抄録
1980年代以来,北海道東部沿岸に生息するゼニガタアザラシ(Phoca vitulina stejnegeri)の一般的な上陸個体数の季節変化は,秋から冬の間は少なく,繁殖(出産・育児)期(5–6月)を通じて増加がみられ,換毛期(7–8月)に最大になるとされてきた.しかし,複数年にわたる通年の上陸個体数調査の結果,浜中町にある上陸場(浜中A)では,繁殖期に少なく,その後換毛期から秋期(9–11月)に多く,冬期(12–2月)にやや減少した後,繁殖期前(3–4月)にも増加した.十分な統計的裏付けを得るにはさらに観察例を増やす必要があるものの,浜中Aでの観察結果は,これまで北海道で一般的とされてきた本種の上陸個体数の季節変化とは異なっていた.