蝶と蛾
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オビマイコガに近縁な日本産Stathmopoda属の2新種(鱗翅目:ニセマイコガ科)
寺田 剛
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2013 年 64 巻 4 号 p. 140-149

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抄録

オビマイコガ(Stathmopoda opticaspis Meyrick,1931)とこれに近縁であると考えられる種について検討し,2新種シロオビマイコガ(新称)(S. albiornata n. sp.)とリュウキュウオビマイコガ(S. persona n. sp.)について記載を行った.3種は外見的特徴が互いに似ているため,成虫の外見的特徴,翅脈,雌雄交尾器を図示し,比較した.3種は外見的には胸部や前翅の色彩,斑紋で識別できる.また,シロオビマイコガはS. placida Meyrick,1908と外見的特徴,雌雄交尾器が酷似しているため,この2種についても比較を行った.その結果,両種は外見的には胸部の色彩で区別できることが明らかとなった.2新種は分布や生態についての情報が不足しており,さらに調査が必要である.1. Stathmopoda albiornata n. sp.シロオビマイコガ 開張8.9-11.8mm.前翅長4.0-5.6mm.頭部背面,胸部は黒褐色であり,中胸の後縁は白色.前翅は灰黒色で,基部付近,中央に白色帯が走る.雄交尾器のエデアグスには非常に多くの剌状突起と多数の小鋸歯を持ち,基部付近に硬化した構造を持つ.雌交尾器のブラには小鋸歯を欠く.幼虫はクヌギの堅果や殻斗,虫こぶから得られる.成虫は8月に発生し,3-4月ごろにも発生すると考えられる.南西諸島では10,12月にも記録がある.分布:本州,九州,奄美大島,沖縄本島.寄主植物:クヌギ(ブナ科).2. Stathmopoda persona n. sp.リュウキュウオビマイコガ 開張8.1-10.5mm.前翅長3.8-5.1mm.頭部背面,胸部は灰黄色であり,胸部中央に1対の白色の斑紋を含む大きな黒色の斑紋を持つ.前翅は灰褐色で,基部に黒褐色帯,1/5に白色帯,2/3に黄土色帯が走る.黄土色帯は後縁に向かって細くなる.雄交尾器のエデアグスには多数の刺状突起と小鋸歯を持ち,基部付近に少数の硬化した構造を持つ.雌交尾器のブラに少数の小鋸歯を持つ.成虫は4月ごろ発生すると考えられる.本種は村瀬(2007)においてオビマイコガに似たStathmopoda属の1種として扱われた種と同種であり,幼虫が寄主植物の葉の枯れた部分や朽ちかけの果実内で生活することが報告されている.分布:沖縄本島,石垣島.寄主植物:フクギ(フクギ科).3. Stathmopoda opticaspis Meyrick,1931オビマイコガ 開張8.7-11.4mm.前翅長4.0-5.3mm.前種に似るが,頭部背面,胸部は黄色であり,前翅の黄土色帯は前種より太く,後縁に向かって細くなる.雄交尾器は前種に非常によく似ており区別が困難である.しかし,雌交尾器のブラに前種より多くの小鋸歯を持つ.成虫は6-9月に発生する.分布:本州,四国,九州;ロシア南東部,朝鮮半島,中国.寄主植物:フトリュウビゴケ(イワダレゴケ科).

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© 2013 日本鱗翅学会
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