蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
ミスジビロードスズメの幼虫と蛹
中村 正直
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1977 年 28 巻 3 号 p. 119-123

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抄録
少なくとも,これまでにわが国から知られたスズメガ科幼虫のなかで,もっとも奇異な形態を示すのがここに記すミスジビロードスズメの幼虫である.本種の幼虫との最初の出会いは,1967年9月19日,富山県宇奈月温泉で,今から考えると2齢幼虫と思われるものをヤマアジサイHydrangea macrophylla (Thunb.) Seringeの葉裏から見出したときであるが,この幼虫は残念にも斃死してしまったので,正体不明のままで終わった.その後しばらく,このアジサイ食いのスズメガとの縁は切れたままであったところ,1976年8月28日,東京都奥多摩町で,再びヤマアジサイから後に記すような特異な形態の終齢幼虫1頭をとることができた.これからは,明けて1977年6月20日,ミスジビロードスズメの♂が羽化した.1976年には,中臣謙太郎氏もこの終齢幼虫と同じものをアジサイからとられた由で,美事な写真を拝見することができた.ただこの段階では,さきの宇奈月の2齢幼虫と今回の終齢幼虫との関係は明確でなかったが,1977年7月末から8月一杯にかけて,東京高尾山で卵および各齢幼虫を多数発見し,約20頭程を飼育して一応生活史のあらましをつかむことができたので,以下に記録しておきたい.
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© 1977 日本鱗翅学会
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