蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
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ペルーアタラヤ産,後翅裏面斑紋異常を伴う雄ベアータアグリアス(鱗翅目,タテハチョウ科)
井上 武夫Callegari C. Ivan
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1997 年 48 巻 4 号 p. 205-206

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抄録

ベアータアグリアス後翅裏面の斑紋は個体により千差万別であるが,眼状紋を形成する外側3列の黒色斑は比較的安定している.この3列の黒色斑が全て癒合した雄個体を採集したので報告する.写真1は表面で,Agrias beata beata Staudingerと比較して前後翅とも外側の緑色帯は狭く,その内側にある青色帯はより広い.写真2は裏面で,後翅外側の眼状紋は不明瞭であり,第2室から7室までの外側3列の黒色斑が融合して棍棒状になっている.第1b室では,2個ある眼状白紋が融合して,柱状の黒色斑を上下に分断している.後翅基部の赤色斑は中室の一部に拡がり,第1b室では1b翅脈ぎりぎりまで拡がっている.これらから,本個体はAgrias b.beata f.staudingeri Michaelの変異体と考えられる.しかし,前翅裏面には赤色斑が認められず,黒色の範囲が通常より狭いなど,典型的ではない.本個体は1995年11月26日ペルーウカヤリ州アタラヤ近くのキパチャリ川で採集された.その後1997年6月末までに10頭のベアータアグリアスを同地で採集したが,本個体にみられる異常斑は認められなかった.この事実から,同地にこのような異常斑を持つベアータアグリアスの集団は存在せず,一個体にのみ出現した突然変異と考えられる.

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© 1997 日本鱗翅学会
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