抄録
Smerinthus decoratus Moore,1872は,ネパールから中国南部(雲南省),インドシナ,スマトラにかけて分布する中型のスズメガで,原記載以降その属の所属は確定しているとは言い難い.Rothschild&Jordan(1903)は暫定的に本種をSmerinthulus Huwe,1895に置いたが,後にMarumba Moore,1882に移し(Rothschild&Jordan,1907),この扱いが今日まで引き継がれている.Marumbaでは,♂交尾器valvaが端部で二分し,背域は強く骨化して先端が尖るほか,骨化して湾曲したharpeやlabidesを備え,またuncusはへら状で,通常先端は中央で切れ込むなどの特徴を示す.しかし,decoratusでは,uncusは細くかぎ状に曲がり,valvaは先端二分することなく,基部のlabidesも欠き,harpeは幅広の板状になる等,Marumbaの特徴は何一つ見られない.脛節の刺列の状態ではMimas Hubner,1819に共通する部分もあるが,後脛節には1対の端距しか持たない点でこの属とも異なっている.本文では本種に対する新属Morwenniusを創設し,外部形態♂交尾器等を再記載した.