日本LCA学会誌
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目次
新春巻頭言
特集「美食地政学」
解説
  • 松八重 一代
    2026 年22 巻1 号 p. 2-8
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    近年、異常気象の頻発や温暖化の進行により、一次産業は大きな打撃を受けている。さらに、一次産業を支える地域経済においては担い手不足が深刻な問題である。農業従事者の高齢化が進む一方で、若者の都市流出が続き、農業を支える人材の減少も大きな課題となっている。これらの問題は、一事業者だけでは解決できない複雑な構造を持ち、産官学民の連携が必要不可欠である。  食のサプライチェーン全体を見渡すと、生み出された食資源が余すところなく活用されているわけではない。流通・加工段階で発生する食品ロスは国内外を問わず、世界的な社会課題となっている。将来にわたって豊かな食の恵みを生み出す環境を保全し、食のサプライチェーンの最上流を持続可能な形で維持・管理するためには、政治、経済、産業、教育、文化に関わる多様な人々の協力が必要となる。「美食地政学」は、食に関わる多様な知を集結し、持続可能な食を実現するための概念として提案されたものである。食資源を支える自然資本を保全し、その恵みを余すところなく活用するには、学術知、地域行政、産業、教育の力を結集しなければならない。本稿では、食を起点とした地域経済の課題を整理し、解決策を検討する。

  • 藤井 豊展
    2026 年22 巻1 号 p. 9-15
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    近年、人間活動に起因する海洋環境への負荷が世界規模で増大する中、インパクトが最も集中する沿岸生態系や水産資源への影響が危惧される。沿岸域は人間活動と生態系が互いに影響し合う社会・生態システムを形成しており、「生態系アプローチ」(Ecosystem Approach)による環境管理(Ecosystem-Based Management; EBM)を通し、複雑に相互作用する生態系の特性と、社会がそこに及ぼす影響について理解しながら資源管理を行う必要がある。このアプローチは、生態学的、社会学的、政策学的な学問分野を統合し、海洋を利用する多様なステークホルダー(市民、事業者、研究者、行政等)と連携しながら人間社会が海洋環境に与える複合影響の最小化を図り、海洋生態系の保全と生物資源の持続可能な利用を目指す試みである。

  • 村上 弘章
    2026 年22 巻1 号 p. 16-22
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    環境DNA(environmental DNA; eDNA)は、環境中に放出された生物由来のDNAである。近年では、eDNAを検出することで、生物の在不在や多様性、さらには生物量の推定が試みられている。日本沿岸では、著しい海水温の上昇や環境変化などの影響により、水産資源量の減少や漁獲種組成の変化が起こっている。持続可能な漁業の実現と水産資源の適切な利用のためには、現在における生物相評価が不可欠である。フィールド研究では、宮城県気仙沼市舞根湾における継続的なeDNAデータから、魚類相の季節変化と地点間の違いが明らかになり、水温上昇と南方系魚種の出現が連動することが示された。このように、対象水域の魚類多様性を推定するうえで、eDNA手法は極めて有効であり、これを用いた未利用・低利用資源の活用方法に関しても検討した。

  • 丹治 朋子
    2026 年22 巻1 号 p. 23-29
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    本稿は、美食地政学プロジェクトの枠組みの下、地域の食資源に基づく持続可能なビジネス・サプライチェーンの設計原理を検討する。日本のフードサプライチェーンは多段階・多品目対応により効率化を達成してきた一方、長距離輸送依存や食品ロスの課題があり、低い食料自給率と相まってレジリエンスの脆弱性を抱える。本稿は、(有)伊勢志摩冷凍と「四季彩食いまむら」の事例分析を通じ、未利用資源の高付加価値化(冷凍・一次加工等)、料理人を核とした知識の実践拠点化、双方向の情報循環を核とする地域連携の有効性を示す。さらに、少量分散資源を収集・一次処理・保管するロジスティクス設計と、加工業者の役割を中核に据えた小規模・多層型の地域サプライチェーン、ならびに生産・加工・流通・消費を接続するマッチング型プラットフォームの必要性を指摘する。結論として、地域に根ざした加工拠点と知識共有、最適化されたロジスティクス、政策的支援を統合することで、食のレジリエンスを高めつつ環境負荷と食品ロスを削減し、味覚・文化・経済価値の同時創出が可能である。

  • 古川 柳蔵, 古岩井 翔子, 田村 綾海
    2026 年22 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    気候変動による気象災害の拡大、陸域・海域における環境変化が著しい。悪化する気候変動に適応し、食を確保するためには、消費者及び生産者の価値観の転換と行動変容が必要である。本稿は消費者及び生産者の価値観の転換と行動変容を促すツールの開発とその効果や実装における課題について紹介する。行動変容を促すツールは、食への関心が高い層に対するナラティブ・アプローチを用いた試食会とシェフを対象とした農園体験、中・低関心層に対する伝統料理等の動画コンテンツを用いた活動を取り上げ、これらを用いた実証研究を概観すると共に、今後、実装を進める上での課題や展望について考察した。

