抄録
北海道の野幌森林公園で実施したテン類の生息状況調査において,2006年5月と2007年7月,2008年5月の計3回にわたってテン属Martesを確認した.このうち,2007年7月の捕獲個体に関しては,画像やDNAの試料がなかったため種判定ができなかったが,それ以外の2個体については,それぞれ画像判定とミトコンドリアDNAによる種判定の結果からクロテンMartes zibellinaであることが確認された.また,体サイズから2008年5月に回収した死体は約1ヶ月齢の幼獣と推定された.野幌森林公園においてクロテンの生息が確認された公式な記録は2004年11月の自動撮影記録のみであり,実際にDNA分析によりその生息が確認されたのは今回が初めてのことである.また,クロテンの幼獣個体が確認されたことにより,同公園内においてクロテンが自然繁殖している可能性が示唆された.