蝶と蛾
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コモンマダラ属Tirumalaにおける比較形態学的研究 : 生殖隔離とフェロモン運搬粒子PTPs
橋本 恵矢田 脩
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2008 年 59 巻 4 号 p. 305-311

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抄録

タテハチョウ科マダラチョウ亜科に属するコモンマダラ属Tirumala全9種を対象にして,雄の性標内で生成されるフェロモン運搬粒子PTPsの微細構造の比較形態学的研究を行なった.本属の種は,外観だけでなく交尾器の形状も相互に酷似するため,種間の識別が難しいとされていたが,本研究において,PTPsの形態に明確な相違が見出され,本属内のPTPsの微細構造は少なくとも4つのタイプに分けられることが明らかになった.さらに同所的に分布する種のPTPsの形態は異なるということが示唆された.揮発性物質を運ぶPTPsは,同種の雌に交尾相手を正確に認識させる機能をもつものであると考えられる.つまり,Tirumalaは種同士の外観が酷似するため,特に他の種との生殖隔離機構が重要となる.モンシロチョウ属Pierisにおいて,雄の発香物質の化学的成分やその成分比が種によって異なることがすでにわかっていることから,おそらく本属にもこのような種特異性があり,それとともにフェロモンを運ぶPTPsの形態にも反映している可能性は十分ありうる.

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© 2008 日本鱗翅学会
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