蝶と蛾
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1973年屋久島で突発的に発生したルリウラナミシジミについて
松岡 善一
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1976 年 26 巻 3-4 号 p. 125-131

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抄録

ルリウラナミシジミJamides bochus Stollは東洋熱帯からオーストラリアにかけて広く分布する熱帯系のシジミチョウ科の1種で,多くの亜種に分類されているが,わが国には琉球列島八重山群島にssp. ishigakianus Shirozuが分布し,台湾からは別亜種ssp. formosanus Fruhstorferが知られている.また八重山群島が本種の土着北限地と考えられているが,これらの地域以北で迷チョウとして,あるいはそれに由来し一時的に発生したと考えられる記録は,1953年11月13〜19日,屋久島の各地(安房,麦生,原,尾之間,小島)で10♂♂,13♀♀(垂井,1954)が,1958年10月29日には沖縄本島那覇市で,1♂(長嶺,1961) の採集が報告されている.筆者は1971年3月から1974年3月まで屋久島に居住し,勤務のかたわらチョウ類を調査する機会を得たが,1973年9月,南部海岸の麦生で多数の本種を発見し,さらに卵から成虫に至るまでの生態的知見を得ることができたので報告する.なお変異,亜種の問題などについては筆者らが得た標本をもとに田中洋氏が調査,検討中であり追って発表されることと思われる.

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© 1976 日本鱗翅学会
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