蝶と蛾
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日本産ヒメハマキガ亜科(鱗翅目,ハマキガ科)の1新種と3新記録種
那須 義次小木 広行
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1997 年 48 巻 3 号 p. 133-140

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抄録

北海道から採集されたヒメハマキガの標本を検討したところ,1新種と3新記録種を認めたので報告する.なお,所検標本の大部分は第2著者の小木により採集されたものである.Semnostola triangulata Nasu&Kogi,n.sp.セサンカクモンヒメハマキ(新称)(Figs 1,5,9)前翅開張:雄13-14mm,雌16mm.前翅の地色は灰褐色,翅頂から1/3は暗色.内縁中央部に暗褐色3角形のdorsal patchがある.分布:日本(北海道).本種はロシア極東部と日本に分布するS.magnificaニセハギカギバヒメハマキと外部表徴で類似するが,内縁中央部のdorsal patchが3角形であること,雄交尾器のcucullusが台形であることにより区別できる.Ancylis apicella([Denis&Schiffermuller])タテスジカギバヒメハマキ(新称)(Figs 2,6)日本新記録種.分布:ヨーロッパ,ロシア,中国,日本(北海道).寄主植物:クロウメモドキ科:クロウメモドキ属;ミズキ科:ミズキ属;ヤマモモ科:ヤマモモ属;モクセイ科:イボタノキ属;バラ科:サクラ属.本種は前翅に数本の暗褐色縦線を有することにより,日本産Ancylis属の他の種と簡単に区別できる.Pelochrista decolorana(Freyer)ウスマダラヒメハマキ(新称)(Figs 3,7,10)日本新記録種.分布:ヨーロッパ(イギリスを除く),ロシア,モンゴル,中国東北部,韓国,日本(北海道).寄主植物:キク科:アキノキリンソウ属.本種はロシア極東部と日本に分布するP.inignanaフタオビチャヒメハマキと外部表徴で類似するが,前翅が細いこと,地色がより灰色がかっていること,中帯を持たないこと,雄交尾器のcucullusのpollexが短いこと,valvaにpulvinusを持たないことにより区別できる.Rhyacionia pinicolana(Doubleday)ハイマツアカシンムシ(Figs 4,8,11)日本新記録種.本種は鈴木・駒井(1984)によりRhyacionia sp.として北海道から記録されているものである.分布:ヨーロッパ,ロシア,中国北部,韓国,日本(北海道).寄主植物:マツ科:マツ属.日本ではハイマツから飼育されている.本種は日本においてクロマツを加害するR.dativaマツアカシンムシと外部表徴で類似するが,前翅の地色が明褐色であること,明瞭な銀色の横線を有することにより区別できる.

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© 1997 日本鱗翅学会
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