蝶と蛾
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中央ネパール産メサピアシロチョウMesapia peloriaの新亜種記載とその他の亜種に関する覚え書き
田所 輝夫小出 雄一堀 勝彦
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2014 年 65 巻 2 号 p. 51-59

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抄録

中央ネパールのヒマラヤ高山地帯で1981年6月30日〜7月4日に採集されたM. peloriaの個体群を精査したところ,斑紋や♂交尾器に形態的な特徴が認められかつ地理的地形的な隔絶が示唆された事から,中央ネパールDolpo地区Jarchuk Kang(標高4,500m)をタイプ産地として新亜種Mesapia peloria epsteina(和名:エプステイン・メサピアシロチョウ)を記載する.亜種名epsteinaは1979年にこの蝶を最初に世界に紹介したH. J. Epsteinの功績を讃えて命名するものである.なお,同亜種の記載を通してM. peloriaの各地方型亜種の形態的変異を再検討した.四川省高山帯産の個体群はssp. peloria,青海省産のそれはssp. lamaとそれぞれ同定した.ただし中央チベット産の個体は♀のみであり,ssp. peloriaに似ているもののこの段階での同定は控えた.我々は,Ziegler(2007)と同様に形態的特徴及びタイプ産地からssp. grayi及びssp. tibetensisはssp. lamaのシノニムであると考える一方で、ssp. lama自体はssp. peloriaのシノニムではなく北東チベットに広く分布する地方型(亜種)であると考える.逆に名義タイプ亜種であるssp. peloriaは,これまで考えられてきたように北東チベットではなく,四川省西部から中央チベットにかけて分布する個体群ではなかろうかと推測する.

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© 2014 日本鱗翅学会
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