蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
不滅のパルナシウス : 古(いにしえ)のコレクションの幻影
Phillip ACKERYKim GOODGER木下 總一郎
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2004 年 55 巻 2 号 p. 59-75

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抄録

パルナシウスを例に,1856年前後の大英博物館のコレクションを再構成し,際立った収集家や寄与者によりコレクションが成されたことを整理した.この1856年は,Grayによるアゲハチョウ科の収蔵目録が発行された年である.この出版を境にして大英博物館のコレクションは大きく変貌を遂げていった.当時の標本提供者を見ると,19世紀後半へと続く植民地開拓とあいまって,軍人または軍役にかかわった収集家が国立のコレクションにとって重要な貢献をしてきたことが分かる.ここでは著名人のみならず,パルナシウスコレクションに関わった11名が紹介されている.同時に商業的採集家も魅力的な標本の最たる収集源となった.1856年前後のパルナシウスは蝶の収集文化を代表するものであり,かつ同時代に起こった博物学上の分岐点-学問道楽的「歴史的コレクション」から「分類学」へ-に立っていた人々のそれぞれの動機と生き方を「再構成された当時の標本を通して」呈示している.

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© 2004 日本鱗翅学会
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