日本LCA学会誌
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目次
巻頭言
特集「持続可能な企業経営に向けた企業の教育活動」
解説
  • 稲葉 敦
    2024 年 20 巻 3 号 p. 128-135
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    近年 ESG 投資の増大を背景に「環境経営」の重要性が増している。一般に、経営者の主導的関与などが環境経営の要素とされているが、具体的な活動は ISO のガイドライン等に基づいて行われている。

    従来は、事業所については PDCA サイクルで改善を継続する「ISO 14001:2015 環境マネジメントシステム」が「環境経営」の代表的な活動とされ、また「製品」については「ISO/TR 14062:2002 環境側面を製品設計・開発に組み込むための指針」のように「エコデザイン」や「環境適合設計」で評価・開発されるものとされてきた。しかし、これらは事業者が直接関わる範囲の評価・改善であった。

    最近は、事業者が直接関わる範囲だけでなく、「組織」や「製品」のライフサイクル全体での環境側面を考慮する重要性が周知されるようになった。「ISO 14040:2006 ライフサイクルアセスメント - 原則及び枠組み」を基礎として、様々な ISO や産業界のガイドラインが発行され、企業の環境経営が変化しつつある。

    まず、世界的な「カーボンニュートラル」の活動を背景に、ISO 14067:2018 カーボンフットプリント(CFP)を用いた製品や組織の温室効果ガス(GHG)排出量の算定が汎用になっている。また、組織の GHG 排出量の算定は「GHG Protocol」が発行する「Scope3 基準」が多くの企業で利用されている。さらに、ここ数年の間に、カーボンニュートラルを宣言する方法を示す複数の ISO 文書やガイドラインが発行されている。新製品が社会の GHG を削減することを示す「削減貢献量」の主張も多く見られるようになった。

    一方で、持続可能な発展のために、「環境」の評価だけでなく「経済」と「社会」に関する ISO 規格が発行されるようになった。環境影響を経済価値に換算する方法を示す ISO 14008:2019 が発行され、製品の社会的側面を評価するソーシャル LCA(ISO 14075)の開発が始まった。

    また、製造業だけでなく金融機関の気候変動への取り組みを示す ISO 14097:2021 や ISO 14100:2022 があり、また持続可能性を評価する ISO/TC322:サステナブルファイナンスが 2018 年に設立されている。

    「環境経営」は、いまやライフサイクルを考慮することが通常であり、「気候変動」だけでなく「持続可能性」に向けた活動に向かっている。今後の展開の方向性を注視する必要がある。

  • 竹内 孝曜, 深津 学治
    2024 年 20 巻 3 号 p. 136-142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    近年、国内外で ESG 投資額が伸びる中、企業の調達活動においては、生産地の生態系への影響や労働者の権利、労働環境等、環境面や社会面に配慮した原材料の調達の実施状況が重視されてきており、企業を評価する要素の 1 つとなっている。

    このような中で、グローバルに事業を展開する企業を中心に、環境保全や人権配慮、労働安全等の分野の取り組みを定めた「持続可能な調達方針(CSR 調達方針等)」を策定し、その方針に沿った取り組みの遵守をサプライヤーに求める動きが進んでいる。これは、自社事業の継続的な発展という経済的側面と、地球の自然資本の持続可能性の担保という環境保全の両立を目指した動きであり、サプライヤーの取り組み状況を把握するためにアンケート調査が行われている。こうした持続可能な調達の動向は、グローバル企業だけが取り組むことではなく、国内で活動する大手企業や中小企業等、全ての企業に関わる話といえる。

    自社が組織的に取り組んでいることを示すためには、環境面、社会面の個別の方針策定のほか、サステナビリティ全体に関する中長期目標・計画の策定、関連データの収集、KPI に基づいた進捗管理と情報開示などが求められ、環境やサステナビリティを推進する部署のみならず、経営層の理解、関係部署との調整、合意形成が必要となる。このサステナビリティの分野において、日々新しい枠組みや規制が導入され、企業の置かれるビジネス環境が目まぐるしく変化するなか、それぞれの課題の本質や重要性を社内全体に、あるいはサプライチェーン全体に十分に共有する機会の確保、周知、啓発が必要といえる。

