哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
報告
ニホンジカとカモシカの冬季食性比較による白神山地モニタリングのための指標植物の選定
ムラノ 千恵服部 耕平齋藤 純一神 孝子髙木 善隆赤澤 友光山岸 洋貴
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 64 巻 2 号 p. 233-241

詳細
抄録

近年,ニホンジカ(Cervus nippon)が白神山地周辺にも分布再拡大している.低密度期の分布の有無を把握する生息モニタリングとしての食痕調査を効果的に行うには,地域に適した指標植物種を選定する必要がある.そのためニホンジカとカモシカ(Capricornis crispus)が同所的に生息する当該地域で,糞のDNAメタバーコーディング解析を用いて両種が利用する植物種を比較した.その結果,冬季,チシマザサ(Sasa kurilensis)とクルミ科sp.(Juglandaceae sp.)はニホンジカの糞から頻繁に検出されたが,カモシカの糞からは検出されなかった.スギ(Cryptomeria japonica)やヒメアオキ(Aucuba japonica var. borealis)は,両種によく利用されていた.調査地における低密度期のニホンジカの生息モニタリングには,チシマザサが最適の指標種であると考えられた.

著者関連情報
© 2024 日本哺乳類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top