哺乳類科学
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原著論文
ニホンジカによるスギ,ヒノキ若・壮齢木の剥皮害の発生時期と被害痕の特徴
佐野 明
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2009 年 49 巻 2 号 p. 237-243

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抄録
三重県内31カ所のスギ,ヒノキ若・壮齢林において,2006年11月から2009年2月にかけて,ニホンジカによる剥皮害の形態別発生頻度,発生時期および被害痕の外観的特徴の季節的変化を調べた.調査期間中に発生した381本の被害木のうち99.7%は樹皮採食によるものであり,角こすりは0.3%に過ぎなかった.樹皮食害のほとんどは樹木の成長期にあたる3~8月に発生し,成長休止期(11~2月)の被害は標高750 m以上の2林分で確認されたのみであった.成長期には内樹皮,外樹皮とも剥ぎ取られ,内樹皮が採食されていた.露出した木部の表面は平滑で,被害木の73.3%では歯痕が見られなかった.一方,成長休止期には内樹皮と外樹皮の間で剥離されて,辺材部に張り付いた内樹皮に高密度の歯痕が残されていた.樹木の成長期と成長休止期の樹皮採食痕の形態は明瞭に区別できること,歯痕のない剥皮害を角こすりによるものとする判断は誤りであることを指摘した.
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© 2009 日本哺乳類学会
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