喉頭癌の術式において喉頭部分切除術は有力な選択肢の一つとなっているが, 根治切除のための適切な安全域の設定が重要であることは言うまでもない.切除範囲の決定は内視鏡所見もしくは直接喉頭鏡所見による粘膜病変の広がりとCTやMRIによる深部進展の評価を総合的に判定して行うが, 最終的には術中の病変の広がりを直視下に観察しながら行うことになる.一般に喉頭癌における粘膜下進展は下咽頭癌に比べ限定的で, それ故, 下咽頭癌の切除範囲よりもより安全域を狭く設定できるとされる.本発表の目的は原発巣周囲組織への粘膜下病変の広がりや多発病変の有無の程度を検討すること, および腺系癌について扁平上皮癌との粘膜下進展の違いを検討することである.
喉頭扁平上皮癌における検討対象は喉頭全摘大切片標本による検討が可能であった55例である.年齢は平均68才.男性51例, 女性4例.内訳は声門型が11例, 声門上型が27例, 混合型が14例, 声門下型が1例, 喉頭全体が腫瘍に置換し原発亜部位が分からないものが2例.原発巣周囲組織への平均粘膜下進展距離は声門型で4.3mmであるのに対し, 声門上型で8.2mm, 混合型では10.5mmと大きい傾向が見られた.また, 55例中4例 (7.3%) に多発病変を認めた.
一方, 喉頭に発生する悪性腫瘍の大部分は扁平上皮癌であり, 腺系の癌が発生する.頻度は極めて稀である.当施設での検討では, 喉頭に発生した腺系の癌は過去35年間で10例/643例 (1.5%) であった.組織型の内訳は腺癌2例, 腺扁平上皮癌2例, 腺様嚢胞癌3例, 粘表皮癌3例であった.その内, 病理学的検索が可能であった7例を検討対象とした.腺系の癌は一般に喉頭粘膜下の喉頭腺由来と考えられており, 扁平上皮癌にくらべて粘膜下病変が主体となる症例が多かった.
抄録全体を表示