2017 年 68 巻 3-4 号 p. 121-128
キアゲハはユーラシア大陸および北アメリカ大陸の亜寒帯および温帯地方に広く分布する.キアゲハは日本列島およびサハリンにも分布し,それらは亜種hippocratesとして区別される.キアゲハの日本列島(サハリンを含む)集団と大陸集団の系統関係を明らかにするために,国内外諸地域のキアゲハおよびその近縁種からDNAを抽出し,ミトコンドリアDNAのND5遺伝子の一部塩基配列を決定し,分子系統樹を描いた.その結果,日本列島集団はユーラシア大陸集団および北アメリカ集団から遺伝的に明確に区別されることがわかった.キアゲハの分子系統樹において,日本列島集団はユーラシア大陸集団と北アメリカ集団より先に分かれていた.このことは,キアゲハが,大陸から分かれた日本列島において,長期間大陸集団と交流なく隔離されていたことを示唆している.日本列島集団と大陸集団との間で斑紋が似ていても遺伝的に離れている種が,他にも存在するかもしれない.