2013 年 64 巻 3 号 p. 103-107
在来コマツナギ,中国産コマツナギおよびクサフジに対するミヤマシジミのメス成虫の産卵選択を調べるために2011年にリシャール法を用いた2つの実験を信州大学農学部昆虫生態学研究室で行った.3種の植物を順番に用いて産卵させた実験では,在来コマツナギへは全ての個体が産卵したが,中国産コマツナギには実験に供した9個体中6個体(66.7%)が産卵した.またクサフジにはどのメスも産卵しなかった.在来コマツナギへの産卵数は372卵(77.8%)であったのに対して,中国産コマツナギへの産卵数は106卵(22.2%)であった.在来コマツナギと中国産コマツナギを一緒に用いた実験では,すべてのメス(5個体)が中国産コマツナギに産卵した.この実験での在来コマツナギへの産卵数は456卵(87.7%)であったのに対して,中国産コマツナギへの産卵数は64卵(12.3%)であった.この結果より,野外ではミヤマシジミ幼虫がクサフジを食べないのは,メス成虫がクサフジに産卵しないからであると考えられた.またミヤマシジミが中国産コマツナギを食草とする可能性について考察した.