蝶と蛾
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オオルリシジミの保護地域長野県安曇野市におけるシジミチョウ科3種のTrichogramma spp.による卵寄生率
江田 慧子中村 寛志
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2014 年 65 巻 3 号 p. 123-127

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抄録

長野県安曇野市において,2010年にオオルリシジミ,ベニシジミ,ルリシジミの卵サンプリングを行い,Trichogramma spp.による寄生率を調査し,さらに粘着トラップを使ってこれら卵寄生蜂の個体数を調査した.その結果,ベニシジミ,ルリシジミの卵は5月の調査時に,またオオルリシジミは6月の調査時に卵を発見できた.Trichogramma spp.はオオルリシジミやルリシジミのほかベニシジミにも寄生することが明らかになった.5月中旬のベニシジミとルリシジミの卵寄生率は低く(12〜18%),5月下旬のベニシジミは54%と高くなり,さらに6月に出現するオオルリシジミでは卵寄生率が一層高くなる(79〜89%)ことがわかった.オオルリシジミの発生前の5月28日までは,Trichogramma spp.は粘着トラップには捕獲されなかったが,それ以降は1トラップ1日あたり0.18〜0.29個体が捕獲され,6月下旬には捕獲数が増加した(1トラップ1日あたり0.47個体).以上のことから,オオルリシジミの卵期に,卵寄生蜂であるTrichogramma spp.の密度が高くなるために寄生率が高くなったと考えられた.

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© 2014 日本鱗翅学会
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