蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
Anarsia属とBagdadia属の4日本新記録種(鱗翅目,キバガ科)
上田 達也
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 61 巻 4 号 p. 272-281

詳細
抄録

日本産キバガ科の分類を行う中で,日本から未記録のAnarsia属2種とBagdadia属2種を発見したので成虫,交尾器を図示するとともに,再記載を行った.Anarsia ulneongensis Park&PonomarenkoとBagdadia eucalla(Li&Zheng)の♀交尾器を初めて図示した.Anarsia choana Park,1995ヒメマエモンシロキバガ(新称)(Figs 1,5)前翅長4.5-4.7mm.頭部,胸部,前翅地色は乳白色で淡褐色鱗粉を散布する.前翅前縁に6つの黒色の斑紋を持ち,中央のものは大きい.中室に暗褐色班を持つ.♂交尾器の左valvaは大きく,中央下縁に長く大きく湾曲する突起を持つ.コマエモンハイキバガAnarsia incertaに似るが左valvaの長く大きく湾曲した突起より識別できる.分布:沖縄,台湾.寄主植物:不明.Anarsia ulneongensis Park&Ponomarenko,1996ヒメフタクロモンキバガ(新称)(Figs 2,6)前翅長4.8-6.5mm.頭部,胸部,前翅は灰色.前翅前縁に6つの暗褐色から黒色の紋を持ち,中央のものは大きい.中室にも黒色の紋を持つ.♂交尾器のvalvaは細く,先端1/3は三角形から台形の板状に腹方に張り出す.フタクロモンキバガAnarisa bipinnataに似るが,フタクロモンキバガに比べ小さいこと,オスの中胸前上側板に毛束を持たないことから識別は容易.分布:九州,琉球,韓国.寄主植物:不明.Bagdadia eucalla(Li&Zheng,1998)ニセワモンキバガ(新称)(Figs 3,7)前翅長3.6-8.8mm.頭部,胸部は灰白色に淡褐色鱗粉を散布する.前翅は淡褐色に灰白鱗粉を散布し,前縁基部に榿色の,1/4と中央に暗褐色の鱗粉隆起を持つ.前翅中央に灰白色で縁取られる暗褐色の楕円紋を,後角に暗褐色の円紋を持ち,その間を榿色の横帯が走る.♂交尾器のvalvaはゆるやかに湾曲し,valvellaの先端は背方に向かう突起と後方に向かう指状の突起に分かれる.Aedeagusは背方に強く曲がる.ワモンキバガBagdadia claviformisに似るが,本種の前翅地色は淡褐色に灰白色鱗粉を散布するのに対し,ワモンキバガは榿色であることから識別は容易.本種の♀交尾器が図示されるのは初めて.分布:本州,九州,韓国,中国.寄主植物:不明.Bagdadia salicicola (Park,1995)ヤナギワモンキバガ(新称)(Figs 4,8)前翅長3.9-4.4mm.頭部,胸部は淡褐色に黄褐色鱗粉を散布する.前翅は灰色がかった榿色に淡褐色鱗粉を散布し,前縁基部に橙色の,1/4と中央に暗褐色の鱗粉隆起を持つ.前翅中央に外縁がえぐれる暗褐色紋を,後角に暗褐色の円紋を持ち,灰白色の鱗粉で縁取られる.♂交尾器のvalvaは左右非対称で,右valvaの基部1/3背縁に腹方に向かう大きな突起を持つ.ワモンキバガBagdadia claviformisやニセワモンキバガB.eucallaに似るが,前翅中央に橙色の横帯を欠くことで識別は容易.分布:本州,台湾.寄主植物:Salix属(ヤナギ科).

著者関連情報
© 2010 日本鱗翅学会
前の記事 次の記事
feedback
Top