらの標本の中から92個体を抽出して透明二重染色処理を行い,遊泳・摂餌関連の形質として主に骨格を観察した。これらの計測及び観察から,発育段階の区分わけを行った。海浜にて124個体(体長3.78~30.3mm),干潟にて447個体(体長3.98~72.9mm),垂直護岸にて籠網で239個体(体長22.8~107mm),手網で221個体(体長6.30~45.2mm),浅場にて2個体(体長17.3mm,30.4mm),澪にて1個体(体長4.50mm)が採集された。発育段階は,骨格観察による遊泳機能及び摂餌機能において4段階に,外部形態の計測による相対成長において5段階に分けられた。出現様式と発育段階により,大森ふるさとの浜辺公園のドロメは孵化後,人工海浜または人工干潟へと流され,遊泳機能・摂餌機能ともに急速に発達する体長約10mmまで過ごし,体長約8~9mmから垂直護岸へ移動開始,体長約22~25mmで着底,その後体長約35mmまでに垂直護岸への移動が完了すると考えられた。以上より,ドロメは発育段階に応じて同公園の様々な環境を使い分け,少なくとも産卵期前までは利用していることが示唆された。

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© 2022 日仏海洋学会
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