蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
オオムラサキにおける雌雄モザイク個体の発生とその発生メカニズムの推定
山本 毅也長崎 二三夫八木 孝司
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2020 年 71 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

我々はこれまでに,オオムラサキの後翅肛角紋の色彩には赤色,桃色,白色が存在し,これらの遺伝子は複対立遺伝子として常染色体に存在すること,桃色遺伝子piは白色遺伝子whに対して不完全優性であり,赤色遺伝子re対して劣性であることを示した.その後子孫の累代飼育を行ない,この結果の追試のために♂桃色/白色ヘテロ接合体(pi wh)と♀白色ホモ接合体(wh wh)の検定交配を行なったところ,メンデルの法則どおり,桃色(pi wh)と白色(wh wh)の子がほぼ1:1で生まれた.さらに,左翅♂で白色紋,右翅♀で桃色紋の雌雄モザイクが1個体生まれた.この個体の左翅♂の青色領域には青色鱗粉の異常がみられ,外部生殖器は♂型であった.この雌雄モザイク個体の両親の肛角紋は逆に♂桃色,♀白色であることから,この雌雄モザイクは,極体放出不全により成熟卵が持つ卵核と極体に,wh遺伝子とpi遺伝子を持つ精子が別々に受精し発生したことによって生じたと推定された.

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© 2020 日本鱗翅学会
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