哺乳類科学
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原著論文
目撃効率からみたイノシシの生息状況と積雪,植生,ニホンジカ,狩猟,農業被害との関係
坂田 宏志鮫島 弘光横山 真弓
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2008 年 48 巻 2 号 p. 245-253

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抄録

イノシシ(Sus scrofa)の保全と管理に向けて,銃猟時の目撃効率を補正した上で指標化し,生息状況を左右する要因や農業被害との関係を分析した.共分散構造分析によって双方向の因果関係や間接的な効果を考慮に入れたパス解析を行った結果,イノシシの目撃効率は,積雪の多い地域や広葉樹林の多い地域で高くなる傾向を示すパス係数が有意であり,ニホンジカ(Cervus nippon)の目撃効率が高い地域や入猟者の多い地域では低くなる傾向を示すパス係数が有意であった.また,雪の多い地域への入猟頻度は少なかった.これらの結果から,積雪と狩猟が相互に関連しあってイノシシの密度分布に影響を及ぼしていること,ニホンジカの食害による植生の衰退がイノシシの生息数を減らし目撃効率を下げるという間接的な競争関係がある可能性などが示唆された.また,イノシシの目撃効率はアンケート調査の農業被害程度と有意な相関があり,その関係はニホンジカとは異なる特徴があった.これらのイノシシの目撃効率に関する知見を活かして,管理目標の設定や地域的な状況の違いにあわせた対策の選択などの意志決定が可能なことを示した.

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© 2008 日本哺乳類学会
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