抄録
物流コストの動向が大きな注目を集めている。本論文はわが国の貨物輸送の主力であるトラック輸送市場に着目し、1980年代~90年代の経営状況を分析した。その結果、規制緩和の実施後を除き、輸送業者の生産性が年を追うごとに低下している様子が明らかとなった。次に、こうした傾向と荷主製造業の進める物流コスト削減との関係を探った。物流コストを反映する系列として、製造業売上高に占める物流費データを採用した。これを説明変数として生産性指標を回帰したところ、係数は1%水準で有意であり、両者の相関を示すことができた。国際競争が激しくなる昨今、製造業は経営の効率化を急いでおり、物流コスト見直しの動きも強まると予想される。支払運賃切り下げなどに直面した輸送業者が、どう生産性を維持させてゆくか。物流の今後を占う意味でも、今後の精査が欠かせない。