日本LCA学会誌
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総説
コンセクエンシャルLCAの光と影
Alessandra ZAMAGNIJeroen GUINÉEReinout HEIJUNGSPaolo MASONIAndrea RAGGI稲葉 敦中谷 隼
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2014 年 10 巻 3 号 p. 213-229

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抄録

目的:コンセクエンシャルLCA(CLCA)が、意思決定が及ぼす結果(コンセクエンス)を記述するモデリング技法として、科学分野で広く使われるようになっている。しかし、公表されたケーススタディの数が増加しているにもかかわらず、アプローチの適切な体系化はまだ達成されていない。本論文では、CLCAの方法論としての意味と、応用事例がどのくらい理論的な指示に合致しているかを調査する。さらに、方法論が構築されて行く過程でのシナリオモデリングの役割に焦点を当てながら、CLCAの予測的および探索的な性質を議論する。

方法:この約18年間(訳者註:1993-2011年)に発表された約60の論文を含む広範囲な文献レビューを実施して、方法論の論点と応用事例の両方に取り組んだ。得られた情報から、モデリングの本質と影響を受けるプロセスを特定することに重点を置いて、「何のために」(what for:LCAの問題設定と方法)と「何を」(what:CLCAの方法論的な意味)という2つの主要な側面について詳細に議論した。

結果と考察:アトリビューショナルLCA(ALCA)とCLCAのモデリングの原理は同じであるため、この2つのLCAの様式を区別するのは、システムに含まれるプロセス(すなわち、CLCAにおいてはマーケットのダイナミクスの影響を受けているもの)の選択であることを本分析は示している。しかし、それらのプロセスの特定は、さまざまな根拠に基づいて整合性がないままに行われることも多く、それゆえにさまざまな異なる結果が導かれている。私たちは、技術開発、マーケットの変化、およびその他の変化について、製品に関連した将来をモデル化するための科学的な正当性によってCLCAを支援する方法として、シナリオモデリングを使うことを推奨する。

結論:CLCAは、分析にマーケットメカニズムを含めることによって、行動や意思決定が環境へ及ぼす結果を評価するための方法を提供する高度なモデリング技術である。ただし、特に以下の点について、方法の改善とさらなる研究の余地がある。すなわち、いつ、どのマーケット情報が重要かつ必要であるかを明確化すること、CLCAの中でのシナリオモデリングの役割を理解すること、そして問題設定とモデルをより良く関連付けるための問題のフレーミングを支援する手順を開発することである。また、メカニズムの理論がALCAとCLCAの間の論争を解決するためのガイドになりうることを示した。さらに、この理論は、CLCAを―決められたルールを持ったモデリング原則として考えるよりも―LCAを深めるアプローチとして考え、マーケットだけではなく他のメカニズムも含む概念的な基礎を提供するように拡張することができる。

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© 2014 日本LCA学会
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