喉頭
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咽喉頭逆流症 (LPRD : Laryngopharyngeal reflux disease) の病態
渡嘉敷 亮二
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2008 年 20 巻 2 号 p. 73

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抄録
咽喉頭逆流症 (以下 : LPRD) に関する最近の報告を総合すると, その病態は単純に胃食道逆流症 (以下 : GERD) の一部あるいは延長線上といえない部分があり, ここではその病態をGERDとの違いに言及しながら解説する.
I.LPRDの病態
1.直接障害説の病態
直接障害では酸が咽喉頭に直接暴露することで, 咽頭通, 嗄声, 肉芽腫などをきたす.GERDと同様pH4未満の酸性の逆流がLPRDの発症に重要と考えられているが, 酸に対する咽喉頭粘膜の脆弱さゆえ一日に数回の胃酸の暴露でも咽喉頭には症状が出るとされている.また同様の理由でpH4以上の弱酸性の逆流でも症状や所見が生じるとする報告がある.このような例では胸やけなどのGERD症状を有さずに咽喉頭症状のみしか有さない例がある.以上より米国の耳鼻咽喉科医の間ではLPRDとGERDは異なった病態であるとする論調が主流であった.しかしながら一方で近年欧米の消化器専門医からは「GERDが重症化するほど咽喉頭症状の有症率が高くなる」など, GERDの延長線上の病態としてLPRDをとらえる報告も出てきている.
2.反射説の病態
下部食道への逆流により迷走神経反射を介して咳などが生じるとするものである.われわれは, 健常成人の食道に胃酸と同濃度のHCLを注入するとUES (UpPer esophageal sphincter) 圧の上昇に伴い咽喉頭圧迫感が生じることを報告した.この際同時にpHモニタリングを施行したところHCLは上部食道・下咽頭には達していないことが分かったため圧迫感が反射により生じることが示唆された.この現象は下部食道への酸逆流を感知した反射的気道防御ととらえることが出来る.米国での研究では, 下部食道への逆流は酸度の上昇と圧上昇の両方により感知されることがわかっている.
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