  • 眞貝 理香, 香坂 玲
    2026 年22 巻1 号 p. 36-42
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    1980年代後半以降、海外ではサステナブルツーリズムの理念の広まりに伴い、多様な認証制度が整備されてきた。これを背景に、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(Global Sustainable Tourism Council; 以下GSTC)は国際的なサステナブル・ツーリズムの基準を制定した。また、日本版JSTC(Japan Sustainable Tourism Criteria-D)も、国内観光地向けの取り組みガイドラインとして設定された。国内においては国際的な観光認証を取得する観光地・宿泊施設は徐々に増加傾向にあるものの、サステナブルツーリズムは地域特性による課題も異なる。更に国内では概念の認知度や経済的要因などから、認証制度の普及・取得は依然として限定的である。そこで本稿では、海外の先行研究や事例を参照し、①サステナブルツーリズムや認証制度の「効果」と、その普及を妨げている「阻害要因」を明らかにするとともに、②日本におけるサステナブルツーリズムの推進、および国際認証制度導入にあたっての課題と可能性について検討する。結果、海外では受け入れ地域や施設の事業規模・情報・資金面や、観光客側の認識と行動のギャップ等が課題となっていることが特定された。

  • 光斎 翔貴, 戸田 耕介
    2026 年22 巻1 号 p. 43-49
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    沿岸域における藻場の劣化は、藻食性魚類による食害に一因があり、海洋生物多様性およびブルーカーボンの固定能力を脅かしている。この課題に対処するためには、生態系の回復と持続可能な資源利用の双方が求められる。本研究は、未利用の藻食性魚類の管理に関する二つの対照的なアプローチ――行政による駆除・焼却事業と、民間によるペットフードとしての価値化――を評価するものである。ブルーカーボン吸収をライフサイクルアセスメント(LCA)に組み込むことで、両者の環境的・経済的・社会的インパクトを比較することを目的とした。本研究では、生態系サービスを含む拡張型LCAの枠組みを適用した。行政シナリオには、魚の駆除・焼却および藻場回復による炭素吸収を含め、民間シナリオには、漁獲・加工・ペットフード製造および関連するブルーカーボン効果を含めた。データは、自治体の報告書、現地ヒアリング、さらに伴侶動物を対象とした嗜好性試験から収集した。その結果、行政シナリオはCO2吸収に大きく寄与する一方で、補助金への依存が大きく、資源循環やアニマルウェルフェアの観点で限界を抱えていた。民間シナリオはカーボンネガティブの可能性と市場受容性を示したが、消費者需要や市場動向への依存が大きかった。両アプローチは補完的であり、ハイブリッド型の戦略によって漁業者の駆除インセンティブを高めつつ資源循環を確保できる可能性がある。今後の研究では、消費者認識の解明、LCAと生物多様性指標の統合、漁業者のウェルビーイングを社会的持続可能性の重要な側面として評価することが求められる。

  • 三橋 正枝, 浮田 美里
    2026 年22 巻1 号 p. 50-55
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    食をとりまく環境において、持続可能な社会を実現するには、次世代の担い手にグリーンジョブの重要性を伝え、地域に必要なグリーンジョブとその重要性の認識を共有し、昨今の気候変動や地域の自然環境に適応したグリーンジョブをキャリア・アンカーとして選択するジョブマーケットの醸成が必要である。そのためには、すでに地域にある仕事のグリーンジョブ化を促し、概念を定着させるとともに、若い世代によって新たなグリーンジョブが創出される環境を整え、それに着目する契機を与える共創教育コミュニティが必要である。本稿では、地域事業者と高大連携による、グリーンジョブを支えるエコシステムの一環として、未来の担い手を育成する共創教育コミュニティの形成が重要であることが明らかになった、三重県での事例を紹介する。

事例論文
  • 篠塚 真智子, 山口 央理, 大島 剛志, 生沼 守英, 水野 諭孝, 岩塚 卓弥, 西澤 幸久, 田中 百合子, 竹内 淑江, 西 史郎
    2026 年22 巻1 号 p. 56-66
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    ICT産業の電力消費量が増加している。ICT機器の電力は機器上で動作するソフトウェアの影響を受けるため、ソフトウェアもその消費電力増加の一因となっている。そのため、ソフトウェア分野における環境負荷削減が必要であるが、ソフトウェアの特に開発段階における環境負荷についてはこれまで詳細が明らかになっていなかった。そこで本研究では、ソフトウェアのGHG排出の実態を把握するために3件の小規模な非商用のソフトウェア開発プロジェクトを題材に、開発段階のカーボンフットプリントを算定した。GHG排出量はそれぞれ131 kg-CO2eq、369 kg-CO2eq、923 kg-CO2eqであった。いずれのプロジェクトにおいても主要な排出源はICT機器の生産・使用、生産拠点における空調・照明利用、出張、ネットワーク利用であり、人的活動による排出が一定の割合を占めていることがソフトウェア製品の特徴であることがわかった。また、ICT機器の消費電力に関して、開発工程・作業種別の観点から相対的な大小関係の傾向を見出した。

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