LCAは、製品やサービスの環境影響を定量的に評価する手法として発展してきたものの、将来に向けては、温室効果ガス排出などの環境負荷原単位が大きく変化すると予想され、評価結果も時点によって大きく異なる可能性がある。そこで、開発が望まれる将来の技術変化や社会構造の変動を見据えた未来志向型のLCAの手法について、将来のフォアグラウンドデータ、将来のインベントリデータベース、未来志向のインパクト評価手法の3つの観点で、それぞれにその展望と課題を論じた。将来のフォアグラウンドデータにおいては、社会実装前の技術は一般に技術成熟度が低く、現時点での生産効率や環境性能は十分でないことが多い。そのため、将来の技術的進展を見越してスケールアップを行い、より現実的な環境性能を見積もる必要がある。プロセスシミュレーションや専門家の知見を用いた将来想定の構築が鍵となるが、高度な専門性と手間が求められる点が課題である。次に、将来のバックグラウンドデータに関しては、社会全体のエネルギー構成や産業構造、素材生産の技術進展などが影響するため、将来の社会を想定したシナリオに基づくデータの整備が必要となる。近年では、将来シナリオと整合した形でインベントリデータを変換するためのツールや枠組みも提案されており、それにより複数の社会シナリオを想定した評価が可能となりつつある。一方で、評価対象の技術が社会構造に与える影響が無視できない場合は、既存のシナリオでは不十分であり、新たにシナリオを構築する必要がある。さらに、未来志向のインパクト評価手法においては、新たな環境影響の発現や影響の相対的重要性の変化を考慮する必要があるが、将来に対応した特性化係数の整備は限定的であり、多くの影響領域で知見が不足しているのが現状である。このように、未来志向のLCAの枠組みは未だ統一されておらず、用語や手法も多様である。今後は、評価目的に応じた柔軟かつ一貫性のある方法論の整備、シナリオとデータの整合性確保、そして評価者自身によるシナリオ設計が可能となるような方法論の構築が求められる。
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