蝶と蛾
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ヤママユガ科オオミズアオ属の休眠に関する研究II : 休眠誘起の光感受期と発育零点,発育有効積算温量および発生回数
宮田 保
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1976 年 26 巻 3-4 号 p. 103-109

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抄録

日本産ヤママユガ科SaturniidaeのオオミズアオActias artemis Bremer et GreyとオナガミズアオActias selene Hubner は,成虫や幼虫期の形態が酷似する近縁な種である.分類学上,両種には北海道亜種と本土亜種が存在するが,それらの分布のようすを各地方の採集報告例をもとにみると,北海道亜種は両種いずれも道内全域にわたって記録され,種間の分布に相違が認められない.一方,本土亜種はオオミズアオが本州,四国,九州さらに南方域の屋久島に至る広い範囲に分布しているのに対して,オナガミズアオは本州と四国のごく一部(愛媛,香川具)に生息し,九州以南からは記録されていない.筆者はこのような両種間の分布上の相違を解明する手段のーつとして,光感受期および発育零点と有効積算温量を調査し,既報(1974)の休眠誘起の日長条件の結果と合わせて,生理的特性の差異を検討した.その結果,分布の要因を完全に解明するには至らなかったが,日本列島の各地方における両種の発生回数について,少々の知見を加えることができたのでここにとりまとめて発表しておく.

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© 1976 日本鱗翅学会
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