蝶と蛾
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インドネシア・スンバ島産Rapala属(シジミチョウ科)の1新種
高波 雄介
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1992 年 43 巻 2 号 p. 147-148

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抄録

小スンダ列島のスンバ島で得られた1♂に基づき,シジミチョウの新種Papala arbaimuniを記載した.調査の範囲では既知の種類に該当するものはない.これまで同地域から記録されたRapala属に含められる種類はiarbus, varunaの2種のみで,今後採集されるとしてもdamonaとmaneaくらいと考えていたところに出てきたものである.本種はフィリピンに産するRapala diopitesにもっとも近縁であると思われるが,一見Rapala maneaにも似ている.即ち,複眼間の額は白っぽく,触角棍棒部下部の白色部はmaneaのようにあまり目だたない(diopitesでは白色部は広がり,特に裏面から目だつ).翅表面,地色は暗灰褐色で,斜めから見るとdiopitesと同様の紫の反射光が前後翅に見られる.後翅,性標はdiopitesと同じく,第7室の通常の半円形の大きな性斑に加え,第6脈の基部上にも特殊鱗が集まった小斑を現す.裏面,地色は暗灰黄色でmaneaよりやや暗い(diopitesはもっと茶色味が強い).前翅中室端条と外中央帯はdiopites同様で,後縁の毛束は暗褐色.後翅,外中央帯はdiopitesに似て下半部は橙色に染まるが,肛角部の色斑はむしろmaneaに似る.♂交尾器は一般的なDeudorix型.最も特徴の現れるphallus尾端部はdiopites系の大きな爪を持つ型で,左右不対称の幅広の鉤爪状突起を一対備える(diopitesでは左向きのものが一つのみ,maneaは鋸歯状の全くの別型).

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© 1992 日本鱗翅学会
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