2019 年 59 巻 1 号 p. 79-84
市街地内の林で,フクロウ(Strix uralensis)によるタイリクモモンガ(Pteromys volans)捕食の状況と個体群に与える影響を調査した.2008年から2017年の毎冬期に調査地内で163個のペリットを採集した.解析した150個のペリットのうち,2調査期ではそれぞれ21個体,23個体のタイリクモモンガが出現した.調査期間中のフクロウの観察率は最大26.9%,最小0%で,年による変動がみられ,タイリクモモンガの巣穴利用樹木数にも最大25本,最小6本と年変動がみられた.フクロウ観察率の高い年の翌年にタイリクモモンガの巣穴利用樹木数が減少した年があった.また,フクロウによるタイリクモモンガ捕食圧が低下したと考えられる翌年にタイリクモモンガの巣穴利用樹木数が増加したケースもみられた.これらの結果は,フクロウの捕食がタイリクモモンガ個体群に影響している可能性を示唆する.