哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
総説
哺乳類の食性の長期研究事例
辻 大和高槻 成紀
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 48 巻 2 号 p. 221-235

詳細
抄録
哺乳類の食性の長期研究の動向を探るために,BiosisとGoogle Scholerを用いて文献検索を行い,93の文献から99の事例を収集した.食性評価の期間には2年から16年とばらつきがあった.食性の長期研究事例には分類群ごとにばらつきがあり,食肉目(Carnivora)と霊長目(Primates)で多く,齧歯目(Rodentia)と翼手目(Chiroptera)で少なかった.食性の長期研究事例は時代とともに増加する傾向があった.多くの事例では食性評価に糞分析を用いていたが,特定の分類群に特徴的な分析手法がみられた.80%以上の事例で食性の年次変動がみられたが,多くの事例では食物環境の定量的な評価を行っておらず,さらに個体群パラメータへの影響を評価した事例はごくわずかだった.動物の食性の長期変化の把握は動物の基礎生態の理解に貢献するだけではなく,種子散布や採食に付随する行動などの派生的な研究,ひいては保全戦略の策定などにも貢献すると思われる.
著者関連情報
© 2008 日本哺乳類学会
次の記事
feedback
Top