2020 年 60 巻 2 号 p. 327-334
ニホンジカ(Cervus nippon)とイノシシ(Sus scrofa)の捕獲が全国的に推進されている中,錯誤捕獲の増加と錯誤捕獲された種個体群への影響が危惧され,錯誤捕獲の発生回避と発生後の適切な対処が求められる.本稿では,錯誤捕獲の回避措置や発生後の対処に関する規制や方針について,法令等への記載状況を確認した.錯誤捕獲の回避措置や発生後の対処に関する規制や方針の記載は,規則,指針及び計画で確認され,クマ類を対象としたものが多くみられた.今後,錯誤捕獲の発生を回避するためには,くくりわなの使用を禁止する措置もありうるが,ニホンジカやイノシシの捕獲を推進していく必要性も高いことから,未然に錯誤捕獲を回避すること,発生した場合にも個体の損傷を最小限に抑え放獣することの追及と,種や分野を超えた協働的な取り組みが必要である.このためには,錯誤捕獲の発生状況を的確に捉え,それに対する取り組みの導入方法や運用方法を具体的に示すことで,地域の現状に応じる必要がある.