    本稿では、企業のサステナビリティ活動の推進に関する内容や取り組みを、調査結果も含めて紹介する。

  • 薗部 あゆみ
    2024 年 20 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    大東建託グループは、木造を中心とした賃貸集合住宅による、建物賃貸事業の企画、建築、入居者斡旋、管理・運営といった総合サポートを主力事業としている。本解説では、当社グループの環境・サステナビリティ経営の現状について概説するとともに、社内外に対する環境・サステナビリティ教育・支援活動について紹介する。

  • 加山 順一郎
    2024 年 20 巻 3 号 p. 150-157
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    産業廃棄物の中間処理を行う当社(加山興業株式会社)では、よりクリーンな世界の実現に向け、廃棄物の適正処理のみならず、脱炭素に向けた取組みに積極的に取り組んでいる。

    本稿では、様々な製品のライフサイクルの中で重要な位置づけとなる廃棄物の中間処理時の脱炭素に対する当社の取組みを紹介した。さらに、ステークホルダーや地元小学生等へ向けた、社会へのライフサイクル思考の普及啓発に関する取組みついて述べ、今後取組むべき課題について整理した。

  • 鈴木 成幸, 谷 洋紀, 早川 明宏
    2024 年 20 巻 3 号 p. 158-165
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    自動車リサイクル事業を展開する NGP 日本自動車リサイクル事業協同組合(NGP)にとって、率先したリユース、リデュース、リサイクル(3R)の取組みは重要な使命であり、自らの事業活動のみならず、次の世代を担う子どもたちに 3R の大切さを伝える活動にも注力している。本稿では、本来廃棄物となっていたものを有効活用した環境教育教材の製作とその活用事例について紹介する。

  • 田口 朋子, 渡邊 崇, 嶋田 浩
    2024 年 20 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    地球環境の影響を受ける農産物を主要原料とする食品企業である味の素AGFでは、味の素グループとして掲げている「環境負荷の 50%削減」に向けて、「気候変動への対応」「資源循環型社会実現への貢献」「持続可能な原料調達」「森林整備・水資源の保全」の 4 つの大きなマテリアリティを掲げ、取組を行っている。その中のユニークな取組として「森林整備・水資源の保全」の活動について、水との関わりの理解、社会価値創出の自分ごと化・見える化とステークホルダーのエンゲージメント向上への貢献、そして森の多様な機能を活かした活動の拡がりという観点で整理し、紹介する。

  • 竹下 博士, 相原 由望, 木村 洋平
    2024 年 20 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    本解説では、民間企業である「佐川急便株式会社(以下、佐川急便)」が実施する環境教育の事例について報告する。佐川急便が展開する宅配便事業から排出される温室効果ガス(以下、CO2)は、サプライチェーン全体(Scope1 + Scope2 + Scope3)で 170 万トンを超える。その環境負荷を低減するために同社では、車両などの輸送インフラを環境負荷の低いものへと移行させていくハード面の対策とともに、従業員の環境保全への意識や行動を促すソフト面の対策となる環境教育とを両輪として 1990 年代から活動を継続している。事業活動で排出されるサプライチェーン全体の CO2 を見ると、間接排出量であるスコープ 3 の排出量が約 80%を占めており、その大半は宅配便の委託輸送である。そこで同社では、サプライチェーン全体の環境負荷低減に向けた取り組みとして、委託輸送のサプライヤーに向けた教育活動もスタートさせている。教育の対象は事業の関係者だけではなく、地域住民や学校などの一般の方々へのステークホルダー・エンゲージメントとして、出前授業や市民会議、森林体験の提供などといったさまざまな活動も展開している。2050 年カーボンニュートラルの実現、ネイチャーポジティブや持続可能な社会の構築を目指す中で佐川急便が行っている環境教育の事例について紹介する。

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