哺乳類科学
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行動圏サイズに基づく東京都におけるニホンアナグマの生息の検討
白濵 秀至斎藤 昌幸金子 弥生
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2020 年 60 巻 2 号 p. 229-236

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抄録

既存研究による行動圏サイズを用いて,東京都におけるニホンアナグマMeles anakumaの生息可能性を検討した.2000~2011年の時点における植生図から作成した連続した緑地のまとまり(連続緑地)を生息地の候補とし,その連続緑地がアナグマの行動圏サイズ以上の面積を有している場合,生息地としての可能性を有すると判断した.このとき,行動圏サイズに基づく面積条件として,5.2 ha,30 ha,72.1 ha,407.1 haの4つを使用した.解析の結果,東京都は,西部から東部地域にかけて連続緑地の平均面積が小さくなる傾向がみられ,緑地面積全体の88.9%は西部地域が占めていた.西部地域および中部地域では,407.1 haを上回る連続緑地がそれぞれ2個ずつ確認された.また,72.1–407.1 haの連続緑地が東部地域には1個,中部地域には17個存在した.一方で,東部地域には407.1 ha以上の緑地は存在せず,72.1–407.1 haの連続緑地も2個のみであった.西部地域と中部地域ではアナグマの分布が確認されており,西部地域の大規模な連続緑地が東京都におけるアナグマ個体群のソースになっている可能性がある.今後は,本研究で抽出した連続緑地の分布を参考にしながら,アナグマの実際の分布状況の把握や土地利用条件,人間活動を考慮して生息適地評価をおこなうことが必要である.

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© 2020 日本哺乳類学会
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